Thu, November 15, 2018

消費者庁、「打消し表示」調査に要警戒 ―― 実質的な広告制作「マニュアル」に

消費者庁が広告の「打消し表示」の監視を強めている。2017年7月から立て続けに「打消し表示」に関する調査を3回実施。「動画広告」「紙面広告」「ウェブ広告(スマートフォン)」で景品表示法上、問題となる事例を示し、注意を促す。ただ、この調査。〝調査〟とは名ばかりなもの。各媒体の広告について詳細に渡り違反のおそれのある事例を示しており、実質的に〝マニュアル〟ともいえるものだ。調査結果を留意していない広告は取締り対象になる可能性が高い。

神経を尖らせる消費者庁

スマホの「打消し表示」は「強調表示」と同じ大きさの文字、色、 背景で

スマホの「打消し表示」は「強調表示」と同様の大きさ、色、背景で。「動画広告」は重要内容を「音声」で。「紙面広告」の「打消し表示」は、「強調表示」と一体として認識できるように─。これが消費者庁が「打消し表示」の実態調査から導き出した答えだ。
これまで「打消し表示」をめぐっては、景表法が公正取引委員会の所管だった過去から現在に至るまで、幾度となくその表示のあり方が示されてきた。だが、消費者庁がこれほどまでに「打消し表示」に神経を尖らせた例は過去にない。実質的に〝マニュアル〟とも取れるところまで踏み込んで、違反となるおそれがある事例を示している。これほどまで神経を尖らす背景には、「打消し表示」が実態として機能していないことがある。
調査によると、新聞や動画、ウェブ広告で「打消し表示」を「見ない」と答えた層は57~75%。各媒体で過半数を超えている。とくにスマホでは、「強調表示」と「打消し表示」が「同一画面内」にあった場合も「見ない」と回答したのが70%に上る。強調表示からスクロールが必要な場所に打消し表示がある場合」は75%だ。事業者側も「打消し表示」を〝免罪符〟としてきた側面があり、こうした広告が氾濫する状況に消費者庁もついに堪忍袋の緒が切れた、というわけだ。

スマホの「打消し」、「強調」と同じ大きさで

スマホはとくに画面サイズの小さく、縦長のページ構成になる。アコーディオンパネル(クリックで開閉する表示)を使った表示も特徴で、情報を拾い読みしたり、下にスクロールしなければ情報を見落としてしまうこともある。こうした特徴を捉え、問題点を示している。留置点は18年5月に公表された「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態報告書」の中で詳細に渡り示されている。
注意すべきポイントは、「アコーディオンパネルにおける打消し表示」と「コンバージョンボタンの配置箇所」、「強調表示と打消し表示の距離」、「打消し表示の文字の大きさ」、「打消し表示の文字とその背景の色・模様」、「ほかの画像等に注意が引きつけられるか」の6項目。これら要素から、景表法違反を総合的に判断する。
アコーディオンパネルを使う場合、クリック後に「打消し表示」を表示すると見落とされがちな傾向にあることから、「強調表示」に近い位置に「打消し表示」で示すような例外条件など重要内容を示し、一体として認識されることを求めている。クリック前のラベル表示の場合、消費者が必ずタップするよう工夫することも必要という。
「強調表示」と申込等のコンバージョンボタンが同一画面に表示され、「打消し表示」が離れていることで気づかないことも多い。このため同時に「打消し表示」を認識できるようにし、同一画面の表示が難しい場合も、アコーディオンパネル等で隠さず認識できるようにすることが必要とする。「打消し表示」の文字の大きさ色、背景色も「強調表示」に比べ目立たない色で気づかないものである場合は景表法上問題になるとし、文字の色も「強調表示」と「打消し表示」の色や背景色を統一し、一体と認識できるようにすることを求めている。

動画の「打消し」見られていない

スマホなどでも流すことがある「動画広告」はより厳密な設計が求められる。これは18年6月に示した「広告表示に接する消費者の支援に関する実態調査報告書」で示されたもの。この調査では、〝視線の動き〟をアイトラッキング機器を使い計測。「打消し表示」が見落とされている実態を客観的に実証し、注意を促している。

「紙面広告」「ウェブ広告(スマホ)」の留意点も触れているが、とくに注意が必要なのは「動画広告」だろう。というのも、時間の制約がなく自由に見ることができる紙面やウェブに比べ、認識できる情報量に限界があるからだ。個人差も生じにくく、機械的な計測で効果的な結果を示しやすいこともある。過去の調査でも「動画広告」について「打消しの表示時間が短い」「強調表示と音声に注意が向く」など留意点を示したが、より明確に適法・違法の判断基準を示している。

重要内容は「音声」で表示を検討すべき

調査では「動画広告」(15 秒)に含まれる〝情報量〟を4タイプに分けて分析している。とくに景表法違反のおそれとなる可能性があり注意が必要なのが2タイプ。一つは、「打消し表示」が文字のみで表示され、「強調表示」が文字と音声で表示されるものだ。もう一つがこれに人物などの「画像」が加わったケースだ。アイトラッキング機器を使った調査でいずれも大半の消費者が「打消し表示」を認識していなかった。
問題視されているのは、いずれも「打消し」「強調」「画像」「音声」など複数の情報が同一画面に混在するような動画。情報量が多く誤認の可能性が高いことからこうした画面設計の場合、「打消し表示」など商品選択に関わる重要な情報を「強調表示」の隣接した位置に同程度の文字の大きさで表示することを検討すべきとする。「音声」や「画像」に注意が向けられ「打消し表示」を把握できない傾向も強く、重要な内容を「音声」で示すことも検討すべきとしている。
調査では「動画広告」を流す媒体の違いについては言及していない。だが、18年5月にスマホの「打消し表示」に関する調査を行っていることもあり、スマホではより厳格にこうした画面設計にすることが求められるとみられる。ほかに長尺(75秒)の「動画広告」の分析を行っている。

紙面の「打消し」、「強調」と一体で

音声で「新規契約で5万円プレゼント」とも強調していたが、 「打消し表示」は認識されていない。

新聞等の「紙面広告」の「打消し表示」の実態調査を行ったのも18年6月の調査が初めてだ。17年7月の調査でも行ってはいたが、当時は体験談の「打消し表示」の問題点を探る上で、その調査の一例で新聞広告が使われただけだった。今回は、「紙面広告」における「打消し表示」の表示位置や文字の大きさ、背景色の違いなどを含め詳細に渡り調査。その結果から、紙面隅の一括表示の中で例外条件を表示する手法に対し、「消費者の注意が向かない」として「強調表示」と一体で認識できるようにある必要性に言及している。隣接した箇所に表示する場合も「強調表示」との文字もバランスが悪かったり、小さい文字、異なる字体、色で表示する場合は誤認を招く可能性があるとしている。

「打消し」めぐり、処分増加必至

「打消し表示」の実態調査を背景に、すでに消費者庁では監視の目を強化している。

音声で「ABC SUIT」とも強調していたが画像や音声に注意が 向き、「打消し表示」が認識されにくい。

17年7月、調査を行った直後には、ガンホー・オンライン・エンターテインメントが展開するオンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ」の表示について、景表法に基づく行政処分を実施。違法と判断された表示は一部に「打消し表示」を含んでいたが、それでも不当表示(優良誤認)と判断した。
ネット配信の番組でゲームのプロデューサーが「(キャンペーン限定で)11月に登場したガチャ(とゲーム内で呼ばれる「モンスター」を入手するための有料のくじ)が全て究極進化する」などと発言したが、実際に「究極進化」するのは一部だけだったというもの。「打消し表示」を行っていたが、「音声による発言が大きく、打消しにならない」(消費者庁・大元慎二表示対策課長)と違法認定した。

同じく、スマホの実態調査を公表した直後の18年5月には、レンタル大手、TSUTAYAの動画配信サービス「TSUTAYA TV」の広告に対しても景表法に基づく行政処分を行っている。

サービスに関する広告で「動画見放題」と表示。「人気ランキング」「近日リリース」として掲載する人気動画や新作動画を合わせて表示し、これら動画も見放題かのように表示していたが、実際、見ることができるのは約3万本の動画のうち、12~26%程度だった。こちらの広告もアコーディオンパネル等で「打消し表示」を行っていたが、〝無効〟と判断された。
17 年7月、「打消し表示」の調査を行って以降、消費者庁は処分企業に通達する「措置命令書」の中でも明確に「打消し表示」が無効であったことに触れるようになっている。今後も「打消し表示」を〝免罪符〟としない処分が続く可能性が濃厚だ。

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