Tue, December 11, 2018

中長期で売り上げ1000億円へ 張本貴雄● CROOZ SHOPLIST 代表取締役社長

ファストファッションに特化して顧客開拓を図り、着実に成長を続けているクルーズが運営するファッションECモールの「SHOPLIST(ショップリスト)」。2018年3月14 日に同事業を会社分割して、100%子会社であるCROOZ SHOPLISTを新たに設立した。同社の新社長に就任した張本貴雄氏が描く、今後の成長戦略とは。

世の中のインフラを目指す「当たり前」を作るということ

――ショップリスト事業に特化した専門会社を設立したことでの、社内での変化や生じるメリットなどについて教えてください。

基本的には大きく変わらないというのが正直なところです。ただ、クルーズグループのビジョンとして100人の経営者を生み出していくというミッションがあるので、私自身もグループの役員として全うしなくてはいけないものがあります。ショップリストで掲げている中長期のビジョンは「500万人のユニーク購入者×年間購入単価2万円」で、売り上げ1000億円を目指しています。実際にサイトには500万人以上の訪問者は来ていただけているので、そこで100%購入してもらえればこの目標は確実に達成できると考えております。

――2016年からショップリスト内の新規事業として開始していた「EC支援サービス」も、これから本格展開していくと聞きました。

ショップリストのシステムをそのまま外部提供する新会社のCROOZ ECPartnersでは、他社のプロモーションから物流などECのすべてを支援しています。自分たちが実際にサイトを運営してきたという強みがあり、また、これまでショップリストが成長してきた中でのフェーズごとに合わせたノウハウを提供することができます。この事業はこれからの柱になることを期待しています。

「ギャップ」を埋めて、リピートを獲得

――ショップリストではどういったスローガンを掲げているのでしょうか。

このサービスの立ち上げ当初から「世の中のインフラをつくる」ということをビジョンに掲げて、この6年間運営してきました。私がよく例えているのが「電車」なのですが、電車は決められた時間に来て、それに乗れば決められた時間内で確実に目的地に着くことができます。しかし、利用している人はそのことに対して特別な感謝などを抱かず、当たり前のように日々使っています。感謝を持たないということは、日常的に使っていてそれが自身の生活の一部になっているということだからだと思います。自分たちもそのような当たり前を作りたいと考えています。
デバイスの進化とともに消費者の買い物体験も変わっていきました。それは先駆者としてアマゾンさんや楽天さんが頑張っていただいたおかげで、ネットで物を買うということがこの10年間で当たり前になりつつあるのです。私も日用品などすべてネットで買っていますが、そこに感謝などは感じていません。それはやはり毎日当たり前のように使っているからなのでしょう。

――出店者向けのカンファレンスでは毎年キーワードを発表しています。

まず、2017年のカンファレンスで発表したキーワードは「ユーザーギャップゼロ」でした。ショップリストは開設5年で、かなりのブランド数と売上高を作ることができました。その一方で、売り上げ先行型で来た分、「写真と実物の印象が違う」や「商品のサイズが合わない」といったユーザーギャップも一部では生じていました。ECはいくら新規をとっていっても、既存顧客の積み上げがないと成長することはできません。そのため、リピーターを獲得するにはギャップを埋める作業が必要だと感じ、2017年度は整備の年と位置付けたのです。

――ギャップを埋めていくために実際に取り組んだこととは何ですか。

この1年間、様々な指標をもとにユーザー評価を緻密に計算して“見える化”していき、それに応じて商品の露出頻度などを変えていきました。その結果、2017年度は第3四半期までで2回目転換率がある程度改善できたので、第4四半期では広告宣伝を復活してまた売り上げを伸ばすことができたのです。

――ユーザー評価の仕組みとはどういった内容で行っているのですか。

様々な細かい指標から成り立っているのですが、例えば配送遅延率、欠品率、レビュー、新商品の投入型数などがあり、それらの項目をもとにユーザー評価を算出しています。出店者にはその評価内容を毎月提示しており、最優先で改善すべき課題がすべて分かるようになっているのです。やはり出店者も自身が改善すべき内容が分かれば、それに応えて、改善していただいています。
仮に配送遅延が起きるようであれば、「全SKUを1ピースずつでも当社の倉庫に入れておいてもらうことで改善しましょう」という形で一緒に解決していくのです。そうしていくことでユーザーギャップが埋まっていき評価が上がっていく仕組みになっています。

――ユーザー評価が上がることのメリットとしては。

ショップリストでは、顧客が商品検索した際にユーザーギャップのない商品から上位に表示される仕組みがあります。また、ユーザー評価が高い出店者は、メルマガのほかにもサイト上で発信している「ブランドニュース」という枠での新商品情報や商品づくりの背景などをアピールできるようになっています。

ショップリストは広告があるようなモールではなく、露出の枠をお金で買うことはできません。そのため、(出店者が露出機会を増やすには)質を高めていってくださいという方針なのです。実際にユーザー評価が上がっていった出店者はそれに応じて売り上げが大きく変わっています。

――今期は「サーチ×ファインド×バイ」をキーワードとしていますが、これは具体的にどのようなことを意味しているのでしょうか。

現状、25万型商品・130万SKUを展開していますが、今のECは画像で探す時代だと思います。そのため、「探しやすい体験を提供して、好きな商品に最短で出会える」ということをテクノロジーで解決することが2018年のテーマになっています。AIを使った画像検索はこの夏から試験的に開始する予定でいます。例えばリアルで買い物している時に、気に入った商品を撮影してその画像を使って(それに近い商品を)検索できるようなイメージです。
当然、これらの取り組みに加えて、「ユーザーギャップゼロ」も並行して進めていきます。「サーチ×ファインド×バイ」はあくまでも手段であり、時代と共に変わっていくものです。今後もこの両輪を上手く回して行けるプラットフォームになりたいです。

今の自分たちの規模ではPBを考える段階にない

重視するのは訪問者数とコンバージョン


――中長期ビジョンの「年間購入単価2万円」に向けて、年4回のメガセールで1回当たり5000円という購入額を一つの目安としていますが、そこに向けた施策は何かありますか。

現状の年間購入額は約1万4000円となっています。あとは1回5000円程度の買い物で2万円近くになる計算です。5000円を年間購入者数160万人にかけるだけで(流通総額が)80億円くらい変わっていきます。ここが金脈となるところなのですが、そこに対して顧客に無理して買わせてしまうようなことをすると絶対にLTVは続きません。
顧客の中には1000円の商品を年間12回買うような人もいれば、1回で2万円分買う人もいるなど様々なパターンがあります。そのため、あまり「2万円」や「購入回数」をドライバーにはしていないのです。明確に取り組んでいるのは、欲しい商品とすぐに出会うことができてギャップを生じさせないというところです。確かにメガセールをやってはいますが、決して「ガンガン売っていく」ということではなく、一つのお祭りとして新規の顧客にとって買いやすい環境をつくるという狙いがあるのです。

――それでは一番重視しているKPIとは何でしょうか。

あくまでも購入単価ではなく、訪問者数とコンバージョンを見ています。訪問者数が500万人を超えていることは事実なので、この人たちが100%買ってくれるためにはどうすべきかということを一番に考えています。

――では、今期取り組んでいく優先順位の高い課題にはどういったものがありますか。

とにかく、リアル店舗を持つブランドの出店開拓を進めることです。以前(2016年秋)にフォーエバー21さんに出店していただいたのですが、それは(他の出店者の誘致において)大きなフックにもなりました。直近で言えば、ワールドさんやストライプインターナショナルさんにも出店していただいていますが、こうした大手のアパレルブランドに出店いただけると、動き出す企業が出てきます。
今までショップリストはウェブブランドが集まるサイトと認識されており、リアルの会社にとっては「数千億円の売り上げを持つアパレル企業がなぜ200億円規模の仮想モールに出店するのか」ということも言われていました。しかし、実際にショップリストがこれだけ成長しており、一方で(アパレルの)EC化率が伸び悩むという状況も相まって、出店の判断をしてもらえるようになってきています。
今後も新たに出店が決まっているところもあり、今期はかなりの数のリアルブランドが拡充できるでしょう。これはSEOの観点から考えても非常に良いことで、また、顧客にとっても普段から使い慣れているブランドがあるということで安心感や信頼感を持つことができます。リアルのブランドだけに限らず、この1年間で純増100ブランドというイメージで行ければと考えています。もちろんその中でも「ファストファッション」という領域は崩さないでいきます。

――そのほかに強化すべきポイントはありますか。

やはり、買いやすさの部分でしょう。現状で130万SKUを扱っていて、それを約1万5000m2の倉庫に約100万SKUを保管しています。2018年11月にはそこから車で10分程度の距離に約4万5000m2の新しい倉庫を作る計画です。旧倉庫もそのまま残すため、それは保管倉庫としても使えます。今後は保管スペースが何倍にもなって、届くスピードも速くなるので、ユーザーギャップを埋めることができるでしょう。
また、ブランドによってサイズの測り方も異なるので、自分たちの基準をしっかりと持って顧客に対して視覚的に分かってもらえるように整備します。(オンライン試着サービスの)「バーチャサイズ」を導入したのもそうした理由からで、テクノロジーで担保しています。

――集客面では、モールとも連動したウエブマガジン「LiSTA」を3月に創刊しました。

幻冬舎さんと組んで行っていますが、れからは1年に1回、紙媒体を出すことも決まっており、この秋冬のタイミングでも出す予定です。雑誌社のコンテンツを作る力というものはやはりすごいと思います。今後は全部自前でやるというりかは、それぞれの世界でのトップランカーと一緒に組んでやるという考え方になります。

――他のファッションモールではPBに力を入れているところもありますが、PBへの興味はありますか。

中長期ビジョンの売り上げ1000億円を達成するまでは全く考えていません。達成した時に、改めてやるかやらないかを考えるということになるでしょう。やはり今の自分たちの規模ではPBを考える段階にはないと思っています。PBは利益率も高いものなので、良いとは思いますが、決して今ではないと考えています。

また、PBという考え方ですが、これは企業にとってのプライベートブランドになっていて、顧客にとってのプライベートになっていません。顧客にとってのPBとは、別に企業がオリジナルで作ることではなく、適正な価格帯や適正なデザイン、適正なサイズ感で、「この商品を買って本当に良かった」と思えるものではないでしょうか。そうした商品と出会える確率を上げることが自分たちプラットフォームの役割だと思います。

プロフィール

張本貴雄(はりもと・たかお)氏 1984年生まれ。2007年クルーズ入社。求人営業やネット広告営業を経て、ブログ、バズマーケティング、コスメECサイト、モールなど複数の新規事業立ち上げを行い、2010年に取締役に就任。2011年にネット通販事業「SHOPLIST.com by CROOZ」を立ち上げ、現在はグループのEC子会社4社の管掌取締役となり、2018年にCROOZ SHOPLISTの社長に就任している。

取材後メモ

新会社設立から約3カ月。社長就任後に会うのは今回が初めてとなりましたが、以前と変わりなく気さくな自然体のスタイルで私たちを迎え入れてくれました。元々、分社化前から社内でのEC事業の役員は張本社長一人だけだったということもあり、新体制下でも社内での立ち位置や周囲との関係性などに大きな変化がないということも関係しているのでしょう。
今、クルーズグループでは会社の規模拡大に向けて100人の経営者を生み出し、それぞれの会社が100億円の売上高を作って全体で1兆円規模の会社を目指していくという壮大なビジョンがあります。中でも“稼ぎ頭”であるショップリストの役割は重要で、張本社長も「1人で10人分(1000億円)やろう」と意気込みを見せています。

競合ひしめくアパレルECにおいて、開設以来、毎年成長を続けるショップリストのチャレンジに今後も注目していきたいです。

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