Mon, December 10, 2018

打ち消された「打消し表示」 注意すべき“広告表示”のポイントとは

消費者庁が「打消し表示」を打ち消そうとしている。2017年7月、「打消し表示」の実態調査を行って以降、今年5月にはスマートフォンに絞ったもの、同6月には視線の動きを測定できるアイトラッキング機器を使い動画広告を中心に問題点を整理したもの、と立て続けに3度に渡り「打消し表示」の調査を行ったためだ。これまで「広告」は一定の誇張が許容されるものと認識されてきた。だが、消費者庁が求めるのはさらなる誇張の排除。「打消し表示」を免罪符に自社の商品・サービスの強調が過ぎれば、景品表示法違反となり、行政処分を受けるリスクが高まっている。許容されてきた広告の認識が変わろうとしている中、今後、注意すべきポイントはどこにあるのか。

消費者庁が行う執拗な「打消し」調査は規制強化の前触れ

打消し「見ない」が半数以上

表1:「打消し表示」の認識率

「打消し表示」は、強調表示の例外などを示す目的で使われる。ただ、表示の仕方によって商取引に関わる重要事項の表示が小さいことから強調表示のみが認識され、誤認を生む可能性がある。
17年7月に行った調査では、新聞や動画、ウェブの広告例を示した上で、打消し表示を認識できているかを調査。「見ない」と答えた層が57~75%に上り、各媒体で過半数を超えていることが分かった(=表1)。こうした実態から消費者庁も規制に乗り出している。「打消し表示」の使い方として消費者庁が整理したのは「例外型」「体験談型」など7類型(=表2)。いずれの広告でも「打消し表示の文字の大きさ」「強調表示との文字の大きさのバランス」「配置箇所」「打消し表示と背景(色)との区別」の関係から問題が生じている。とくに動画の場合は「表示時間」「強調表示と打消し表示の別画面の表示」「複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示を行う場合」などに留意が必要と指摘。ウェブ広告では、1スクロール以上離れている場合に問題となる事例があることを指摘した。


スマホ広告を問題視

表2:「打消し表示」の類型

中でも問題視するのがスマートフォンにおける「打消し表示」だ。スマホはPCに比べ画面サイズが小さく、縦長のページ構成になる。PCに比べ画面サイズが小さいため、①最初の画面から何画面分もスクロールする必要がある縦に長いページ構成、②コンバージョンボタン等のハイパーリンクが用いられる、③アコーディオンパネルに情報が表示される特徴がある。
消費者の接し方も、①関心のある情報だけを拾い読みする傾向がある、②大きな文字や画像等の目立つ表示に注意が引きつけられる、③下にスクロールしないと表示されない情報を見落としやすい、④情報を拾い読みする際に、その時点で見ている画面からスクロールして、離れた別の画面の表示内容を確認しない、⑤関心のある表示を見つけると、その部分だけを見てハイパーリンクの文字列をタップし、リンク先からリンク元に戻って表示を確認しない─といった特徴がある。それだけに、PC や新聞・チラシ以上に分かりやすく商品・サービスの内容を表示することが求められるとする。

広告表示を行う際にとくに注意すべきポイントとして示したのは、①アコーディオンパネルにおける打消し表示、②コンバージョンボタンの配置箇所、③強調表示と打消し表示の距離、④打消し表示の文字の大きさ、⑤打消し表示の文字とその背景の色・模様、⑥ほかの画像等に注意が引きつけられるか─の6項目。これら要素から、消費者が誤認するかを総合的に判断する。

「アコーディオンパネル」のリスク

「アコーディオンパネル」を使った広告の問題点

実際、スマホ広告でよく用いられる事例から注意点を見ていく。消費者庁が「景表法上問題となるおそれがある」と、注視するのが「アコーディオンパネル」の使い方だ。
よくある表示例として消費者庁が示したのは英会話教室の広告例。「予約なしでいつでもレッスンを受講できる」「最初の2週間は無料」といった強調表示に対し、ウェブのランディングページをスクロールした先にあるのが「よくある質問」というアコーディオンパネルだ。
各項目は、ラベルをタップすることで開閉。開くことで「混雑時はレッスンを予約する必要がある」「レッスン予約にはその期間もポイントの購入が必要」といった「打消し表示」を確認することができる。結局のところ表示から示されているサービスは、体験期間であっても〝予約してレッスンするにはポイントが必要〟〝空いている講師がいなければ無料期間でもポイントの購入が必要〟というものだ。市場にも同様のスマホ広告は溢れている。

「強調」と「打消し」一体で

「打消し表示」と強調表示の距離の問題を示す広告

消費者庁が問題とみるのは、アコーディオンパネルのタップ後に「打消し表示」が表示されるケースだ。

調査では、アコーディオンパネルで示した「打消し表示」を見落とした者は83~91%(複数の打消し表示があるため、見落とした者の比率には一定の幅がある)。ラベルをタップしなかった者も44%に上った。
このため、消費者庁では強調表示の近くに「打消し表示」を配置。一体として認識されるように表示するのがベストとする。守らなくても景表法違反と即判断されるものではないが、違法認定のリスクは高まるい。また、クリック前のラベル表示にも「消費者がタップするような工夫が必要」と注文をつけた。例えばラベルに「解約」と示すなど、取引上の重要事項が示されているとラベル表示からも分かるような工夫だ。

「コンバージョンボタン」のリスク

「コンバージョンボタン」の配置箇所、強調表示と「打消し表示」の距離感も問題視している。事例として示したのは健康食品のランディングページ(LP)。複数回の定期購入を条件に初回購入価格を安くする、これもよくある〝定期縛り〟の広告だ。

商品は、「通常コース(都度購入)」「定期コース(毎月お届け」「トクトクコース(毎月1袋、2カ月毎に2袋、4カ月毎に4袋)」の3コースで展開されている。初回購入価格の安さが強調されている一方、実際はトクトクコースの利用に「4回分の購入が条件」といった条件が「打消し表示」で示されている。
LP上部からスクロールするとまず目に入るのが「定期コースいつでもやめられます」という赤字の強調表示。一方その下には「いつでも解約できるのは初めて注文された方に限る」という「打消し表示」が示されている。これを見落としたのは68%。「文字が小さい・薄い」「背景画像と区別がつきづらい」といった意見があったことが調査からわかっている。
「いつでもやめられる」「定期初回特別価格」といった強調表示とともにコンバージョンボタンとともに表示するケースも問題視している。というのも「打消し表示」がその近くに見当たらないためだ。スクロールすることで「途中で休止の場合は毎月の配送準備日にお電話で申請」、「トクトクコースは4回分の購入が条件」などと示されているが、強調表示とコンバージョンボタンに注意がいき、79 ~ 81%が「打消し表示」を見落とした。「打消し表示」の文字が同一画面のほかの表示比べ小さいだけでなく、背景色に対して薄い色、「打消し表示」のみ別画面に表示されていることも見落とす要因とみている。
定期購入で初回価格の安さが強調される一方、解約条件など「打消し表示」を見落とすことで商品の〝総額費用〟を誤認した場合、景表法上の「有利誤認」にあたるとしている。複数のコースがあり、どのコースに対応した「打消し表示」かも瞬間的に認識することは難しい。このため、改善策としてコースごとに異なる「(購入)数量」等の総額を記載することなどを求めている。

強調表示と同じ色、背景色で統一

こうした調査結果から消費者庁が求めているのは、強調表示と「打消し表示」が「一体として認識できる」ようにすることだ。調査報告書でも打消し表示」について、「強調表示といわば『対』になる関係」であるとして、「強調表示の隣接した箇所に打消し表示を表示」「強調表示と打消し表示の文字や色、背景色を統一すること」を求めている。

消費者向けには「アコーディオンパネルの中身を確認して」「強調表示の隣接した箇所に小さな文字や目立たない文字の色で打消し表示が表示されていないが十分注意して」「コンバージョンボタンとタップする際は打消し表示を注意して」と啓発しているが、逆を言えば、企業側には消費者心理を考え、誤認されないような広告表示を求めているといえる。

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