Sun, November 18, 2018

オンラインだけで終わらせるな! EC実施企業の“リアル接点”活用術

ECがリアルの場を積極的に利用しはじめている。もちろんこれまでもネットと店舗を融合した「クリック&モルタル」や、あらゆるチャネルを統一して垣根をなくす「オムニチャネル」といった取り組みは注目されていた。ここにきてさらに「進化」と「深化」を遂げている。EC実施企業が実店舗やイベントなど“ネット空間以外の場”を使って顧客と接点を作っているのだ。各社の最新の試みを追った。

【事例① 青山商事】

ネット連動小型店を今秋冬に拡大、在庫を持たずに商品をフル展開

青山商事の自社通販サイト

紳士服販売を手がける青山商事では、デジタルサイネージなどを活用して通販サイトの在庫とも連動させた小型実店舗の「デジタル・ラボ」を今秋冬にも拡大する。既存の通常店舗の改装や新規でのデジタル・ラボ出店を行い、これまでの累計で約10店舗まで拡大することが見込まれている。紳士服業界では先んじてリアルとネットの融合を進めてきた同社のクリック&モルタル戦略も新たなフェーズへと移ってきた。

同社のデジタル・ラボは、タブレットを持った接客スタッフに加え、自社通販サイトの在庫とつながった大型デジタルサイネージを店内に複数設置しており、来店者が店内に陳列する商品だけでなくネットで展開するすべての商品を閲覧できるようになっている。

タブレット端末も設置しており、そこで通販サイトの在庫から商品選択が可能。注文・会計処理についてはタブレットで行い、後日、自宅などに配送する仕組み。購入商品は最短2日で配送されるようになっており、店頭で試着・採寸して手ぶらで帰れる利便性で訴求している。

通販サイトと在庫連動したことで、店頭に同じ色柄のスーツのサイズ在庫を大量に持たず、商品種類を多く置くことができる。同じ型紙のブランドであれば1品番につき1サイズの在庫を店内に置くだけで、その店頭在庫をゲージ見本のように使用して試着や採寸を行えるという。

最近ではサイネージやタブレットの付近にテーブルや椅子を配置した形で専用スペースを確保するなど、同ツールで接客するための環境づくりを整備。「当社の場合、たくさんの商品を顧客に見せて接客するという品ぞろえが一番支持を得ているところ。在庫を自分達の店だけのものとして考えるのではなく、全店でシェアし合っているようなものなので在庫効率も上がっていく」(同社)とした。

また、デジタル・ラボでの売上げは各実店舗の成果とされることから、有店舗企業が抱えるEC部門と実店舗の顧客の取り合いという構図が生じることがなく、実店舗としてもECへの送客を後押しすることに前向きになれるようだ。

加えて、実店舗側のオペレーション面でも、スタッフの業務が簡素化されるというメリットがある。デジタル・ラボの場合、店内にほとんど商品の現物がないので、販売しても店舗の在庫が減るということがなく、一般の店に比べると仕入れ作業もかなり少なくなる。また、裾直しといった商品の補正に関しても、一度、外部に直し作業に出してからまた店舗に戻して、改めて上下セットにして保管場所に置くなど、スタッフが接客の合間の時間を使って行っていたこれらの作業が大幅に軽減されることから、販売だけに専念できる環境ができているようだ。

デジタル・ラボの売り上げも順調に拡大しており、現在は売り場の面積が比較的小型の店舗を中心に、主に東京での出店展開が進んでいるが、今後は都心部以外の地方などに波及する可能性もあると予想される。

テーブル内に埋め込み式の大型タッチパネルも導入

デジタル・ラボではEC 在庫とつながった大型デジタルサイネージを設置している

関連して、9月18 日にはデジタル・ラボ1号店となる「秋葉原電気街口店」に、専用スペースに置かれたテーブル内に埋め込み式の大型タッチパネルを試験的に導入した。タブレットの機能をそのままテーブル大のサイズに拡大したもので、大画面をタッチしながらコーディネートを確認することができ、そのまま画面上の通販サイトのマイページで決済することも可能。店舗スタッフが接客時に使用するほか、来店者が自由に使うこともできる。

具体的には「就活」「結婚式」など利用シーンから選択できるようになっており、画面上にはスーツ、シャツ、ネクタイを自由に組み合わせて変えられるシミュレーション画像を表示。店頭のサイネージでお気に入り登録した商品情報を反映することもできる。サイネージと同様に、同店舗に置かれていないすべての商品在庫から選択することができ、そのままカートボタンからの購入も可能となっている。

サイネージの役割が商品検索を主眼としている一方で、同ツールではコーディネート提案を大きな役割として期待している。商品の組み合わせ提案によるまとめ買いを促す効果も見込んでおり、導入直後から利用する顧客が見られている。

これまで店頭でコーディネートを見せる際は、スーツをテーブルに置いてワイシャツやネクタイを挟み込んで例示する形だったが、それをより実際の着こなしと近いイメージで分かりやすく見せることができ、実店舗の在庫に限らず幅広く選択肢を提案できるメリットがあるようだ。

2020年度にデジタル・ラボでEC 売り上げ越え目指す

秋葉原電気街口店では新たにテーブル埋め込み式の大型タッチパネルを試験導入した

なお、同社では今年度から2020 年度までの中期経営計画において、デジタル・ラボ店舗とECの合計売上高で67億円を目指している。2017 年度の合計売上高は22億円(EC が19 億円、デジタル・ラボが3億円)、2018 年度の計画は28億円(同22億円、同6億円)で、2019 年度計画については40億円( 同25億円、同15億円)、2020年度計画についてはデジタル・ラボがECの33億円を上回る34億円を目指すなどEC以上の成長率を見込んでいる。売り上げ拡大に向けては、デジタル・ラボの拠点拡充が今後も続くと見られており、EC と連動した店舗設計の強化が重要課題となる。

そのほか、EC 分野でのテコ入れとして、利用者が伸びているアプリを起点とした実店舗との連携を図る導線も強化。また、2016年から開始している「シェアリング」サービスも、利用率の高い20~ 30 代をターゲットに推進。モーニングやタキシードのラインアップで開始したところ2017年度は売上高が約2億円となり、今後も取扱商品の拡大や、会員組織と紐づいたサービス展開、レンタル専用ECサイトの開設などを行う考え。

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