Sun, November 18, 2018

厚労省、「学会認定」「医師監修」 など〝権威の推薦〟徹底監視へ 変わる化粧品の広告規制

化粧品の効能表示は56の範囲に限定される。2011 年に「乾燥による小ジワを目立たなくする」という効能が新たに追加されたが、それでも表現できる範囲は狭く、企業は商品の独自価値を訴えるため広告の創意工夫に腐心する。独自の美容理論で訴えてみたり、目を引くミューズを使ってみたり。「大学との共同研究」「大学との共同研究で生まれた成分」といった表示もその一つ。だが、厚生労働省がこうした〝権威の推薦〟を巧みに使った化粧品(医薬部外品を含む)の表示規制に乗り出している。2018年8月には、都道府県等で広告監視を行う薬務主管課宛てに事務連絡を発出。地方自治体による取締り強化に向け薬事法上の詳細な判断を示した。

取締り表現、「学会」を明記へ

「『医師』といっても毎年、国家試験で次から次へと生まれている。実際はピンキリで、金を積めば何でも都合の良いことを言う存在」。かなり辛辣な意見だが、こう指摘するのは厚労省で医薬品・化粧品等の広告監視を担う監視指導・麻薬対策課の担当官だ。これまで巷には「大学との共同研究」といった表現だけなく「学会の認定」「医師が監修」など〝権威の推薦〟を笠にきたさまざまな化粧品の広告が氾濫してきた。

「医薬関係者の推薦」は、薬事法に基づく監視の基準を示す「医薬品等適正広告基準」(以下、適正広告基準)の中で以前から規制されていた。消費者に推薦と受け取られる可能性のある〝権威〟として例示するのは「医薬関係者、理容師、美容師、病院、公務所、学校などの団体」ただ、「推薦」とひと口に言っても「共同研究」や「共同開発」「監修」などがこれにあたるのか。判断が微妙であることから、地方自治体による指導にもばらつきが生まれていた。今回の事務連絡はその是正を図るものでもある。

「大学と共同研究」もダメ

厚労省は17年9月、適正広告基準を改定した。その「大きなポイントの一つ」(監麻課)とするのが「『医薬関係者等の推薦』に『学会』という文言を加えたこと」(同)と話す。また、「薬局」も医療提供施設へと格上げされたことを受けて広告基準に新たに追加された。
さらにその解釈を示す目的で今年8月に出された事務連絡(医薬品・化粧品等広告の適正な監視指導に関するQ&A)では、「○○大学との共同研究」「○○大学との共同研究から生まれた成分」といった表示も「医薬関係者等の推薦」にあたり、薬事法に抵触するという見解を示した。

具体的に例示されたのはこれだけだが、〝権威〟を使った似たような表示はほかにもある。例えば「○○学会の認定商品」、医師や教授の「監修」といった表示。また、医師を会員とする民間企業が医師の評価に基づき、企業に「医師の確認済み商品」といった内容を示す認定マークを付与するサービスもある。こうした表示にも「学会の認証商品は論外。民間の認証も広告に使えば抵触する」(同)と断じる。

「推薦」「認定」といった表現だけでなく「選んだ」というのも問題になる。例えば、「美容師が選んだシャンプー」といったものも「推薦に該当する」(同)という。要は、〝権威〟を巧みに利用し販売しようとしている意図が感じられるものはおしなべてNGというわけだ。「公務所、学校、学校を含む団体」の範囲も〝医薬関係〟に限定されることはない。

このため、一方で問題とはならないケースもある。例えば、公衆衛生の維持増進といった観点から公務所等(行政の関連施設)が指定している場合など、その事実を広告することが必要な場合は問題にならない。また、従来から薬店で行われているように、店頭で単に商品をお勧めするような行為、例えば、美容師などが化粧品の使用方法の実演などを行うことを禁じるものではない。ただ、こういったケースはかなり限定されるだろう。監麻課の担当官も「医薬品等の効果については行政が責任を持って承認するのが薬事制度の根幹。なので『○○大学との共同研究』などというのは不適切」と、監視強化に向けた強い意志を隠さない。

健食も取締り対象の可能性

ちなみにトクホや機能性表示食品を含む健康食品はどうか。これらは〝効能効果〟をうたわない限り、薬機法の規制の対象にはならない。適正広告基準のおよぶ範囲も医薬品、医薬部外品、化粧品までだ。

ただ、だからといって〝権威の推薦〟を使った広告ができる、というわけではない。というのも健食の場合、こうした〝権威〟を笠に着た広告が効能効果を示していると捉えられれば、その「明示・暗示」を問わず、「未承認医薬品の広告の禁止」(第68条)に抵触し、別の条文で取締りを受けることになるからだ。

例えば糖尿病関連の学会に所属する権威のある医師や教授が「私も推薦しています」と商品広告とともに登場した場合。健食を対象にしない適正広告基準の対象からは外れるため、基準で示された医師や大学など詳細な〝権威〟と関連は考慮されない。薬機法に基づく「誇大広告の禁止」(第66 条)にも問われない可能性が高い。

一方で、こうした表示は「あたかも糖尿病にも効果があるかのような暗示」として不適切と判断される可能性がある。その場合、「未承認医薬品の広告の禁止」(第68条)と判断され、指導や取締りの対象になる可能性がある。ちなみに第66条は違反しても罰則はなく、指導にとどまるが、第68条は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科」といった罰則がある。化粧品広告における違反より、強力な罪に問われる可能性があることを忘れてはならない。

「ビフォーアフター」の基準改定

〝権威の推薦〟と並び、17年9月の適正広告基準の改定で注意が必要になったのが使用前後の画像を比較する、いわゆる「ビフォーアフター画像」の使用だ。

「ビフォーアフター画像」を使い、商品の効果や安全性を保証するような表現はこれまでも適正広告基準の中で厳しく規制されていた。「使用前、使用後の図面、写真等の表現については効果、安全性の保証表現となるので原則として認められない。ただし、使用前、使用後がないものでかつ、使用中のものを表現することは差支えない」というものだ。

ただ、ここで重要なのが「使用前・後」の解釈だ。丁寧に説明すれば言葉通り、商品を使う前と使った後の写真やイラストを使い、商品の効果や安全性を表現してはいけないことになる。

では、「使用中」はどうだろうか。また、赤の他人同士の使用前後を比較する「別人比較」はどうか。従来の解釈からすれば、こうした表示は「使用前・後」にあたらないため〝可能〟となっていた。「使用前・後」の禁止を重視するあまり、実態に即して広告を取り締まることができない矛盾が生じていたわけだ。

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