イトキンのEC成長戦略 3カ年でEC基盤を整備

幅広いファッションブランドを手がけるイトキンは、自社通販サイト「イトキンオンラインストア」を主軸にEC事業を成長の柱のひとつとして強化しており、実を結んできているようだ。

同社のEC事業については、以前から柱事業への育成を打ち出していたものの、これまではEC部門のオフィスが離れていたことで各ブランド事業部との意思疎通が十分ではなかったり、利益が十分に出ない体制だったこともあって成長へのアクセルを踏み切れていなかったという。

そこで、3年がかりでEC事業の改革に着手。2016年はベンダーやささげ業者など取引先を入れ替え、利益面でも会社に貢献できるようになったことで、経営陣の信頼を得た。

17年には組織改編を実施。ブランドごとにEC専任者を配置したほか、WEBビジネス部も本社ビルに移し、EC事業を担う総勢約30人がフリーアドレス制のオフィスで業務を行うことで、コミュニケーションがとりやすい環境を整えた。また、通販サイトも刷新。SaaS型のシステムを採用し、バージョンアップの恩恵が受けられるようにした。

18年には岩間(茨城県)にある店舗向け倉庫にEC在庫を移管、統合している。

サイトリニューアルでは、ブランドごとに特集やコーディネート提案、アイテムランキングなどを打ち出せるデザインにし、各ブランドの発信力を高めた。また、自社通販サイトで店舗在庫を表示する機能も実装。今後は、来春をメドに自社ECを介して気になる商品を実店舗で取り置き(試着予約)ができる機能などを増やしていく。

サイト刷新後、UI・UXの改善や決済までのプロセスも見直したことでカート落ちが低減し、今上期(2~7月)の自社ECのコンバージョン率は前年同期比50%増と大幅改善した。また、他社商材の買い付けも行うなど、ECの品ぞろえを広げる試みを始めたこともあり、サイト訪問者数は同20%増に、客単価も若干上昇し、上期の自社EC売上高は同80%増と好調に推移した。

MD面では、自社EC内で買い付け品などを扱う「バイヤーズセレクト」を昨年12月に開始。クリスマスのギフト需要をにらんで時計のテスト販売を行った。現在もさまざまなジャンルの商品を試しており、既存顧客のボリュームゾーンである40代女性をターゲットに、ライフスタイル雑貨を強化するのと同時に、新客開拓も図る。

また、10月には全ブランドが参加して自社EC限定アイテムを販売する企画を実施する予定だ。各ブランドが以前のヒット商品の復刻アイテムや、素材がワンランク上の商品などを自社ECで販売することで、ユーザーの満足度を高める。

インフラ面では、撮影業務の効率化と画像のサイトアップまでの迅速化に着手している。従来の撮影スタジオはカメラマンやアシスタント、ベンダーが常駐してコスト高だったが、現在は都内のスタジオを利用するほか、EC部門と同じフロアにモデル撮影もできるスタジオを新設。さらに、3拠点目を岩間の倉庫に新設し、10月にも始動する。

撮影スタジオの拡張もあり、同社では8月下旬に、パソコンとスマホで商品をどの角度からも確認できる360度ビューの機能を自社ECに実装。まずは「エミリオロバ」のアートフラワーからスタートしたが、今後はファッション商材にも広げる考え。

イトキンのEC事業は足もとも上期のペースを維持しているようで、19年1月期の自社EC売上高は前年比80%増を、他社モール経由の販売を含めたEC全体の売上高でも同55%増を見込んでいる。また、EC売り上げ全体に占める自社ECの割合は前期で40%程度だったが、今期は55~60%と、「予想よりも早くモール経由の売り上げを逆転する」(阪田次朗WEBビジネス部部長)見通しのほか、21年1月期までに自社ECを65%まで拡大させたい意向だ。なお、同社では自社ECを中心とした成長によって21年1月期にはEC化率10%を目指す。

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