Wed, December 12, 2018

品ぞろえを武器に“感動”を提供する 池上 正● 白鳩 代表取締役社長

白鳩が好調に売り上げを伸ばしている。前期(2018年8月期)の売上高は増収で着地し、事業の拡大を続けている。一方でネット販売市場は広告の効率悪化や配送費の高騰などさまざまな課題が浮上し、変化する市場への対応が急務になっている。昨年11月に副社長から社長に昇格した池上正氏が、1年の振り返りと、変化するネット販売市場における白鳩の強みや、今後の成長戦略について語った。

品ぞろえを増やす限りお客様はついてくる

現場第一で社員のベクトルを合わせる

――社長就任1年を振り返って。

何も変わりません(笑)。これまで以上に表に出る機会が増えましたが、今でも現場が好きで、スピード化する通販市場の中でお客様に感動を与えることを第一に考えています。売上や利益は手段であって、下着を通じて感動を創出することは、これまでと変わらないミッションとなります。

社長に就任して以降、株主や取引先、お客様など従業員も含めてステークホルダーと接する機会が増えたので、わかりやすく伝えることが務めと考えています。とは言え、業務については全体の事業計画の策定や組織作りなどを行っており、これまでの延長になるのでやっていることはあまり変わらないですね。

――進めていることは。

社内では「Far Together ! ─未来へみんなで一緒に─」を合言葉に、全社員のベクトルを合わせています。フラットな組織作りを目指して、事業性の見直しなどを行いました。

―― 前期の売上高は前期比5.9%増の53億8400万円で、営業利益は同1.4%減の1億9900万円でした。評価は。

当初の予想からみれば100点とは言えないと思います。越境ECが未達だったことと、夏場が伸び悩みました。天候のせいにはしたくないんですが、猛暑や災害などの影響があったかもしれません。天候を読み込んだ上で最適な商品を提案することは難しいかもしれませんが、変化に臨機応変に対応しなければならないと考えています。

――前期の業績をみるとアクセス数は前年を割りましたが、購買率は前年を上回っています。

両方伸びた方がいいのですが、アクセス数が増えると購買率は低下しがちです。アクセスした人がどういった人でどういう理由でアクセスしたか、その内容が重要になるわけです。集客を煽るようなプッシュ型広告をやめて、プル型広告へのシフトを進めている中で、購買率が上がったのは評価できます。

商品の良さやサービスに感動してもらって購買につなげることが重要です。当社のサービスが良いと認識してもらえるお店でなければ、新規顧客層への広がりも期待できません。

――奏功した点は。

商品の品質やサービスなど従来の取り組みが強みを発揮しているのだと分析しています。品ぞろえは1万2000アイテムを超えていて、売れ筋とされる2割だけでなく、ロングテール商品も動いています。品ぞろえは当社の武器で、品ぞろえを増やす限りお客様はついてきてくれると考えています。
商品画像についても誇大な画像になってはなりません。メーカーから良いものを仕入れて、着用感を一人称で、お客様の立場になってテキストで届けることを心がけています。価格も重要で、価格競争になった場合の体力も強みの一つだと考えています。

スマホの画面から飛び出す

――課題は。

広告手法は限界にあり、サイトによって最適な手法も異なっています。認知度が低い通販サイトであっても、これまでと同じ広告では1人あたりの獲得単価は確実に上昇していくと予想しています。お客様は衝動的に購入しなくなっているわけですね。

――前期からプッシュ型からプル型に広告をシフトしましたが、理由は。

ユーザーは今は1つの広告だけで購入しなくなっていて、さまざまな媒体を回遊した上で購入を決めます。そのため、ユーザーの購買のきっかけが何かわかりにくくなっています。大手仮想モールでもアフィリエイトプログラムを見直しており、広告の転換期を迎えていると考えています。
そうした中で、当社はスマホの小さな画面から飛び出して何をするかを考えました。他社ではすでにやっている試みかもしれませんが、前期からインフルエンサーを活用するなどSNS活用を強化しました。今期からはオフラインの広告出稿にもチャレンジしていきます。

――オフラインの広告とは何でしょうか。

生活情報雑誌への広告を展開します。今までそういった広告出稿のルートがなかったので、今回が初めての試みとなります。広告代理店の担当者からの提案だけでなく、社内スタッフのリサーチの結果などを踏まえて検討した結果、オフラインの広告に合致しそうな商材もあったのでやることにしました。

――訴求する商材は何でしょうか。

ガードルを訴求しています。年間を通じて需要があり、サイズが多岐にわたっていないことに加え、価格帯も考慮しました。主に機能性を訴求する内容ですが、消費を積極的に行う層が読者となりますので期待しています。

――立ち上がりは。

出稿後に反応もあり、これからだと思います。1回の出稿ではなく、継続的に展開して反応をみていきたいと考えています。他の媒体についても、良いものがあれば検討したいと思います。

商品の販売だけでなく、それによる相乗効果を含めて評価していきたいです。小売業者にとっては、お客様が商品を購入しようとしたときに最適なタイミングで出会える広告が最も重要です。

――新しい試みをスタートしていますが、広告費は今期増やしたのでしょうか。

売り上げに対する広告比率は前期並みですが、内容は変えていきます。SNSや雑誌広告など新しいことを始めた分、一部のウェブ広告は見直しました。SEMはこれまで通り予算を確保して運用しますが、新しい広告手法は良ければ継続したいと思います。スタッフの意識も前向きで、1年を通して新しいものへチャレンジします。

送料無料キャンペーンの精度を高める

――今期から、配送料金の値上げに踏み切りました。

配送業者からは50%の値上げの要請がありました。これはコストを圧迫し、配送料を無料化するのは困難な状況となりました。お客様には、注文すれば無料で届くわけではないことの理解を促していきたいと考えています。
送料無料をやめた9月度の売上高は、お客様が敏感に反応したため苦戦しました。一部商品を送料無料対象商品に指定するほか、期間を限定して送料を無料化するなど、キャンペーンのような形で展開します。こうした施策をやりながら精度を高めたいと考えています。まずは、売上高を前年並みに戻して、品ぞろえを強みに展開していきます。

――有料化に伴って、配送のサービスに対してはどう考えますか。

送料を徴収するようになったので1日でも早く届けることは重要になると思います。大手配送業者は国内ならほぼ翌日に届けることが可能となっています。ただ、セールなどイベントで物量が増えたときの影響を受けてしまう部分はあります。

――配送サービスで強化する点は。

メール便の活用を始めました。翌日配送ではないのですが、宅配便よりも送料を安価にお届けすることができます。

下着という商材の特性上、配送員が自宅に訪問することを嫌がる女性もいるので、ポストへの投函が喜ばれるという話も聞きます。在宅時間を気にせずに受け取りができる利便性をお客様に伝えることで、理解を促していきたいと思います。

――中小の活用などの検討は。

全国配送をするには大手3社以外を選択できないのが実情です。
そういった中で楽天が掲げるワンデリバリー構想には期待しています。ネット販売はユーザーのメールアドレスを情報としていただきますので、配達の連絡をメールでできるようになれば、不在率の低減につながる可能性もあります。第三の勢力によって、値上げが続く配送料金にもブレーキがかかるかもしれません。

――配送料の値上げの影響についての今後の見通しは。

配送料金は各社で値上がり、顧客の負担が増える中で、各社苦戦していると思います。配送料金が発生するとなれば、商品単価が安価なところは難しくなるでしょう。1000円のものを送料をプラスしてまで購入するかといえば厳しいかもしれません。

売上高100億円へ新物流拠点で能力4倍に

新社屋でコミュニケーションを活発化

――新倉庫への移転も計画しています。

2020年の移転を目指しています。新倉庫はストック倉庫配送を行う物流拠点となります。在庫・出荷能力は現状の4倍に拡大します。
先ほども申したように、1万2000以上の品ぞろえは当社の武器となっていますので、そこを強化することで成長を目指します。現状は181のブランドとの取引がありますが、今後も大手ブランドとの取引を強化し、取り扱いブランドの拡充とセール・アウトレット品のラインアップ強化をすすめます。新社屋は中心フロアに全部署を集め、コミュニケーションの活性化と価値観の共有を目指した組織作りを行います。365日稼働に向けた体制作りや、多様な人材が活躍するダイバーシティ経営を進めていきたいと考えています。

――品ぞろえの増加は在庫の積み上げや、アイテム拡大などが考えられますが方針を教えてください。

商品ラインアップの拡充や、在庫の増加などは販売計画に応じて対応します。仕入れ部隊が担当している領域となり、商品管理の精度は高まっていますしスタッフのスキルも向上しています。

システム提供などで収益の柱を

――今後、通販システムの販売も計画していますが、売りを教えてください。

新規事業として、自社開発した基幹システム「楽らく通販システム」の提供を開始します。少量多品種の在庫管理と、複数のモールに出店する多店舗展開に対応したシステムとなります。

外部提供を行うためのシステム開発や営業担当者の人材を確保しており、小田急グループを含むネット販売実施企業に営業活動をすすめたいと考えています。

――アパレル通販がターゲットになるのでしょうか。

下着はサイズやカラー展開が豊富で、細かな商品管理がノウハウになります。当社が提供するシステムは在庫管理だけでなく、顧客管理や受発注、商品登録など、ネット販売に必要な業務すべてに対応していますので、アパレルだけでなく、幅広い業種で活用できると思います。

――中長期的な目標は。

5年後に売上高100億円を突破したいと考えています。大きな目標ですが、達成したいと考えています。
10月25日に5カ年の中期経営計画を発表しました。2023年8月期の売上高は前期比12.7 % 増の106億円、営業利益は同41.0%増の6億3600万円、経常利益は同42.5 % 増の6億3000万円を見込んでいます。先ほど申し上げた主力のネット販売の強化に加え、新規事業をすすめ成長を目指します。海外のネット販売についても、体型やニーズが日本と近い中国や東南アジアを中心に多店舗展開を積極化します。

プロフィール

池上 正(いけがみ・ただし)氏 1968年10 月2日生まれ。1992 年4月、グンゼに入社。2000年5月、白鳩に入社して02年6月に取締役に就任した。07年3月常務取締役経営企画室長に就き、11年11月に副社長に昇格した。以降は副社長として、ウェブ事業や海外事業、商品事業、仕入れをそれぞれ担当しECのすべての部門を経験した。17 年11月、社長に昇格し、ソリューション本部担当に就いた。

取材後メモ

白鳩は1965年に会長の池上勝氏が個人創業したところからスタートした企業です。1995年にネット販売を開始し、99年に「楽天市場」に出店するなど、ネット販売市場においては老舗企業の1社と言えます。変化の激しい黎明期から今日まで事業を継続できたのは、変化する消費者や市場を捉え、いち早く対応できたことにあるように思います。

今後、物流センターを新設し出荷・在庫能力を4倍に高めます。365日稼働を視野に入れた体制作りを行うとしています。白鳩の強みは1万2000を超える品ぞろえで、この強みをさらに高めていくための投資だと説明しました。大手が存在感を示し競争が激化するネット販売市場で顧客に選ばれ続けるには、自社の強みは何かをしっかりと分析し、強化しつづけることが重要のようです。

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