Wed, December 12, 2018

楽天と西友のネットスーパーが本格始動 ―― センター出荷も併用し黒字へ

約2万点の商品を扱う

楽天と西友が共同で立ち上げたネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」が2018 年10 月25 日、本格始動した。西友実店舗からの配送だけではなく、新たに立ち上げた千葉県柏市のネットスーパー専用センターと、都内数カ所の配送拠点を活用した配送も始める。アマゾンジャパンやセブン&アイホールディングス(HD)など競合も多い中で、楽天と西友が手掛けるネットスーパーの強みとは。

柏市内にセンター新設

楽天では18年1月、米小売り大手のウォルマート・ストアーズと提携すると発表。日本においては、ウォルマート子会社の西友と共同でネットスーパー事業を手掛けることを明かしていた。
両社では4月に楽天西友ネットスーパーと、楽天西友ネットスーパーマーケティングを立ち上げ(出資比率は非公開)。これまで西友が運営していた「SEIYUドットコムネットスーパー」をサービス変更する形で、8月からサイトを運営している。
経済産業省の調査によると、食品や飲料、酒類のネット販売比率は、わずかに2.4%。「諸外国に比べても非常に低く、今後は非常に大きな成長をするのではないか」(楽天の小森紀昭執行役員)。同社ではこれまでもネットスーパー事業として「楽天マート」を手がけてきたが、西友と組むことで主に生鮮食品の品揃えを大幅に強化する狙いだ。
西友ではこれまで、SEIYUドットコムとして店舗出荷型のネットスーパーを手がけてきたほか、今年1月までは配送センター出荷型サービスとして「ビッグセーブ」も展開。流通額は毎年2桁のペースで伸びている。メインユーザーは、30~40歳代の子育て中の女性となっている。
ただ、最近は注文増に伴い、店舗からの出荷に余裕がなくなっていた。「当日配送ができるにも関わらず、注文時に指定できる配送日が2日後という状態が続いていた。出荷のキャパシティーに問題が出ており、これ以上店舗からの出荷は増やせかった」(西友の竹田珠恵執行役員)。そこで、キャパシティーを大幅に拡大するために、千葉県柏市内にネットスーパー用の配送センターを新設。ここを拠点として、都内に数カ所設けた拠点に運び、そこからラストワンマイルという形でユーザーに届ける仕組みだ。
配送先の住所によって、店舗からの出荷、もしくは配送センターから拠点経由と、最も効率が良い手法でユーザーに届ける。西友の竹田執行役員は「センターができたことで全体の配送キャパシティーが1.5倍になる。ユーザーが望む時間に届けられるようになった」と胸を張る。

楽天市場の商品も販売

専用センターには冷蔵・冷凍庫を完備し、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯で商品を保管。センターを中心に、各配送拠点を活用することで、受注可能件数を最大化し、ユーザーが希望する時間に新鮮な生鮮食品などを配送する。
品揃えの面では、両社の強みを活かしてユーザーのニーズに合致したラインアップを揃える。西友の強みである、生鮮食品や加工食品、飲料、日用品などをラインアップ。西友は「エブリデー・ロープライス」が特色で、顧客に対し「店舗にいつ来ても他店より安く商品を買える」安心感を与える点を重視している。さらには、プライベートブランドとして「みなさまのお墨付き」シリーズも展開。価格や品質面での優位性で他のネットスーパーに対抗する。

また、楽天ならではの商品としては、仮想モール「楽天市場」で販売するグルメを扱う。楽天市場で人気の「ルタオ」のチーズケーキや、「博多若杉」のモツ鍋セットなど、25日現在で約250商品。また、楽天の農業サービス「楽天ラグリ」の有機野菜や有機野菜サラダも販売する。さらには、会員プログラム「楽天ママ割」とミールキットを共同開発する予定だ。
店舗と共同の取り組みとしては、11月1日からは期間限定で、西友115店舗において「楽天市場フードセレクション」を開催。楽天市場で扱うグルメの知名度を高める狙いだ。
楽天IDとの連携も大きなメリットとなる。楽天IDを保有する会員は、登録済みの住所やクレジットカードなどを利用して、スムーズにネットスーパーができるだけではなく、楽天のポイントサービス「楽天スーパーポイント」を貯めたり使ったりすることが可能となる。さらには、楽天市場など他の楽天サービスからの送客や、楽天ポイントを活用したマーケティングも行う。
今後の展開としては、配送網の整備行うことでサービスエリアを拡大するほか、商品ラインアップを現在の2万点からさらに拡充する。さらには、楽天の持つデータやテクノロジーを活用することで、ユーザーごとにパーソナライズ化された商品を提案。「楽天の強みを活かすことで、より良い買い物体験を提供できるのではないか」(小森執行役員)とする。

需要取り込みカギに

近年は、アマゾンジャパンの「アマゾンフレッシュ」やセブン&アイHDとアスクルが組んで展開する「IY フレッシュ」など、競合もネットスーパー事業に力を入れている。楽天と西友の両社でも、これまでネットスーパー事業を手がけてきたが、やはり課題となるのは収益性だろう。
楽天では「柏のセンターの稼働率が高まってくると黒字化が見えてくる」(同)とするが、まずはそれだけのニーズを取り込めるかどうかがカギになってくる。また、「(センター発送で)1都3県で店舗発送ではカバーできないエリアを埋める」としているが、サービス開始当初はかなり狭いエリアからスタートするのが“常道”だけに、1都3県という広いエリアを遅配なくカバーできるどうかもポイントになりそうだ。

【両社の担当者に聞く ネットスーパー事業の成長戦略】

10月25日に開催された記者会見において、楽天の小森紀昭執行役員(写真㊨)と西友の竹田珠恵執行役員と記者との質疑応答や、囲み取材における一問一答から抜粋して掲載する。

Q:配送エリアの拡充について。

西友の竹田珠恵執行役員(以下、竹田):東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の首都圏を中心に拡充していく。今回は柏市に配送センターを立ち上げたが、第2センターの立ち上げも検討中だ。

Q:ネットスーパーの普及が遅れている理由の一つとして、黒字の確保が難しい点が挙げられると思うが、今回の事業ではどのように黒字を出すのか。

楽天の小森紀昭執行役員(以下、小森):ネットスーパーの場合、店舗周辺からの注文は取りやすいものの、商圏エリアから離れていくに従って注文が取りにくくなる傾向がある。今回の取り組みではエリアを拡大するにあたり、楽天IDを活用することで、高い頻度で購入してもらえるユーザーが確保できるのではないか。また、配送効率化や物流センター効率化により黒字化を達成できると思う。

Q:柏の配送センターや都内の配送拠点について詳しく。

竹田:冷蔵・冷凍・常温商品、約2万SKUを扱う。配送の仕組みについては、柏のセンターから都内の拠点に運び、そこからラストワンマイルという形でユーザーに届ける。これにより、配送の最適化が可能になる。まずは1日6便で、配送可能な数を増やす。今後は早朝や深夜の配送も検討したい。

Q:競合するネットスーパーへの優位性は。

竹田:戦い方はそれぞれの競合によって違うが、まずセブン&アイHDの「IYフレッシュ」について、これは実店舗でもそうだが、価格の面で優位性を持っている。アマゾンジャパンの「アマゾンフレッシュ」に関しては、西友が生鮮食品に関するノウハウを持っていることで優位に立っているのではないか。

小森:楽天としても、生鮮食品の仕入れや管理を自社でやるよりは、ノウハウを持つ西友と一緒に取り組む方が有利だと考えた。ネットスーパーは、オフラインの安心感をベースに、当社の持つオンラインの強みを活かして伸ばしていくビジネスだと思う。

Q:配送拠点からのラストワンマイルには、楽天が始めた自社物流「楽天エクスプレス」は関わっているのか。

小森:協業に関する検討はスタートしている。配送管理システム(TMS)は共有化しているし、将来一緒にやっていく仕組みを構築する。

Q:黒字化するために必要なことは。

小森:細かい話は差し控えたいが、柏のセンターの稼働率が高まってくると、ある程度黒字化は見えてくる。センターをもう一つ作ると償却費が発生するわけだが、稼働率を高めれば黒字化に近づくというのであれば、先行投資していきたい。ウォルマートのグローバルにおけるケーススタディーも活用して効率化を進める。

Q:ネットスーパー事業を成功させるためのポイントは。

竹田:配送のオペレーションをどう組み立てるか、配送のキャパシティーをいかに作るか、ウェブ上でのサービスをどれだけ使いやすくするか。
小森:生鮮食品の調達について、西友は圧倒的なバイイングパワーがある。両社の強みを組み合わせることで日本一のネットスーパーになれると思う。

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