Sun, May 26, 2019

規制改革委、景表法 〝いびつな運用〟を問題視 変わるか、機能性表示食品の広告規制

景品表示法の運用に〝待った〟がかかっている。景表法は、2009 年の消費者庁創設以後、その運用が消費者庁に移管された。規制の観点も「公正競争の維持」から「消費者保護」に転換。以降、健康食品に対する厳しい規制が続いている。とくに15年に導入された機能性表示食品制度を対象に行われた「葛の花事件」の一斉処分は、企業を驚かせた。制度が、安倍総理の肝いりで、成長戦略の一環として導入されたものであったためだ。処分は、その信頼を損ない、安倍総理の意向と逆行するものでもある。こうした中、これに待ったをかけたのが、政府の規制改革推進会議。ここ最近の景表法の運用が〝恣意的〟であるとして、処分の基準を示すよう、消費者庁に迫っているのだ。

「刑務所の塀がどこか分からない」

「どこに刑務所の塀があるのか分からない」。ある健食の通販事業者はこうこぼす。健食は、景表法、健康増進法、薬機法、特定商取引法などさまざまな表示関連法規の規制を受けるが、各法における「誇大広告」の判断はまちまち。ある日、どの法律で、どういった規制にさらされるか分からないためだ。

「いくら食べても…全然問題ないのです!リバウンドを気にしないダイエット法。驚くほどクビレだ」。乳酸菌配合のある健食の広告表示だ。

別の健食でこんなものもある。「免疫力・自然治癒力UP !」「『薬用○○水』(略)驚きの不思議な水!即、美白肌!様々な病気が改善され、元気に若返ります」。いずれも景表法に基づく〝指導〟を受けた広告の実例だ。

健増法の運用実例をみるにつけ、事業者側の混乱はより深まる。

「脂肪の燃焼に関わり、免疫力を作り出すのに需要です(不足すると代謝機能が落ち、血中コレステロール値などが上昇しやすくなる)」、「ジージー・キーン、ザーザーの気になる方へ…。聴こえの悩みに新○○(商品名)が注目!」、「毎日のお茶を○○(商品名)にするだけで体脂肪が減る!血中の中性脂肪が半減!腎臓周辺の脂肪が13%減少!血糖値が30%低下!」。これら表現は、いずれも健増法で指導を受けた実例。本来、薬機法や景表法でも取締りの対象となりそうな事案だが、これら表現で指導された会社のすべてが当然「社名」も公表されていないのだ。

消費者庁は16年6月、事業者の法執行に対する「予見可能性」(処分を受ける可能性)を高める狙いから「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(以下、留意事項)を発行した。前記の実例はそこに〝指導例〟と掲載されたもの。中には〝処分が適当では〟と思われるものも複数含まれる。ただ、なぜこれら表示が「指導」で終わったのか、「処分(措置命令等)」に至らなかったのか、その理由は判然としない。これでは事業者が「刑務所の塀が分からない」というのもうなずける。

「がん」言及しても〝指導〟

消費者庁は四半期ごとに行う健食のネット広告監視事業でも健増法に基づく指導を行っている。17年度の実績は381社の425商品。監視事業における検索キーワードとして「がん」や「動脈硬化」「糖尿病」など疾病の治癒や予防に関する効果表現などが設定されている。

ただ、前出の指導同様、おかしいのは、これら疾病への言及は本来なら薬機法に抵触する可能性が高い事案であるにもかかわらず、いずれも「指導」で終わっていることだ。こうした不可解な法適用に、事業者からは、「一方で疾病の治癒や予防に言及した健食がセーフになり、あまりに不公平だと感じる。機能性表示食品こそ健増法で対処すべき」「『不実証広告規制』で根拠資料を提出してもどういう判断がされたか分からない。いきなり結論(措置命令)で、根拠資料も明らかにされず、判断の根拠も分からない」といった声があがっている。

処分の「予見可能性」向上へ

18年11月、政府の規制改革推進会議(以下、規制改革委)は、専門チームを組織した。そのテーマについて、チームに参加する森下竜一大阪大学大学院教授は、「景表法の処分に対する『予見可能性』の向上にある。今の運用は事業者が正しい広告を行う機会を奪っている」と話す。チームにはほかに江田麻希子委員(世界経済フォーラム日本代表)、川渕孝一委員(東京医科歯科大学教授)が参加する。

そもそもチームの結成が決まったのは、規制改革委が企業からの規制改革に関する意見を集める「規制改革ホットライン」に寄せられた1つの要望だ。社名は非開示だがある企業から、機能性表示食品において、事後的に景表法を運用する表示対策課から指摘を受けることがない仕組みの構築や広告宣伝におけるQ&Aを示してほしいとの要望が寄せられたのだ。これに消費者庁は現行制度下で十分として「対応不可」としていた。だが、これに待ったをかけたのが規制改革委。継続議論の必要があるとして専門チームの組織を決めた。

企業の萎縮招く景表法の運用

11月28日に行われた第1回会合に、消費者庁サイドからは、食品表示企画課の赤﨑暢彦課長が出席し制度全般を説明したものの、法執行を担う表示対策課の大元慎二表示対策課長は欠席。代わりに同課食品表示対策室の木村勝彦室長が対応した。

一方の業界サイドは、日本通信販売協会(=JADMA)のサプリメント部会、健康食品産業協議会(=協議会)の2団体が参加。ヒアリングを行った上で議論が行われた。そこで噴出したのが景表法運用に対する事業者の不満だ。

JADMA は、機能性表示食品が食品表示法や景表法、健増法、薬機法など複数の法律の重畳的な規制を受けていると指摘。表示適正化には健増法を活用すべきと訴えた。
また、景表法の処分が広告全体から総合的に判断されケースバイケースで判断が異なること、提出した資料が表示の根拠となるか否か行政が判断するものの、どういった根拠が提出されたか公表されないことから「予見可能性が低い」と指摘。これを担保する処分基準と事例公表を求めた。協議会も取締りの境界線が不明確で予見できず、「事業者の萎縮を招き、不公平感がある」と指摘した。

規制改革委、「回答得るまで継続議論」

「会合では森下さんが消費者庁に処分の基準を示すよう求めた。木村室長が〝個別判断で難しい〟と答えたが、明確な意思表示はなく、〝難しいから作れないではダメだ(森下委員)〟と厳しく詰め寄る場面もあった」。会合に出席した関係者はこう話す。

ほかの委員も「(機能性表示食品)制度は規制改革の象徴的な存在。事業者の自己規制に委ねるべきで、あまり行政が介入すべきでない」(出席した関係者)と、同調。景表法の執行が健食に偏りがあることにも「運用が恣意的」といった指摘があったという。

ただ、肝心の重要な場面に大元課長は不在。「より上の責任者でなければ適切な回答が得られない。末永く(議論に)お付き合いくださいと伝えた」(森下委員)として、「納得できる明確な回答が得られるまで継続的に議論していく」(同)とする。

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