今年のEC 市場を振り返る!! 2018年のネット販売業界の10大ニュース

  • 2018年12月25日
  • 2018年12月25日
  • 特集1

すべてのEC事業者に深刻な影響を与えた宅配便の値上げのほか、ECの巨人であるアマゾンへの行政介入や話題を集めたゾゾによるPBの動きなどなど様々な出来事があった2018年のネット販売市場の動き。2018年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※ニュースおよび順位は本誌編集部が独断と偏見で選びました)

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【1位 宅配便、日本郵便も値上げ】

日本郵便の改定で宅配大手3社全てが値上げに

日本郵便が3月に宅配便「ゆうパック」の基本料金を値上げし、同時に法人向けの契約運賃の改定にも本格的に着手した。2017年秋に先行して値上げしたヤマト運輸と佐川急便から日本郵便へシフトしていたネット販売企業は多かったが、大手3社のいずれもが運賃改定に乗り出したことで、運賃を比較して宅配便会社を選択する余地が少なくなり、前年にもましてコスト抑制に窮する状況に追い込まれることになった。

「ゆうパック」の基本料金は平均で12%の引き上げになった。金額ベースでは110 円(60・80サイズ=沖縄発着地の場合は40 円・90 円)~ 230 円(170サイズ=同290円)。一方、大口取引先の法人向けの運賃改定では、一昨年のヤマト運輸の値上げから日本郵便へ乗り換えた企業も値上げ要請を受けて1年足らずでの値上げに不満を持つ企業も少なくなく、他2社からのクライアントを当初の低額な料金で引き寄せて値上げを行ったことを批判するような企業もある。また、ある企業では日本郵便の値上げ後の料金が他2社とほぼ同額と横並びの運賃に驚愕したという。

日本郵便は、一昨年にヤマト運輸が運賃改定や荷受け抑制する総量規制に乗り出したことに伴い、「ゆうパック」が毎月20%以上の取扱個数が増える状況が昨年5月まで続いた。昨年7月30日に発表した17年度における郵便事業の収支によると、「荷物」(ゆうパック、ゆうパケット、ゆうメール等)は営業収益が前期比14.5%増の5596 億円、営業利益が同446.4%増の153億円と大幅な増益となっている。人件費が高騰する中でも、それをカバーする物量を獲得して利益に貢献したという。この好調な業績はほぼ値上げによる影響がないものであり、18 年度の業績はどれほどの値上げ効果を享受するかが注目される。

いずれにしても宅配便業界は配達員の人手不足や再配達の問題に直面しており、これらは簡単に解決できる問題でない。人材確保が年々難しくなることが予想され、宅配便の受け取りの多様化を進展させていくことが必要となっている。一昨年から課題としてネット販売企業の頭を悩ます宅配便問題だが、今後も料金問題を含めて予断を許さない状況にある。

寸評】2017年度は毎月20%以上増加を続けた「ゆうパック」は利益も大幅に増加、利用側への還元も可能ではないか。

【2位アマゾンに公取委が独禁法違反の疑いで調査】

アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長(写真㊨)と公正取引委員会

公正取引委員会は2018 年3月、アマゾンジャパンに独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行った。アマゾンがセールなどで原価割れ赤字で販売した商品の納入業者に対し、事後的に割引で生じた損失額の補填を要請。このことが、「優越的地位の濫用」にあたる疑いがあるとみている。

「地球上で最も豊富な品ぞろえ」と「最安値」を追求し、ネット販売業かいの巨人に成長したアマゾンだが、その安さの〝カラクリ〟は、納入業者に対する「割引補填」によって実現されてきた可能性がある。「年間取引額は十数億円年だが、年数回、『リベート』の名目で割引補填の要請を受けた」(売上高200億円の家電卸)といった事業者もいる。多くは数%~数十%の範囲で割引補填を要請されていたという。アマゾンは、競争するモールやサイトの価格をリサーチし、自社通販サイトの価格に反映する「価格調整システム」を導入しており、このシステムによる苛烈な価格競争が一部で損失につながり、事後的な割引補填につながっていたとみられる。

審査の結果は19年初めにも出るとささやかれている。ただ、違法認定に至るか、判断は微妙なところだ。というのも18年12月末に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の発効が決まったからだ。

TPPは法律や経済政策の国際ハーモナイゼーションを推進するもの。これに合わせ、独占禁止法においても、事業者と協調的に公正な競争環境整備に向けた問題解決を図る「確約手続き」が導入されることになった。「確約手続き」は、行政処分と異なり、違法認定を行わない代わりに事業者側が立ち入り検査の対象になった事案に対する解決先を提示し、行政とともに協調的に競争上の問題の早期解決を図るもの。「優越的地位の濫用」も対象になる。すでに立ち入り検査を実施した事案であっても、公取委が適当と判断すれば、「確約手続き」に移行する可能性はある。

アマゾンは、海外ですでに「確約手続き」による解決した事案がある。「確約手続き」への移行に関する決定権はあくまで公取委側にあるものの、企業側から相談を持ちかけることができる。巨大IT企業を対象にした処分は違法認定に膨大な時間を要する可能性もあり、行政効率の観点からも、行政側が「確約手続き」を利用する可能性もある。

寸評】アマゾンはすでに「不当な二重価格」の行政処分をめぐり、国と係争中。互いに歩み寄りの姿勢を見せられるか。

【3位 「楽天市場」全商品を自社配送へ】

ワンデリバリー構想について説明する同社の三木谷浩史社長

楽天は1月、楽天市場出店者向けに同社独自の配送ネットワークを構築する「ワンデリバリー」構想を発表。「宅配クライシス」を受けたもので、同社の三木谷浩史社長は、ネット販売に特化した配送ネットワークを、2年以内に構築することを明言した。

すでに、自社配送サービスとして「楽天エクスプレス」の提供を開始しており、同社が手がける直販サービスのほか、出店者の物流業務を請け負う「楽天スーパーロジスティクス」の一部荷物を楽天エクスプレスで配送。東京23 区などが対象で、エリアを拡大している。

今後は、全店舗の荷物を同社が消費者に届ける仕組みとする。店舗は全在庫を同社物流センターに預けるタイプと、出荷する際に出店者の利用する倉庫から同社物流センターに横持ちで移動するタイプのどちらかを選ぶ。宅配会社よりも安い運賃で商品を届ける。商品の注文から配送までの仕組み同社が手がけることを強みとし、楽天市場の購買データや人工知能技術も活用する。

寸評】「宅配会社よりも安い運賃で商品を届ける」とする楽天。経費増に悩む事業者の救世主となれるか。

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