Sun, May 26, 2019

マーケティングとはお客様を理解すること 藤原義昭●コメ兵 執行役員マーケティング統括部長

ラグジュアリー商材の買い取り・販売を手がけるコメ兵は、主要顧客層の40~50代に加え、ミレニアル世代との接点作りを強化している。自社のリソースを活用したオウンドメディアを充実させているほか、外部ECモールへの出店も加速している。自社ECで気になった商品を購入前に店舗で確認できる取り寄せサービスも好評で、店頭の接客力を武器にEC関与売上高を伸ばしている。藤原義昭執行役員が語る同社のブランディングを含めたマーケティング戦略とは。

商品の“編集力”で提供価値を高める

高額品市場は若者の開拓が課題

――フリマアプリの浸透もあって消費者のリユース品に対する抵抗感は薄れてきています。

CtoCのリユース市場は間違いなく広がっています。ユーザーの消費行動が中古と新品で分かれているのではなく、消費者のスマホの中にプラットフォームが入っていて、服を探すときにメルカリをチェックする“メルカリファースト”の動きもあります。

―― 売ることを前提に新品や中古品を買う人が増えているという調査もありますね。

リセールバリュー(再販価値)については、ハイブランドを扱う当社では今に始まったことではありません。時計でロレックスが売れるのはリセールバリューがあるからです。買う側も再販価値を意識していますし、当社も店頭接客時に後々の売りやすさもお伝えしています。供給量よりも需要の高いブランド、商品の再販価値は高まります。一方で、誰も知らないような時計は安くなりますが、時計のマニアからすると「こんな安く売っているの?」という宝探しのような楽しさもあります。ECでも実店舗でもセレンディピティー(偶然の発見)と言われるものはあって、品ぞろえの中には単に安いものだけでなく、レア化したものは重要だと思っています。今は発売した瞬間に値段が1.5倍になるようなスニーカーもありますよね。当社では、商品は作れませんが、「商品を編集する」という部分で価値を出せます。例えば、新宿店ANNEXでは紳士靴をたくさんそろえていて、靴のコアなファンに支持されています。

――実店舗とECの主要顧客層に違いはありますか。

40~50代が多く、店もECも大きくは変わりません。これから獲得しないといけないのはデジタルネイティブなミレニアル世代です。若者のブランド離れとか、車離れなどと言われていますが、欲しくても買えないというのが実情ではないでしょうか。われわれが若かったころは残業代も出ましたし、社会保障費も安かったですよね。かつ、ブランド品も今より安く、手が届くものでした。当社だけでなく、ラグジュアリー市場は若い人との取っかかりを作ることが大事です。最近はルイ・ヴィトンもストリート系ブランドとコラボした商品を展開するなど、クールに見せることを心がけています。リユース品はどうしてもワンテンポ遅れますが、そうした若い層に向けた商品も入ってきますので、「自分には関係ない」と思っているミレニアル世代にも届けていきたいです。

稼げるメディアを育成へ

――ミレニアル世代を含め、店やECに来店してもらうための接点作りを強化しています。

デジタル領域ではオウンドメディアに力を入れていて、男性向けの高級時計にまつわる情報マガジン「トケイ通信」を2015年にスタートしていますが、最近ではブランド通な女性のためのメディア「KOMEHYOのブランドブログ」を始めました。時計や宝石、バッグなど、お客様によって関心のある領域が異なりますので、ひとつの領域を深堀りすることが大事です。「トケイ通信」であれば、当社には時計の知識を持つ社員がたくさんいます。店頭接客は1対1ですが、ウェブ上では1対nになります。広告運用でEC集客を図ることもしていますが、もう少し手前の段階で、例えばロレックスについて調べたいというユーザーに向けたメディアが少ないのが現状です。当社では記事も内製化していて、「トケイ通信」を始めてから時計を購入する比率も高くなり、稼げるメディアに育ってきています。

―― 外部ECモールへの出店も強化しています。「ゾゾユーズド」へは若い層の開拓を狙って出店されましたが、「ワウマ!」や「リーボンズ」出店の狙いはどこにありますか。

シンガポール発のオンラインマーケットプレイス「リーボンズ」については、アジア市場が大きくなるのは間違いないので将来を見据えて出店しました。システムを組む前に販売テストを行いましたが、女性ユーザーを中心にバッグや財布、ブランドジュエリーなどの反応が良く、日本で鑑定されたリユースアイテムへのニーズの高さを感じました。携帯キャリアの総合ECモール「ワウマ!」についてもテスト販売の結果を受けて本格出店を決めました。顧客数の分母が大きいau経済圏ではリーチできる層が圧倒的に広がります。

――リアル店舗についてはいかがですか。

実店舗の出店戦略は現在、販売店の拡大はストップし、買い取りを強化しています。それも銀座などの中心部ではなく、今期は世田谷区の経堂と川崎市の向ヶ丘遊園に買い取りセンターを出しました。消費者はスマホの登場でニュースやブログ、ツイッターまでチェックしなければならず忙しくなっていて、「銀座まで来てください」という集客の仕方だけでは限界があると思います。これからは当社がお客様の多く住んでいるエリアに小さな買い取り店を出していく必要があります。また、駅前に出店することで目に触れやすくなり、お客様がラグジュアリーバッグを売ろうと思ったときに真っ先にコメ兵を思い出してもらうことにつながります。ダイレクトマーケティングでグーグルの運用を行うのと同じで、コメ兵というブランドをどれくらい頭の中に入れてもらうかを考える必要があります。

フリマアプリは鑑定力で差別化

――「ウェブ取り寄せサービス」の利用が増えているようですね。

ウェブ取り寄せサービスの取り組み自体は大きくは変わってはいませんが、専門のチームを作って精度を高める挑戦は常にしています。EC責任者を中心に実店舗のスタッフとチームを組み、毎月どれくらいの取り寄せがあるか、そのうちの来店者数や成約数、また、来店後にどれくらいLINE@に登録してもらえるかなど一連の流れを大切にしています。取り寄せサービスの利用件数も増えていて、2018年1月~12月で約4万5000件のため、1日当たり平均125件程度という計算ですので、スムーズなオペレーションを実現していることが分かると思います。

――実店舗のモチベーションを下げない工夫などはありますか。

それは予算の立て方、仕組み化の問題だと思います。店頭販売員も自分たちの評価に反映されるのであれば、しっかり取り組んでくれます。店頭スタッフからすれば、フラッと来店されたお客様よりも、取り寄せサービス利用者の方が買う商品が決まっていますし購買意欲も高いので、クロージングに向けた接客がしやすいですよね。取り寄せ商品に対する納得のいく説明もできますので、お客様にもメリットがあります。初回利用者が受ける印象は大事にしていてロールプレイングも含め次回の利用につながるようにしていますが、「絶対に買ってください」という雰囲気は作らないようにしています。

――17年11月にスタートしたブランド品専門のフリマアプリ「カンテ」の現状はいかがですか。

「カンテ」は100万ダウンロードをKPIにしていますが、現状は広告費をそんなに投下しているわけではないですが、26万ダウンロードまで増えています。商材もブランド品に絞っていますので、地道にダウンロード数を上げている状況です。これまでにボタンの配置など細かいUXの改善を何度も実施してきました。カンテはCtoC型のフリマアプリであっても購入者に安心してもらえるように、手数料はかかりますが売買が成立したブランド品を当社で鑑定するサービスがあります。現状、購入者の75%が「鑑定あり」を選択していて、CtoC 型のフリマ商材に対して本物かどうかを心配しているユーザーが多いことが分かります。「鑑定あり」でコメ兵に届いたアイテムを鑑定し、偽物だった割合も10%程度あって、水際で偽物の取り引きを防げています。

――アプリ運用の難しさなどはありますか。

難しさというか、アプリ特有のマーケティングに気づかされます。アプリはリテンションが大事で、いかに頻繁に使ってもらえるかの勝負になります。既存顧客をこれまで以上に大事にする必要がありますので、ECよりもアプリの方がUXの優先度を高めて、利用者にストレスを与えないようにしています。

部分最適のマーケティングではお客様を理解できない

“ラストワンタッチ”を強みに

――マーケティングで大事にしていることはありますか。

マーケティングというと各種ツールや広告といった小手先の話になりがちですが、マーケティングとはお客様を理解することです。日本のマーケティングは部分最適が得意で、専門化している一方、全体を見れる人が少ないと感じます。広告部長と販促部長、広報部長といった立場の人が別々にいて、連携できていないケースが目立ちます。当社の場合はありがたいことに私が統括させてもらっていますので、全社を見渡して設計ができます。お客様に企業の価値を提供するときに部分最適ではダメです。ウェブ取り寄せサービスも手段のひとつでしかなく、お客様に支持されているので大きくしているだけです。オウンドメディアも含めて当社の価値に触れて頂き、理解してもらうことが大事です。当社はとくにハイブランドのリユース品という人の関与度が高い商材を扱っていますので、販促や広告などの機能が分断していては成り立ちません。

――業界の課題として感じることはありますか。

当社は倫理観を重要視していますが、不正広告のアドフラウドについては気をつけていてもDSP経由で広告が出てしまいますよね。ただ、声を出し続けないとメディア運営側が良くならないと思っています。広告の信頼性が薄くなるとお客様も「こんな広告には騙されないぞ」という世の中になってしまいますので、業界としてしっかり取り組むべき課題と感じています。

――テクノロジーの面ではベンチャーも含め、さまざまなものが出てきていますね。

これまではダイレクトマーケティング向けにテクノロジーが進化してきましたが、2年くらい前から店頭小売り向けにもマーケティングソリューションが出てきました。位置情報系の広告もかなり精度が高まってきていて、来店コンバージョンも計測できるようになってきています。2019年はもっとその辺りが進化していくと思います。当社ではなかなかテクノロジーを開発できませんので、世の中に出てきたもので自分たちにフィットしたものをいかに早く見つけるかという目利きの力が大事になります。また、“お客様ファースト”の流れが強まる中で、2020年の5G以降はお客様の面倒に思う部分をデジタルで補うソリューションが増えてくるはずです。今はVRとボイスチャットに注目していまして、例えば、家に居ながら店舗で買い物をしている感覚でルイ・ヴィトンのバッグを見ることができれば、最後は小売りの強みである“ラストワンタッチ”を武器に来店して購入してもらえるケースも増えると期待しています。5年ないし、そこまで長くない期間で小売りのあり方も変わっていくと思います。

プロフィール

藤原義昭(ふじはら・よしあき)氏 1974年7月24日名古屋市生まれ、44歳。南山大学卒業後、2012年にビジネス・ブレークスルー大学院MBA 取得。99年4月、株式会社コメ兵に入社しジュエリー部門の鑑定査定業務、商品仕入を担当。00年にECサイトの立ち上げに携わり、10 年にはデジタルマーケティング、Eコマース事業を行うWEB事業部の新設立部長に就任。14年システム全般を統括するIT事業部に業務範囲を拡大後、16年に全社のマーケティングを統括する執行役員に就任。実店舗とEC双方をつなげるオムニチャネル戦略を推進しながら、スピーディーな全社の事業推進を行っている。

取材後メモ

藤原執行役員はオムニチャネル戦略やマーケティングの先駆者として数多くのセミナーやメディアに登場していますのでご存じの方も多いと思います。実際にインタビューをさせて頂くと、単に“マーケター”という肩書きではくくれない印象があります。

リアルとネットを分断させることなく、消費者の実像に合わせたサービス設計やタッチポイントの構築に力を注ぐ姿はいわゆるマーケターですが、コメ兵の強みでもあるブランド品の鑑定力や店頭の接客力などをベースに、フリマアプリの「カンテ」や、最近ではリメイクジュエリーのオリジナルブランド「リッカ」を立ち上げるなど、新規事業にも積極的に挑戦する姿は起業家のようです。拡大するリユース市場で同社が次にどんな一手を打っていくのか楽しみです。

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