Sun, May 26, 2019

実態調査で明らかに なった出店者の「不満」 公取委、プラットフォーマー規制検討へ

利用料に関する不満の有無(小売業者からの回答)

政府がデジタル・プラットフォーマーの公正な競争環境整備に乗り出している。対象とするのは、仮想モールやオークションサイト、フリマサイト、動画共有サービスやSNSを運営するIT 企業。18 年7月、経済産業省と公正取引委員会、総務省が検討会を設置し、検討を始めている。こうした中、公取委は、議論の出発点をする目的で行った大規模調査を19年1月、公表した。調査からは、モール運営事業者との取引条件において、不満を抱く小売業者が少なからずいることが分かった。公取委では、検討会の結果を受け、強制力のある独占禁止法第40条(強制調査権限)によるモールの実態調査を進めることも検討している。

「生活家電」で競争環境激化

「消費者向けeコマースの取引実態に関する調査」は、18年1月~11月にかけてアンケート形式でモール運営事業者と取引関係にある約4300 社(回答・約1200社)を対象に実施した。モールとの取引関係に関する質問は、回答について「対・小売業者」と「対・メーカー」という異なる立場ごとに集計。必要に応じてモール側からヒアリングを行った。また、モールで月1回以上、商品を購入する消費者2000人に対するインターネット調査も行った。

eコマース(物販)の市場規模は、17年に8兆6008億円に達している。12年の4兆9980億円から5年で約72%増と拡大。商品全体のEC化率は5.8%にとどまるが個別の商品分野に限ると「事務用品・文房具」では37%(205億円)、「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等」では30%(1533 億円)、「書籍、映像・音楽ソフト」は26%(1114 億円)と約3割を占め、存在感が高まっている。中小の小売業者にとって、プラットフォームでの販売はメリットがある一方、「競争が激しくなった」と感じる事業者も7割超に達している。

競争激化の背景として事業者が感じる要素は「価格」(79%)がトップ。「品揃え」(53%)、「配送スピード」(43%)などと続く。とくに生活家電、スポーツ用品分野は、ほかの商品分野に比べ競争激化の背景として「価格(競争の激化)」を感じている割合が高い。競合サイトの確認や価格比較サイト、価格検索ツールを使った販売価格の変更も生活家電に限ると、「1日に数回」(17%)、「1日に1回」(21%)、「1週間に1回」(23%)で半数近くを占め、競争が激化している状況が窺える。

モール上位3社の寡占市場

事業者の出店は、上位3モールで約50%を占める。モール名は非公表であるものの、アマゾンジャパン、楽天、ヤフーに集中しているとみられる。上位3社への出店(複数回答)は、小売業者で54~71%(メーカーは43~69%)であるのに対し、4位以下はいずれも9%以下(同5%以下)。消費者が利用したことがあるモールも上位3社で61~86%を占めるなど3社の寡占状態になっている。

こうした中、出店者のモールへの依存度は高まっている。

モールにおける販売を取りやめることに対する難易度は、「容易に取りやめることができる」が32%(同37%)。一方、「可能だが、容易とまで取りやめることがかなり困難」「不可能」とする小売業者は27%(同13%)を半数を超える事業者が、依存している状況が明らかになった。

「一方的な利用料値上げ」に不満

こうした中、モール運営事業者との取引条件に不満を持つ事業者も多く存在している。おもに「契約条項」や「出店・出品審査」「利用料」をめぐるものだ。

契約条項をめぐっては、「定型の契約書等と異なる契約内容を定めることができない」が61%(メーカーは58%)と高い水準。「定型の契約書はあるが、交渉によって条項の変更・追加が可能」が34%(同35%)と、これを上回った。資本金の額の小さい小売業者ほど、定型の契約内容を定めることができないと回答する傾向が強かった。

出店・出品の審査については、「審査は行われたが、審査基準の開示はされなかった」が40%(同36%)。「審査はなかった」とする15%(同28%)を上回った。

利用料の一方的な値上げに対しては、「不満がある」と答えた小売業者は38%(同28%)。「不満がない」とする62%(同72%)を下回った。ただ、不満の理由としてあげられた個別回答では、「一方的に値上げされた」(小売47%、メーカー29%)、「根拠のない新たな利用料等を一方的に請求された」(同17%、同18%)など、少なからずモールに依存せざるを得ない状況の中、不満を抱きつつ条件変更に応じる事業者が存在することが分かった。決済方法は、「不満はない」が85%(同85%)などおおむね納得している状況も明らかになった。

「同等性の要請」確認できず

モール側が、他のモールとの競争環境の中で事業者に不当な要請を行っていないかについても調査した。

ほかのモールへの「出店制限」は、小売業者で2%(メーカーは3%)と低く、要請の実態を確認することができなかった。ほかのモールとの「同等の販売価格」の要請も、小売業者、メーカーとも「要請を受けることはない」との回答が9割超を占め、「自社サイトと同等または安い価格での販売が求められる」とする小売業者は2%(同4%)、「他のモールの販売価格と同等または安い価格での販売が求められる」とする小売業者も6%(同4%)と少なかった。「同等の品揃え」の要請も「受けていない」が89%(同86%)と、同等性を要請している状況は確認できなかった。

顧客情報の利用制限では、「商品の発送のみ利用できる」が小売業者で46%、(同54%)だった。一方、「モールでの販促活動に利用できるが、自社独自のダイレクトメール、メールマガジン等の発送には利用できない」というものも小売業者で46%(同32%)を占めた。

物流や情報漏えいリスク、今後の課題

モール3社による寡占化、事業者による依存が進む中、小売業者、メーカーともに今後の課題と捉えているのが、「物流事情の悪化(人手不足、運賃値上げ等)」。小売業者で81%、メーカーで78%に上った。これに「個人情報の漏えい」が小売、メーカーとも51%と続いた。寡占化が進むほど、情報漏えいのリスクも高まることになる。

このほか、小売業者は「偽サイトの増加」(31%)、メーカーは「偽造品や非正規品の販売」(25%)や、「偽サイトの増加」(24%)などを課題に挙げており、偽造品対策も今後の課題になるとみられる。事業者からのヒアリングでは、「輸入品の並行輸入事業者が勝手に『正規』と名乗って販売していても対応が難しい。個人事業主の出店者も多く、すぐに名を変えて出店できモラルが低い。こうした規約違反の販売者への指導をモール運営側が対応してくれるかどうかも不透明」(メーカー)、といった声が聞かれた。

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