ゾゾ、PB がブレーキとなり初の減益に ―― 採寸用スーツとPB 戦略を転換

PB のビジネススーツ投入時にスーツ姿で会見に登壇した前澤社長

ZOZO(ゾゾ)は、プライベートブランド(PB)の苦戦などから2019 年3月期連結業績が初の減益となる見通しだ。同社は1月31日に通期連結業績を下方修正した。本業の利益を示す営業利益は前年比33.8%減の265億円にとどまり、当初の増益(前年比22.4%増の400億円を計画)から一転して大きく落とす見込みとなった。

2019年3月期はPB「ゾゾ」が125億円の赤字となる見通しに加え、採寸用スーツ「ゾゾスーツ」による全体押上げ効果が薄かったほか、広告事業の立ち上げも遅れた。とくに、PB は今期取扱高で200億円を計画していたものの、無料配布したゾゾスーツで体型を計測するユーザーが想定を下回ったのに加え、製造遅延や品質問題で機会ロスが生じ、今期の取扱高は30億円にとどまる見通しだ。

ゾゾスーツで測ったデータは「ゾゾタウン」でも“あなたサイズ検索”として活用できることから、PB 事業だけでなく主力のゾゾタウン事業にも波及的な消費貢献を見込んでいたが、ゾゾタウン事業の第3四半期(4~12月)累計の成長率は当初計画の22.4%に対し、実績は18.5%だった。

こうした状況を受け、ゾゾスーツを核としたPB戦略を転換。今後、ゾゾスーツはフォーマルアイテムの購入時や海外での体型データ取得用などに限定して利用を継続する。カジュアルアイテムについては、ゾゾスーツで取得した100万件以上の体型ビッグデータを活用した体型予測エンジンを3月末までに実装し、それ以降はすべてのカジュアル商材をゾゾスーツなしで購入できるようにする。

ゾゾスーツの重要性が薄れることで、PB 事業のMD戦略も従来の“満塁ホームラン”狙いを改め、品数を5~10倍に増やすという。同時に、PB事業でも貫いた自前主義は「時期尚早だった」(前澤友作社長)とし、外部の知見や生産設備も借り、早い段階で最低でも収支トントンの低リスク中リターン事業にしていく。

一方、2018 年12月に開始した、常時10%割引(新規会員登録者は初月のみ30%割引)となる有料会員制度「ゾゾアリガトーメンバーシップ」が足もとの取扱高を底上げしており、ゾゾタウン事業の第4四半期(1~3月)の成長率は25.9%を見込む。

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“ゾゾ離れ”は収束へ?

一方、新有料会員制度を巡り一部のアパレル企業が「ゾゾタウン」から退店するなど、“ゾゾ離れ”の動きが各種メディアで報道されていることを受け、1月31日の決算説明会で前澤友作社長が影響などを説明。同日時点で全商品の販売を見送っているショップは「ゾゾタウン」で取り扱いのある1255ショップのうち42ショップで、ショップ数ベースでは全体の3.3%、前期の商品取扱高ベースでは1.1%にとどまっており、「業績に与える影響は極めて軽微」(前澤社長)とする。

オンワードホールディングスなどが退店手続きを行っていることに対しては、「1ショップでも減るのは悲しい」(同)としながらも、「ビジネスとしてある程度割り切って考えている」と発言。ゾゾは有力プラットフォーマーとして成長を続けているだけに、営業方針が相容れないショップの退店はやむなしというところか。

ただ、「ブランド価値を毀損する」という出店企業の意見を考慮し、2月中にも「ゾゾタウン」上にアリガトー価格(10%割引価格)を表示するかどうかをショップごとに選択できるようにシステム改修を進める。

ゾゾにとって有料会員制度は初回購入のハードルを下げたり、既存顧客についても購入頻度や購入金額の上積みが期待できる“攻めの一手”で、開始約1カ月だが「ゾゾタウン」の取扱高拡大に貢献しているという。

アパレル側からは、「(ゾゾのコスト負担が大きく、いつまで実施するのか分からないから)静観している」という声や「ファッションビルなども自社カード会員への割引がある」とする意見がある一方、「今回の営業政策はブランド意識が強い企業を敵に回した」との見方もあり、実際にゾゾ依存度の高い企業が退店する動きも出ているようだ。アパレル各社が自社EC強化に本腰を入れる中、ゾゾとしても次の成長に向けてパイを取りにいった施策だけに、サイトの表示変更で退店の流れが収束しても、“脱ゾゾ依存”に向けた動きは進みそうだ。

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