Sun, May 26, 2019

eBay 越境ECの手引き ~鍵は「欧米」、“脱中国”で勝ちに行く~【第1回目 拡大続ける、欧米向け越境EC市場の魅力】

かつては中国に偏重していた越境ECだが、激しい消耗戦の末に脱落した企業もまた多かったのではないだろうか。国内消費が先細る中、今改めて注目したいのが欧米向けを軸とした“低コスト”“低リスク”の越境EC ビジネスモデル。世界190カ国で展開するグローバルマーケットプレイスの「eBay」が提案するのは、小資本からでも無理なくスタートできる海外の販路開拓だ。取扱高10兆円を超えるeBayの巨大プラットフォームの活用術についてイーベイ・ジャパンの担当者が解説する。

――担当されている業務の内容について教えてください。

イーベイ・ジャパン ビジネス開発部 部長 岡田 朋子 氏

まず、越境ECの環境改善を担当しており、セラーさんがより売りやすい環境をつくるために事業アライアンスを組んでサポート体制を整えています。新規セラーさんの獲得営業も行っており、ほかにも出店から売り上げ
が安定するまでのアカウントマネジメントも行っています。年間を通じた新しい事業の売り上げ全般を担当している部署です。

――そうした立場から見て、現在の越境EC市場全般の動向はどのように映っていますか。

経済産業省の発表もありましたが、毎年おおよそ5000億円前後で伸び続けている産業というのは、IT の世界でもものすごく希少な市場ですし、まだまだ成長途中の段階にあると考えています。行政の方や各種市場調査の会社さんと越境ECの話をする中で、これまでは中国が主語で、次いで米国が語られていたという状況でしたが、今はヨーロッパや東南アジアなど他の国の名前が出てくるようになり、対象となる国が徐々に広がっているという認識があります。当社のデータでも、2018 年はブラジルやロシアが伸びていましたが、2019 年はタイや台湾が伸びるなど、毎年成長する国の数が増えてきています。

例えばeBay が得意とする中古ブランド品などについて、比較的関税も高いタイで伸長したことが意外にも感じたのですが、富裕層の親日家も多いことから値段が高くても品質の良い商品を日本から購入したいというニーズが増えてきているのかもしれません。北米や欧州については、引き続きラグジュアリーな値段の高い商品が伸びているのですが、改めて日本の中古市場の成熟さであったり、買い取りや売るまでのメンテナンスなどの丁寧さ・クオリティの高さなどの認知が進んでいる印象を受けます。

――現在のeBay の事業規模について教えてください。

190 カ国に展開しているeBay

eBay は現在、190カ国に展開しており、取扱高は10兆6000 億円、アクティブなバイヤー数は1億7900 万人です。全体の取り引きの内、約20%が越境ECで、金額ベースで2兆円以上あるということもオープンマーケットプレイスとしては世界最大級と言えるでしょう。また、全世界で常に12億個の商品があるのも特徴です。eBay 自体、元々オークションサイトから始まったということもあって、個人・法人の区分けがなく、個人の人は1品からでも出品できるので豊富な品ぞろえが実現しているのです。

日本のセラーさんの数は非公開ですが、傾向として中小企業さんの出入りが多い一方で、大手企業さんはしっかりと事業判断の1つとして参入されているため、定着しているケースがほとんどです。

――イーベイ・ジャパンではどのような形でセラーさんの越境EC を支援しているのでしょうか。

イーベイ・ジャパンが日本で越境ECの支援事業を始めてから10年目を迎えました。私のチームが提供する支援の主な内容としては、法人のセラーさんを対象にeBay上でのIDの取得から出店時の在庫連携、最適な配送方法、オペレーション設計などをすべてコンサルティングしています。その上で、より最適なMDのご提案や売り上げの安定のためのプロモーション、販売促進のアクションプランまで一貫してご提案しております。

―― eBayへの出店にかかる費用はどのようなメニューになっていますか。

各国向けごとに契約するのではなく、1つの契約で190カ国に向けて販売できる仕組みです。出品については、トライアルで50商品まで月額手数料無料で出品できるプランもありますが、基本的にセラーさんが一番多く使われているのが「プレミアムプラン」で1000商品まで固定額出品無料の月額手数料74.95 ドル(1年契約の場合は同59.95ドル)となっています。また、落札手数料はカテゴリーごとに異なるのですが取引成立後に商品代金と送料の合計額の3.5~10%をいだたいております。そのほかに(オンライン決済サービスの)PayPal の決済手数料なども別途発生します。

――売り場の特徴として言えることは何でしょうか。

日本で成功している企業が必ずしも成功しないということがあります。(大手が扱っている)リーズナブルな日用品やファッションなどは海外で生産されているので、その場合は海外の現地で購入した方が安く、値段で勝つことが非常に難しいのです。需要と供給のバランスが違いますし、日本に求められるのは非常にユニークな商品であったりします。そのため、日本のセラーさんが出品している商品の6割が中古商品です。価格競争ではなくて、その商品の価値を見て上代が決まるものが多くなっています。

――セラーから受けている売り場への評価について。

先日、セラーさんにとったアンケートの中でよく聞かれたのが、「『eBay』の方が国内よりも高く売れる」ということです。物にもよりますが、中古のブランド商材で言えば2~3割高くなるとも聞きます。

また、「国内で動かないものが売れる」という話も聞きます。サイズだけでなく、センスも季節も違うので、例えば、日本で売れ残った季節商材を高回転で回すために(季節が真逆の)南半球向けに販売することなどがあります。

もう一つ、最近特に注目されているのが消費税の還付です。海外で販売した場合は国内で仕入れた分の消費税はすべて還付されるので、今ですと8%分がそのまま戻ってくることになります。昨今、日本の小売り企業が数%の利益率の間で勝負している中、2019 年秋には消費増税も行われる見通しですので、この仕組みの魅力が増しているのだと思います。

広告よりも、買い周りでの一手間を

――一時期、中国向けの越境ECが話題となり、参入した日本企業も数多くいましたが、苦戦を強いられたというケースもよく聞きました。

中国への越境ECは、少なからずeBay とはビジネスモデルが異なります。どちらかというと「B to B to C」という形で、仲介者や大手仮想モールに決まった量の商品をバルクで渡して後の販売をすべて任せるというものだと思います。そうすると(出店者は)ECのオペレーションがあまり必要なくて、プロモーションなどの部分にも手が届かなくなります。最初に中国向けの越境ECが評価されたのは、店舗運営の手間も少ないのに大きく売れたという点ですが、今では現地の越境ECの法制度がたびたび変わっているということもあって、次はどのような形が成功するのか毎年トライアンドエラーを繰り返している状態なので、そこが難しいのかなとは思います。

また、日本もそうですがアジアの場合はECを立ち上げる時に、まずいかに広告費をかけて流入を大きく取っていくのかという戦略を立てる傾向がありますが、eBayの場合はSEOの世界での勝負となっているのである程度は忍耐力を持って育て続けていったセラーさんに勝機が生まれるようになっています。新規のセラーさんにも、半年から1年かけると、結果が出てくるようにはなると伝えています。

――広告費をかけないと露出が図れないというような売り場ではなく、何か違った仕組みがあるのでしょうか。

楽器など日本の中古商品の人気は高い

eBayも最近、プロモーションメニューとして広告提供も始めてはいるのですが、結局は取引数や顧客からの評価数、お気に入りの登録数などを地道に貯めていくことで検索でも優位になりますし、来店時のコンバージョン率も上がっていくようになるのです。ものすごくベーシックな店舗運営なのです。

補足しますと、検索にかかりやすいキーワードを使っているかということもあります。eBay上ではアイテムのスペック情報でカテゴリーごとにソートができるようになっているので、必要なスペック情報を埋めているかも重要なポイントです。

そのほかにも、受注から発送までの時間、届くまでの時間、返品を受け付けるかどうかなどによっても変わります。やはり、eBay では、購入者側が安心して買えるか、商品がどれだけ安く早く届くかなどを加味して検索順位が決まるので、そうした時に探されやすいサービスを提供していることが大事になるのです。

――新規の出店者でも検索上位になれるチャンスはあるのですか。

もちろんあります。そのためには顧客が望んでいる設定で販売していただくということもありますが、まずは検索されやすいビッグワードの商品から出品いただくことも勧めています。また、他の商品も合わせて購入したら割り引きにするといった設定もできるので、複数購入やリピート購入といった形でとにかくストア内回遊をされるための提案を行っています。

在庫リスクを持たずに参入できる

――eBay の場合、メインの売り場はアメリカになるということでしょうか。

アメリカ向けのeBayサイトに出店していただ年間12億個の商品取引が行われているければ190カ国の世界中から顧客が買い物に来てもらえますし、英語一つで世界中にリーチできるので一番効率が良い方法です。もし、その中で仮にフランスからの顧客が特に多いということであれば、改めて別にフランス版のeBay サイトに出店していただければと思います。これがマーケティングリサーチも兼ねた一番参入障壁の低い方法なので、ほとんどのセラーさんがやられているスキームです。

――アメリカの越境市場自体の魅力としてはどうでしょうか。

年間12億個の商品取引が行われているけ

アメリカやヨーロッパの主要国については、越境で買い物をすることに非常に慣れています。アメリカではEC利用者の34%が越境ECの利用者で、ヨーロッパではそれ以上の割合となります。日本ではこれが6%程度であることから、非常に利用比率が高いと言えるでしょう。

米国の場合は主に嗜好性のある日本の高級品が良く売れているので、特にニューヨークや西海岸、ハワイといった富裕層が多い地域に集中する傾向があります。eBayでの日本のセラーさんの国・地域別売り上げ伸び率で言いますと、2018年はアメリカが前年比23%増でトップ。次いで英国の同20%増、タイの同19%増、ドイツの同18%増、台湾の同16%増という順番になりました。ちなみに2017年はブラジルが前年比55%増でトップとなり、次いでロシアが同44%増、オーストラリアが同19%増、ドイツが同16%増、フランスが同14%増という順でした。

2018年については元々アメリカ向けのシェアが一番大きかったのにもかかわらず、これだけ成長したのは近年まれに見る事で驚いています。中古ブランド品やカメラなど高級品は特によく動き、為替も比較的安定していたことなどが背景にあるのでしょう。

――今だからこそ、越境ECに参入することで有利に働くような材料はありますか。

2018 年に日本セラーの取扱高伸び率が最も高かった国はアメリカだった

日本のEC市場全体で見ると伸びてはいるのですが、セラーさんからは「これ以上国内でどうやって売り上げを伸ばしていけばいいのか分からない」というような声も聞きます。日本はEC化率自体もまだまだ低いのでポテンシャル自体はあるのですが、そこに至るまでには時間がかかるので、コンスタントな事業成長を考える意味でも海外に目を向けるべきでしょう。日本国内に在庫を置きながら、eBayと在庫情報を共有するだけでローリスクに参加できます。出品の手間と数十ドルのコストだけで済むので、手軽に販路を増やすことができると考えればやらない理由はないと思います。

沢山の商品がウェブを通じて簡単に買えるようになった時代の中で、顧客の嗜好も多様化しており、一商品だけで爆発的な売り上げを作り上げるということは難しくなってきています。であるならば、リーチできる顧客の数を増やすべきだと思います。

――改めて、eBayを利用することでのメリットについて。

思っているよりか費用はかからないと思うので、投資効率としては高く、まずは試していただければと思います。ウェブ接客とSEOをしっかりやる必要があるので、そこへの覚悟は必要になりますが、いい意味では本来あるべきECのオペレーションを着実に行えば成果は出せます。まだまだ、日本企業同士の競争が激しいような状況ではないので、今から始めてストアを育てていけば確実に成長できると思います。

また、重ねて申し上げますが在庫リスクもありません。eBayでは注文を受けてからの発送なので日本市場向けと越境EC向けの在庫を併用することができます。中国向けの越境ECサービスの中には、あらかじめ用意する在庫の量がバルク単位で決まっていて何カ月も前から大量に仕入れを行ったりもしますが、その分、売れ残ったり返品となった場合のインパクトはとても大きくなるでしょう。

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