Tue, October 15, 2019

激戦の衣料品ネット販売の行方を探る ファッションECモール、次の一手は

ネットで衣料品を売る上で、重要な役割を占めるファッションECモール。プラットフォームならではの集客力や販売力を目当てにブランドはさまざまな仮想モールに出店し、新たな顧客接点の構築を目指す。ECモール側も他の仮想モールやブランドの自社ECにはない強みを出して運営することが求められる。それはいわば、これまで以上に差別化が必要な時代になったと言うことができよう。では、今ネットでアパレルを売るために大事なことは何なのか。ファッションECモールの最新の取り組みをもとに展望していく。

販促の打ち手を増やしブランドの販売を後押し

【事例① ZOZO】

日本最大規模のファッションEC モール「ゾゾタウン」

ZOZO(ゾゾ)が運営するファッション通販サイト「ゾゾタウン」の前期(2019年3月期)の商品取扱高は3113億5000万円。前期比ベースで18.4%拡大している。規模では国内ファッションECモールで断トツのトップとなる。

現在、ゾゾタウンには1240 店(前期末時点)が出店。多くのブランドが出ているため、商品が埋もれてしまう可能性も高くなる。そこでゾゾでは「ゾゾタウン」に出店しているブランドが販促に使える“打ち手”を増やしている。

例えばブランドクーポン。1000 円オフや2000円オフのクーポンをブランドがゾゾタウン上で自由に打ち出せるというもの。以前は単に売り上げ拡大のみに使われていたこのブランドクーポンも、今ではブランドごとに使い方が分かれているそうだ。プロパー(正価品)の初速アップやセール品の消化率向上などそれぞれの戦略に合わせて活用されている。

ブランドの打ち手として「ゾゾウィーク」という施策も昨年から始めている。夏と冬のセール期に比べると、売り上げが落ちるタイミングに販売の山場を作るのが狙いで、昨春・昨秋・今春とこれまでに3回実施している。

同社のEC事業本部ディレクターの松田健氏はゾゾウィークについて「夏と冬にはセールが大きなイベントとしてあるが、春と秋は空いてしまいがち。そこにしっかりと山を持ってくるのが狙いとして始めた」と説明する。

セールのような「価格訴求」一辺倒ではなく、ブランドには集客イベントとして良いアイテムを仕込んでもらう。ゾゾとしてもゲームキャラクターやアイドルらとコラボした限定商品などイベントを盛り上げる“加熱商材”を仕込む。こうしたことでファッションに関心がある人以外の集客にもつなげようというわけだ。

施策打つとプロパーでも新規が

かつてはブランド側がゾゾタウンで活用できるプロモーション施策はブランドクーポンだけだったが、今では手数が増えている。先述したゾゾウィークのほかに、「タイムセール」「広告」、そして「あなただけのタイムセール」という施策も用意している。

通常のタイムセールはオープンなイベントとしてSNSなども使って大きく打ち出すのに対して、あなただけのタイムセールはクローズドなもの。ユーザーが商品をお気に入りに登録していたり、一度カートに入れたものの買わなかったアイテムがある場合に、一定の時間が過ぎたタイミングで24時間限定の10%オフなどを個別に提案する。

このように打ち手が増える中、出店ブランドはどのように活用しているのか。ゾゾによると、各ブランドは新規獲得に比重を置いて仕掛けているところが多いようだ。特にクーポンやあなただけのタイムセール、広告などの販促策を積極的に活用しているブランドは新規に顧客を獲得できる。さらにそうした取り組みをしているところはプロパーも新規が多くなるという。「何らかの施策を打っているところは、プロパーでもしっかりと新規を獲得している。逆にアクションを起こす回数が少ないとプロパーでの新規獲得は低くなる」(松田氏)。

さらに価格訴求型の施策を打った場合でも単発の顧客獲得にとどまらず、2回目のリピートも出てくる。つまり「施策をきちんとやると新規獲得につながり、既存顧客もしっかり残っていく。取り組みを戦略的に打ち出すショップさんは強い」(同)とする。

そのためゾゾの新規営業のチームが出店から半年程度、ブランドのケアをする。出店したブランドに対して、画像やテキストの書き方、施策と予想される効果、在庫の積み方などをアドバイスする。「最初に伸ばすのが非常に大事」(同)となるからだ。そうして基礎が固まった段階で営業チームが引き継ぎ、中長期的な戦略をフォローしていく。

今年はコスメを強化へ

6月に発表した「ゾゾマット」。スマホカメラで簡単に足の3Dサイズを計測できる

ゾゾタウンのMD面では、6月に足の3Dサイズを採寸する「ゾゾマット」を発表した。先行して投入していた採寸ボディスーツ「ゾゾスーツ」の知見を応用。自宅で簡単に足のサイズを計測できるというもので、秋か冬をメドに無料で配布する。

これまで試着ができなかったために、ネットで靴を購入しなかったユーザーも、自身の正確な足のサイズを把握することで、ゾゾタウンでの靴の購入につながることが期待できる。

同時にECでの販売に積極的でなかった靴のブランドに対しても、新規出店に向けて提案を進めているもよう。現在、ゾゾマットの担当チームと営業担当が連携して、ブランド側への説明などに動いているようだ。

また、これまでのファションジャンルにとどまらない新たな分野の開拓も進めている。今年強化するのがコスメ。ファッションとの相性も良いため、現在出店に向けた営業活動を行っている。とはいえ、ファッションに比べてUIの面などは異なるため、絞り込みのメニューなどコスメに合った使い勝手の向上を図る。コスメは百貨店に出ているハイブランドの商品から安価な海外ブランドも含めて全方位的に開拓していく計画だ。

物流面ではFBZ が秋に始動

ゾゾEC 事業本部の松田健ディレクター

プロパー比率向上では成果も出ている。前年比で見ると、プロパーの売れ行きはセールよりも伸びている。「客単価も下げ止まり傾向にあり、潮目の変化を感じている。施策がそろってきたこともあり、価格重視だったのが、良いものを選ぶという風に変わりつつある」(同)。

そうした動きに呼応する形で、セールの序盤に秋冬商品の予約販売を仕掛けるブランドもあり、それが売れている。「いいものはプロパーで買いたい」という顧客のニーズを察知し、このタイミングで予約販売を実施するという取り組みをゾゾタウンでとりまとめて打ち出したのが奏功した。

プロパーの打ち出しの一方で、在庫の拡充も進めている。出店ブランドの自社EC支援サービス「フルフィルメント・バイ・ゾゾ(FBZ)」を10月に始動する予定。FBZはグループのアラタナと連携した取り組みで、ゾゾタウン向けの在庫と自社EC在庫を一元管理するのを条件に、自社ECで販売する商品の撮影や採寸、保管といったフルフィルメント業務にかかる運営手数料15%を無料化する。合わせて、ゾゾIDでのログイン機能を自社ECにも解放する。このFBZ、引き合いは非常に多いとのことで、秋にはマークスタイラーを筆頭に導入を行い、その後ストライプインターナショナルやラルフ・ローレンなども開始するもよう。
在庫面では店舗取り寄せも進めている。在庫がない場合に店舗に在庫があればその商品を引き当てる。この取り組みは以前から実施しているが、正価品の伸びに伴い、欠品対策として店舗取り寄せの導入も積極的に進めており、現時点で数百ブランドが対応している。

原点回帰で「三共宣言」

今期の成長に向けてゾゾでは、共創・共有・共感からなる「三共宣言」をブランドに向けて発信している。

昨年12月に始めた有料会員サービス「ゾゾアリガトーメンバーシップ」では、常時10%割引となることでブランド価値の低下を嫌った一部のアパレル企業がゾゾタウンから退店するという事態を招いた。こうした出来事を受けてゾゾは「ゾゾタウンらしさを失わずにやっていくことを考えた結果、原点回帰に至った」と松田氏。
この三共宣言のもと、出店ブランドが企画する商品をマルチサイズ展開してゾゾタウンで販売する「マルチサイズプラットフォーム(MSP)」事業やゾゾマットを活用した靴の製造・販売などをブランドとともに取り組んでいく。ゾゾタウンが持つデータを、ブランドと積極的に共有して、新しい取り組みを仕掛けていく計画だ。

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