アスクルとヤフー、「ロハコ」巡り対立か ――「乗っ取り」「業績不振」、互いの主張かみ合わず

支配株主による成長事業の乗っ取りだとしてヤフーに反発するアスクル (7月18 に開催したアスクルの現経営陣による記者会見の様子)

アスクルとヤフーの対立が泥沼化の様相を呈している。きっかけはアスクルの株式の約45%を保有する筆頭株主のヤフーが業績の不振などを理由にアスクルの岩田社長に社長退任を要求したこと。これに対して、アスクル側では運営する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」の事業買収が社長辞任要求の狙いではないかとし、「支配株主による成長事業の乗っ取りだ」と反発。「信頼関係が棄損された」として、2012年に締結された資本業務提携の解消をヤフー側に申し入れる事態にまで発展している。長らく蜜月関係だった両社に何が起こっているのか。

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「晩節を汚さない方がいい」

「ヤフーとしての機関決定だ。(8月2日の)株主総会では(岩田社長の再任に)賛成しない。(約11%所有する第2位株主の)プラスも同じ意見だ」──。

アスクルよれば、2019 年6月27 日に突如、アスクル本社に来訪したヤフーの川邊社長は岩田社長に先のように切り出し、社長退任を迫ったという。岩田氏は「上場企業の社長は公職で会社は公器」であるため、正規のプロセスを踏んでトップを決めるべきだとし、独立取締役らで構成する指名・報酬委員会に自身の進退を委ね、それを踏まえて、取締役会で諮ってもらうと回答。その後、7月3日開催の指名・報酬委員会と取締役会で「岩田氏の社長再任」という結論が出たが、7月17日付でヤフー側が岩田氏の社長再任にアスクルの株主総会で反対する意向をリリースし、今回の泥沼の戦いの火ぶたが切られるに至った。

ヤフー側は岩田氏に社長退任を迫る理由について「低迷する業績の早期回復、経営体制の若返り」などとしているが、アスクル側では「ロハコ事業の乗っ取りが狙いでは」とする。実際、19年1月にヤフーからロハコ事業譲渡の打診を受けていたためだという。アスクル側では主力事業で培った物流力や商品調達力などが合わさった上で、ロハコ事業が成り立っていることなどから、ロハコ事業のみの売却は困難であり、仮に切り出して売却すれば、成長力のある事業を失い、ヤフー以外の少数株主の利益を毀損することになるとして拒否していたが、これを不満に思ったヤフーまたはソフトバンクグループが岩田社長を解任し、ヤフー側の意向に従う人物を社長に据えようとしたのではないかと考えているようだ。「ヤフーは、ソフトバンクグループの中国のEC大手、アリババのすさまじさを目の当たりにしている。アリババのように通信やEC、ビッグデータを結び付けた事業を実現しなければならない立場で、そのためには『ロハコ』は必要なパーツであると思う」としてロハコ事業をヤフー側が取得したい思惑について推察する。

ヤフー側の社長再任案に反対するというリリースを受けて、上場企業の指名・報酬委員会が決めた事柄が「大株主の一存」で覆ってしまうという事態では「日本企業のガバナンスは形骸化してしまう」とし、提携解消の打診と同時に記者会見を開いて、世間に問題提起を行ったアスクル。だが、ヤフーに次ぐ大株主のプラスも赤字が続くロハコ事業の問題視している模様で、ヤフーと同調しており、8月2日開催の定時株主総会で岩田社長の再任反対が過半数を占める見込み。12年の資本提携時に結んだ契約の中には一定の条件を満たした際、アスクルがヤフーから保有株式を買い戻すことができる売渡請求権を行使できる条項があるというが、まずは話し合いを通じて提携解消の道を探るようだ。

ヤフーは反論

アスクルのこうした主張に対してヤフーは反論。そもそもロハコ事業の譲渡の打診も「社外取締役の(プラス社長の)今泉公二氏からロハコ事業の赤字(直近決算で90億円の赤字)がアスクルの業績の低迷に影響を与えているため、やめるか、譲渡を考えるべきではないか、と指摘があったことを受けて、譲渡をする考えがあるのかの意向をうかがったに過ぎない」とした上で「その意向はないと回答を受けたため、今後も譲渡を申し入れる方針はない」とコメント。業務・資本提携関係の見直しも「不要」としている。

今回の両社の対立の行方によっては「ロハコ」の出店者にも影響を及ぼす可能性もあり、注視していく必要がありそうだ。

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