激動のEC 市場を振り返る!! 2019年のネット販売業界の10大ニュース

大手仮想モールの送料サービスの見直しや新モールの開設などEC事業者にとって今後の事業展開に影響を与えうる出来事、また、大型買収劇や子会社との対立などヤフー擁するZホールディングスの動きも目立った2019年のネット販売市場。2019年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※ニュースおよび順位は本誌編集部が独断と偏見で選びました)

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【1位  ヤフーがZOZOを買収】

記者会見で握手するヤフーの川邊社長(左)とゾゾの澤田新社長(中央)、前澤前社長

ヤフー(現Zホールディングス)は9月12日、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)を買収すると発表し、11月14日付けで株式公開買い付け(TOB)により約4000億円で同社株式の50.1%を取得して連結子会社化した。互いの顧客基盤を活用するなどして、ヤフーは国内ナンバーワンの取扱高を目指し注力しているEC事業の強化を、ゾゾは失速しつつあった成長力の回復と自力では手詰まり感のあった新客開拓の強化などを図る。

9月12日付で澤田宏太郎取締役がゾゾの新社長に就任し、創業者の前澤友作氏は同社社長を退任。自身が持つ約37%の同社株式の大半をヤフーに売却し、経営から退いた。ゾゾは上場を維持する。

ヤフーは広告事業に次ぐ収益の柱としてEC事業の拡大に注力。“2020年代前半までにEC(物販)の取扱高で国内ナンバーワン”を目標に掲げ、運営する仮想モール「ヤフーショッピング」では「eコマース革命」と称して出店者への出店料・販売手数料などを無料とする施策やアスクルとの資本業務提携などにより、順調にEC事業の拡大を進めてきたが先行する楽天やアマゾンの背中は遠く、高い目標とは裏腹に後塵を拝し、万年3位のポジションに甘んじていた。

今回の買収で両社合計のEC取扱高が2兆2000億円程度、今期見込みの営業利益は1000億円超まで拡大し、ヤフーのグループとしてのEC事業の規模感は増すが、さらに10月に新設した仮想モール「PayPay モール」に「ゾゾタウン」を出店させるほか、ヤフーのポータルサイトやグループのスマホ決済サービス「PayPay」、親会社のソフトバンクの携帯電話の利用者の送客で「ゾゾタウン」の売上高および利益の引き上げを図っていきたい考え。

ゾゾはPB事業の失敗と縮小で戦略の練り直しを迫られる中、持続的な成長にはさらなるマス化が不可欠で、「PayPayモール」への出店や「PayPay」の導入など、EC プラットフォームには欠かせない根幹機能である“集客”および“決済”の強化と、中国への再進出時にサポートが期待できるのがソフトバンクグループのヤフーと判断したと見られる。

寸評】前澤氏というカリスマを失ったゾゾの今後に注目が集まるが、“親子上場”への懸念もつきまとう。

【2位 「楽天市場」で送料無料となる購入額統一へ】

「送料無料ライン統一」について説明する楽天の三木谷浩史社長

楽天は8月、横浜市で開催されたイベント「楽天オプティミズム2019」内の「楽天市場戦略共有会」において、仮想モール「楽天市場」で送料無料となる全店舗統一の購入額を3980円にすることを発表した。2020 年3月18日に導入する予定だ。

これまでは店舗によって送料はまちまちで、送料無料になる購入額はもちろん、送料無料に対応していない店舗もあった。楽天市場では近年、物流関連への大規模な投資を進めている。送料に関しても、全店舗で統一した基準を設けることでユーザーに分かりやすさを打ち出し、楽天市場の流通総額拡大ペースを加速したい狙いがある。

同社では約3カ月間の実証実験を実施。一部ユーザーに一部店舗で送料無料となるクーポンを配布するもので、複数種類のクーポンを配布したが、注文単価下落と購入数増加のバランスが取れていたのは3980 円だったという。新制度の導入で「10%以上の売り上げの伸びが望めるのではないか」(三木谷浩史社長)とする。

一方で、「税込み3980円」という送料無料ラインは、従来自分たちが設定していたラインよりも安い店舗も一定数いる。商品価格に送料を転嫁する形で対応する店舗もあるとも見られるため、「(見た目の価格が上がると)ネガティブな影響が出るのではないか」といった懸念の声も出ている。

これに対し、同社では「ビッグデータを用いて価格へのユーザーの反応度合いを予測しているが、一部にネガティブな影響があったとしても、ポジティブな影響が大きく上回ると考えて3980円に送料無料ラインを設定した」(CEO戦略・イノベーション室の川島辰吾氏)と説明する。

同社では、送料無料ライン設定意図の説明や、店舗の懸念解消などを目的として、全国各地でタウンミーティングを開催。遠方への配送に関する要望や意見が多かったことを受けて社内で再検討した結果、沖縄・離島に関しては購入額を税込み9800 円にすることに決めた。

ただ、一部店舗からは反発が出ているのも事実。政府がプラットフォーマー規制を打ち出していることもあり、「強行した」と捉えられるような導入手法は避けなければいけないだろう。これまで以上に店舗には丁寧に説明し、納得してもらう必要がある。

寸評】楽天にとっては「対アマゾン」を考えるとどうしても導入したい施策だろうが、難しい舵取りになりそう。

【3位 狭まるデジタル・プラットフォーマー包囲網】

公正取引委員会は19年8月、デジタル・プラットフォーマーの「対消費者取引」 における独占禁止法の考え方を整理した。

政府は6月、いわゆる「GAFA」などのデジタル・プラットフォーマーの取引慣行の透明化に向けた規制に乗り出した。「優越的地位の乱用」など不公正な取引慣行の温床となる可能性があるため。政府は新たに「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法」(仮称)を制定する方針。2020 年の通常国会に提出を予定する。

並行して、8月には、公正取引委員会が、デジタル・プラットフォーマーの「対消費者取引」における独占禁止法上の考え方を整理。「優越的地位の乱用」について、消費者取引においても適用すると初めて明記した。プラットフォーマーによる「個人情報」の扱いについても個人情報保護法を所管する個人情報保護委員会と情報共有しつつ、「不当な取得」や「不当な利用」にあたる場合、連携して法執行する考えを示した。消費者庁も消費者利益を損ないかねない「利用規約」の問題について是正に向けた検討を始めている。EC分野にも大きな影響を与えそうで行方が注目される。

寸評】一方的な規約変更などプラットフォームの運営に不満を持つ企業は多い。来年明らかになる新法案が注目される。

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