Sat, June 6, 2020

公取委が調査開始も強気な姿勢崩さず 楽天市場の「送料無料ライン」

楽天が運営する仮想モール「楽天市場」が3月18日からの導入を予定している、送料無料となる購入額を税込み3980円で全店舗統一する施策が物議を醸している。全店舗で統一した基準を設けることでユーザーに分かりやすさを打ち出し、楽天市場の流通総額拡大ペースを加速したい考えだが、一部出店者が「店舗に一方的に負担を押し付ける施策で、導入されれば利益が圧迫される」と反発。同モールの一部出店者が結成した任意団体「楽天ユニオン」は1月22日、公正取引員会に対し、独占禁止法の排除措置命令を求める措置請求書と、同施策に反対する店舗の署名を提出した。

これを受けた形で公取委では、同施策が独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして調査を開始、2月10日には同社に対して立ち入り検査を実施した。

同社では「(楽天市場という)船がきちんと浮かんで、そこに乗っている店舗が、強烈に激化する競争という荒波を乗り切っていくためには、これしかないと思っている」(三木谷浩史社長)として、予定通り施策を導入したい考えだが、予断を許さない状況となっている。

「楽天ユニオン」が署名提出

2019 年8月1日に行われた出店者向けイベントで施策導入を発表する楽天の三木谷浩史社長


2019年夏に横浜市内で開催された「RakutenOptimism2019」における出店者向けイベントで、大型商品や冷凍・冷蔵商品を除いた「送料無料となるライン」を3980円にすることを三木谷社長が公言した。

同社では施策の発表以降、送料無料ライン設定意図の説明や、店舗の懸念解消などを目的として、全国各地でタウンミーティングを開催。当初は日本全国統一の料金としていたものの、店舗の反発もあり、沖縄・離島からの発送に関しては9800円に変更。さらには、赤字販売を禁ずる酒税法に対応するために、酒類を対象外するなど、店舗の意見や要望を受け入れる形で施策をチューニングしてきた。

一方で、施策の発表当初から、コスト増を懸念する声が一部の店舗からは出ていたが、大きくクローズアップされることになったのが、楽天ユニオンの一連の動きだ。2020年1月22日、同団体では公取委の杉本和行委員長に措置請求書を提出した。内容は、今回の施策は楽天が店舗に一方的に負担を押し付けており、これが優越的な地位の乱用にあたるため、排除措置命令を求めるというもの。3980円以上の注文があった場合、店舗側が送料を負担することで利益が減少するため、過大な不利益が生じるとしている。あわせて、同施策に関して調査を求める署名1766筆を提出した。

公取委に署名を提出する楽天ユニオンの勝又勇輝代表(中央)


楽天ユニオン顧問弁護士の川上資人氏は「プラットフォーマーとそこで商売をしている事業者の力関係の差があまりにも大きすぎる。以前からこうした問題はあったが、さすがに今回の施策には堪忍袋の緒が切れて、声を上げざるを得ない状況に追い込まれた。社会通念に照らして、こうした施策が許されるのかという問題提起をしていくことで社会的な圧力をかけ、楽天に考え直してもらいたい」と措置請求書と署名の提出に至った背景を説明した。

楽天ユニオンの勝又勇輝代表は「送料や消費税に対する課金を一方的に行うなど、楽天は出店者にとって利益が減ってしまう規約変更が多い。ヤフーなど他モールはそこまで影響のある規約変更はない。利益が残らないどころか、売っても売っても赤字になってしまいかねない」と楽天を批判した。

これに対し、楽天では「意見書を提出したことは報道等を通じて認識しているが、内容については直接いただいたものではない。個別の団体の意見だけでなく、これまでさまざまな機会を通じて直接多くの店舗からご意見をいただいている。店舗それぞれで状況も異なるため、多様な店舗の意見に真摯に耳を傾け、いただいた声を、消費者・店舗の双方にとってより良い施策となるよう活かし、店舗の中長期的な成長への寄与を目指していく」(EC広報)とコメントしている。

新制度で売り上げは伸びる?

「送料込み表示」へのユーザーニーズは高い(1月 29 日の新春カンファレンスから)


価格決定権は店舗にあることを強調(2月 13 日の決算説明会から) から)


楽天ユニオン以外にも、楽天の説明や手続きに納得していない店舗は存在する。大手出店者Aは「価格決定権はあくまで店舗にあるというが、送料無料ラインが3980円になるなら強制的に値上げさせられるのと同じだろう」と批判する。

また、仕入れ商品の場合、商習慣上、商品価格に送料を転嫁しにくいこともある。中小規模の出店者を顧客に抱える、あるネット販売コンサルタントは「仕入れ商品中心の店舗は、楽天に掲載する商品を絞り、最悪の場合は撤退を視野に入れているようだ」と話す。
仕入れ商品が中心の大手出店者Bでも「送料が徴収できなくなる注文価格帯が出てくるので、必然的にコストは上がる。注文件数増よりもマイナスのインパクトが大きいだろう。売価の見直しが必要だし、楽天では販売しない商品をもっと増やさなければいけない」と危機感を口にする。これに対し、楽天では「商習慣上、価格を変えにくいのだとしたら、メーカーなどの取引先に対し、施策の狙いを説明する用意はある。もし、商品掲載数が減るようなことがあった場合は、必要な措置を講じたい」(同施策を担当しているCEO戦略・イノベーション室の川島辰吾氏)とする。

楽天では「新制度導入で10%以上の売り上げの伸びが望めるのではないか」(8月のイベントにおける三木谷浩史社長の発言)と店舗が享受するメリットを強調。例えば、アウトドアグッズを販売する店舗の場合、送料無料となる購入額を5500円としていたものを3980円に下げるという実験を昨年10月から実施したところ、送料分のコストは上がったものの、売り上げ件数が前年同期比で14%増えたという。ただ、利益額がどうなったかについては明かしていない。大手出店者Aは「リピート購入が期待できる商品なら中長期的にコストが回収できるだろうが、リピートが難しく、他店との価格勝負になっている商品についてはこうした理屈は通用しない」と指摘する。

また、例えば「1万円以上の購入で送料無料に設定し、2000円の商品を5個買ってもらっていた」というようなケースの場合、2個購入すれば送料無料になってしまうため、そのままでは単価の減少とコスト増は避けられず、かといって商品を値上げすればユーザーにとってはトータルで支払う金額が増加する。楽天は「まとめ買い用にクーポンを発行する」「戦略にあわせて選んだ商品以外の売価を調整する」など、さまざまな対応策を店舗に伝えていきたい考えだが、結局のところ「個別に事情は異なるので不透明な部分が大きい」(大手出店者A)わけだ。

別のネット販売コンサルタントは「多くの店舗が商品価格を据え置くことで値下げとなれば、価格に敏感な楽天市場のユーザーは飛びつくだろう。ただ、価格転嫁が相次ぎ、実質的な値上げに振れれば逆になる。店舗がどう動くかで変わってくる」と予測する。

今後、オフラインにも進出していく。現在、100を超える美容室と提携しており、サロンにおけるオンライン診断などのサービスの提供でブランドの浸透を図っている。19 年12 月には、都内に期間限定店舗の展開も行っており、将来的に常設店の展開も視野に入れている。

[ この記事の続き... ]

◯ 協賛金」と似た構図か
◯ 施策の呼称を変更
◯ 「対アマゾン」どう評価

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