Sat, July 4, 2020

ウィズコロナ時代のオンライン接客術とは

難店頭小売りが新手法に挑む

新型コロナウィルス拡大の影響を受け、全国で緊急事態宣言が出された2020年4~5月にかけて、スーパーやドラッグストアなどを除く多くの店頭小売りが休業を余儀なくされた。そうした中、大手百貨店やアパレル企業などが店頭販売員を活用したオンライン上でのライブ接客を相次いでスタートした。使用したツールやライブ配信の経験値はさまざまだが、店舗が休業中でも顧客とのコミュニケーションが図れるオンライン接客は、コロナ第2波への警戒や政府が提唱する

“新しい生活様式”の観点からも取り組みが進みそうだ。店頭小売りの事例を見ていく

店頭販売員の“接客力”を活用
自社EC利用者との接点作りへ

売り場のシームレス化推進

 三越伊勢丹は、コロナ禍で生活様式や働き方、消費行動が変化しているのに対応し、自宅にいながらオンラインで百貨店の接客が受けられるデジタルサービスを強化するほか、通販サイトとアプリのリニューアルに合わせてコンテンツや品ぞろえの拡充などにも着手する。これまで進めてきたオンラインとオフラインのシームレス化を加速するのに加え、「EC単体としての強化にも取り組む」(杉江俊彦社長)考えで、今期(2021年3月期)のEC売上高は当初計画の250億円に対して上方修正を目指す。

同社では、顧客が自宅にいながら百貨店の販売スタッフとつながることができる1to1サービスとして、ビジネス版LINEの「LINEワークス」によるチャット相談と、ウェブ会議ツール
「Zoom(ズーム)」を活用したライブ動画接客を伊勢丹新宿店の販売員が対応する形でトライアルを始めた。

対象アイテムは伊勢丹新宿店のベビー・子供服雑貨カテゴリーからスタート。チャット相談を先行して実施し、ライブ動画接客も5月27日からランドセルでテストを始めた。

ズームによる動画接客は事前にLINEを通じて接客日時の予約や問い合わせ内容を送ってもらい、当日の動画接客は約40分を予定。相談料金は無料だ。販売員は新宿店に隣接する伊勢丹会館5階に設けた予約制のランドセル売り場で対応する。

同社は引き続き“おうちde伊勢丹”をテーマに、ベビー・子供服雑貨カテゴリーでオンライン接客を実施。すでにチャットでは、面接時の洋服選びといったお受験相談、出産祝いなどのギフト相談を始めているが、当該領域でもライブ動画接客を実施する予定だ。

加えて、20年夏をメドにオンライン接客の対象カテゴリーを婦人服や紳士服、リビング商材に広げていくことを検討している。また、今期中にはリニューアルした「三越伊勢丹アプリ」からもチャット相談を利用できる環境を整えるとしている。

EC 掲載商品は今期 15 万型

同社は、ECチャネルでは主軸の通販サイトとアプリを大幅にリニューアルした。従来は三越と伊勢丹で分かれていた通販サイトの入り口をひとつにして「三越伊勢丹オンラインストア」を始動。店舗情報やキュレーション記事、ブランド情報、キャンペーン情報などを集約し、グループのポータルサイト的な位置づけとして6月9日から本格スタートした。

 当該サイトは、伊勢丹新宿店の取り扱い商品をメインに約1000のブランドページを設けたほか、EC購入できる商品数は店頭で人気のアイテムを中心に約10万型をそろえた。19年11月時点の約6万型から大きく増やしたものの、10万型ではまだ不十分なため、今期中には15万型の取り扱いを目指し、「売り上げの7割をカバーできる品ぞろえを急ぎたい」(杉江社長)としている。

 また、顧客がリアル店舗の来店前にオンライン上で少しでも多くの商品を検討できるように、実店舗だけで扱う商品の紹介ページをデジタルカタログとして発信。食品を軸に拡充していく。

 キュレーション記事については、20年4月に編集チームを立ち上げており、同社の武器である接客力、目利き力を生かした記事コンテンツを展開していく。

 アプリについては、19年2月にスタートした「三越伊勢丹アプリ」のデザインや機能面をリニューアル。とくに、アプリにもEC機能を追加して、気に入った商品をそのまま購入できるようにした。

 アプリでは、オンライン上で最適なサイズを提案する婦人靴と紳士靴のレコメンドサービス「YourFIT365」(※初回は店舗での3D足型計測が必要)を含めた店頭のサービス予約のほか、実店舗のショップやイベントなどで使えるアプリ限定クーポンなども利用できる。

 なお、三越伊勢丹では実店舗での買い物がより安全に便利になるサービスとして、オンライン上での事前来店予約サービスを導入したのに加え、通販サイトで扱う一部商品についてはLINEでの問い合わせや取り置きも可能で、取り置きサービスの決済と受け取りは伊勢丹新宿店の取り置き店舗で行うことになる。

海外の対話アプリを導入

 TSIホールディングス傘下でイスラエル発のボディケアコスメブランド「Laline(ラリン)」の日本事業を手がけるLalineJAPAN(ラリンジャパン)は6月4日、ECの接客を実店舗スタッフがリアルタイムで行うオムニアプリツール「HERO(ヒーロー)」を5店舗に導入した。

 「ヒーロー」はテキストメッセージやチャット、ビデオ通話を使ってリアル店舗とオンラインショッピング中のユーザーをつなぐ海外製の対話アプリだ。ビデオ通話機能などを通じ、店舗スタッフが直接オンライン上で接客することで、EC利用者にも満足度の高い買い物体験を提供できるのに加え、リアル店舗への来店促進も期待できるという。

 海外では「ナイキ」や「ラグ&ボーン」などの有力ブランドがオムニチャネル戦略の柱として活用しているようで、日本では今回が初めての事例となるようだ。

 TSIグループによると、昨今は商品の画像だけでなく、販売員のコーディネートを紹介するコンテンツのアクセス数が増加しているほか、オンライン上での質問も店頭と同様に顧客一人ひとりのニーズにきめ細かく対応することが求められるなど、顧客体験を高めることが重要となっている。同社グループは今期(2021年2月期)、実店舗とECが一体化した接客体験を提供するユニファイドコマースに注力する方針で、オムニツール「ヒーロー」の導入もその一環となる。

 とくに、「ラリン」が扱うボディケアコスメなどは商品の質感や使用時の仕上がりなどを伝えながら接客することが多いため、アパレルブランドに先行して導入した。

 EC利用者は、パソコンとスマホ版の「ラリンジャパン公式オンラインショップ」の画面右下に表示される吹き出しマークをクリックすると、対応可能な販売員がいる店舗とつながり、チャット画面が立ち上がってチャットやビデオ通話ができる。

 「ラリン」では全国27店舗のうち、まずはルミネエスト新宿店と有楽町マルイ店、タカシマヤゲートタワーモール店、ルクアイーレ店、札幌パセオ店の5店舗でスタートし、順次、対象店舗を広げていく予定だ。

 また、新型コロナウィルス感染拡大の影響で実店舗が休業を余儀なくされたり、消費者自身も新しい生活様式への移行を求められる中、当初は「ラリン」で「ヒーロー」をテストして成果を検証する予定だったが、TSIグループ傘下の複数のアパレルブランドにも幅広く導入して運用を試すことにしており、8~9月頃をメドにゴルフウエアブランドの「パーリーゲイツ」などでも活用を始めるという。

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チャット接客を開始へ
販売員のライブ動画集約
ライブコマースを相次ぎ開始

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