Sat, July 4, 2020

消費者庁は「制度上起こりうる」と 理解求めるも、企業に不満蓄積

前代未聞の景表法処分「取り消し」

消費者庁は2020年5月15日、1年前、自らが行った措置命令の取り消しを発表した。健康食品通販を行うユニヴァ・フュージョンに対するもの。かつて違反認定した不当表示の「表示期間」に誤りがあったとしている。ただ、措置命令の撤回は、過去に前例がないとみられる。消費者庁は「制度上起こりうる」と、強弁するが、説明不足は否めず、企業は不信感を募らせている。

ペーパー 1 枚で公表、詳細説明 せず

 処分取り消しは、ユニヴァ・フュージョンが販売していた酵素を含む健食に関するもの。2019年3月、広告で「『燃やして』×『出して』理想のボディに」などと表示。「あたかも商品を摂取するだけで、痩身効果が得られるかのように示す表示を行っていた」として、同様に酵素配合の健食を販売する4社とともに優良誤認で一斉処分された。

 それが1年後に突然の取り消しとなったわけだが、消費者庁は、理由を「認定した表示期間を改めて検討した結果」とわずか1枚のペーパーで説明するのみ。処分を行った表示が不当表だったのか、「個別案件」として明言せず、会見すら行わない姿勢に企業の不満が蓄積している。

 かつて景表法処分を受けた企業からは、「撤回は『ホワイト認定』なのか、調査は継続なのか分からない」、「表示期間の誤りなら訂正で済むのでは。取り消しは無罪放免と同じ。処分対象となった広告は掲出してよかったのか」と、説明を求める声があがる。「これだけでは何のことは分からない。優良誤認表示はなかったのか」(景表法に詳しい弁護士)と、専門家をして困惑させる始末だ。

あってはならない」「前代未聞」

「批判的な受け止めというより、あってはならない」、「役所として恥ずかしい話」。取り消しを受け、消費者庁に在籍経験のある公取委OBをはじめ、複数の行政関係者からも驚きの声があがっている。

 というのも、OBが自任する景表法運用は、処分が与える企業への影響を考え、厳格に行われていたためだ。

 景表法の調査は通常、数カ月から1年かけ、企業と複数回のやり取りを経て表示の精査、表示期間の認定が綿密に行われる。「表示期間も物理的証拠がなければ、事業者の供述調書で補う。ひっくり変えることはない」(公取委OB)というのが一般的な理解。まして、消費者庁に移管して以降、景表法は課徴金の導入、監視強化から厳罰化が進んでいる。処分で、企業は広告出稿が困難になり、イメージの低下も避けられない。事業活動に与える影響は大きく、処分に不満を持つ企業による行政訴訟も相次いでいる。だからこそ綿密な調査で訴訟リスクを回避する必要もある。それ(取り消し)は、起きてはならない事態なのだ。実際、今もユニヴァ・フュージョンの処分に触れた報道はウェブ上に散見され、影響を受け続けている。

 それだけに、今回の取り消しは、「前代未聞の事態。国家賠償法に基づく賠償もありうる」(同)と指摘する。なぜ、取り消しに至ったのか。

執行件数増加の裏で、ずさんな 調査か

背景に指摘されるのは、ここ数年、年間50件ほどの高水準で推移する執行件数など、強気の処分が裏目にでたことだ。

景表法の執行は、一定の年間実績を積み上げる必要があるため、年度末の駆け込みで増加する。とくに、ユニヴァ・フュージョンへの処分が行われた19年3月は、17件もの処分が集中。年間の執行件数が50件と最も多かった18年3月の6件、20年3月の11件と比較しても際立っている。その中で、「年度末の駆け込み案件のずさんな処理が露呈した」(別の弁護士)、「昨年に処分を受け、審査請求した大正製薬の例があるように、個別の事情を無視した一斉処分で起きたミスでは」(前出の弁護士)と指摘する。

かつて処分を受けた企業もずさんな調査を指摘する。

「根拠要求を受けて表示期間を報告する。ただ、紙媒体主流の時代と異なり、最近の認定は『遅くとも』という言い回しが増えている。後追いできず、自己申告に近い部分があるのでは」とする。この企業の場合、課徴金調査の際も表示期間は、処分前の根拠をベースに再確認はなかったという。処分を受けた別の企業も「しらみつぶしに調査するというより、自己申告を優先した処分が仇になったのでは。現場場の調査官も〝調査案件が多くて大変〟と言っていた」と指摘する。

措置命令が出れば、課徴金命令も下されることになる。「ずさんな処分の後、課徴金調査で物理的な証拠がでてきたが、手続き上、選択できるのが撤回しかなかった」との指摘もある。

執行ラインにも問題か

「公取委であれば起きないミス」と、公取委から消費者庁への移管以降の執行をめぐる指揮命令系統を問題視する声もある。

公取委は、排除命令(現在の措置命令)を合議制の行政委員会で承認。委員は、複数の学識経験者で構成する。
「執行のハードルは高く、自ずからチェック機能が働いていた」という。組織の独善や暴走を防ぐブレーキがついていたわけだ。

一方、消費者庁の景表法執行ラインは、長官(法務省、当時)→次長(内閣府)→審議官(公取委)→表示対策課長(公取委)→食品表示対策室長
(農林水産省)という布陣。事件処理は、表示対策課長が中心だが、承認する長官は必ずしも景表法に精通していない。「創設当初は、審議官の判断が国の判断になるため慎重だったが、見ている目の数が違う」(前出OB)。執行件数の増加とともに調査がなおざりになっていたのではないか。

[ この記事の続き... ]

◯ 課徴金調査で誤り気づいたか?
◯ 措置命令と課徴金で変わる「表示期間」の重み
◯ どっちに転んでも問題
過去処分の企業「営業妨害甚だしい話」
消費者庁長官「信頼損なわない」

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