NO IMAGE

楽天市場“送料課金の実態”徹底調査

楽天は2012年11月、楽天市場の出店者向けに新たな課金制度を始めた。商品代金に加え、送料も課金対象とする、いわゆる「送料課金」の導入は出店者からの反発を呼んだ。新課金制度はどんな影響を与えたのか。本誌では楽天市場に出店する企業約4万社を対象に、インターネットで匿名を条件とした調査を実施。12年12月下旬から1月上旬までに、350社から有効回答を得た。アンケートの結果と、出店者が「ホンネ」を明かしたインタビューを公開する。

スポンサードリンク

「楽天市場」出店者の本音は?

「楽天しか売り場がない」は間違い  覆面インタビュー①

送料課金は実質的に値上げ

Q:「楽天市場」の現状についてはどうですか?

A:楽天で売るのはめちゃくちゃ厳しいですね。「なんでこんな安い値段で?」という価格帯でないと売れないです。価格訴求によって(「楽天市場」内で発表している人気商品の)ランキングに載せないといけないですから。基本的に楽天のECコンサルはどこの店舗に対しても「ランキングに載せないと売り上げが下がります」と口癖のように言います。ランキングに載れば新規のお客さんが入ってきて、そこから別の商品も売れていくので、「まずはランキングをとりにいく商材を作ってください」と言うわけです。ただ、ランキングに入る商品は赤字を垂れ流すようなモノが多くて、本当に(採算をとるのが)厳しいんですよ。それでも、そこから新規のお客さんを取れればいいというのが楽天のやり方です。

Q:ギリギリのところで新規をとっているということですね。

A:楽天はバクチ的な要素が強いんですよ。「あそこの店舗は月商で8000万円売ってるよ」とかよく聞くんですが、じゃあ広告費はいくらかって言うと2000万円だったりします。こちらは商品の在庫を持って、さらに広告費を払ってとリスクが非常に多いので怖いですよ。

Q:送料にも課金を始めました。

A:正直、送料課金はきついですね。当社は送料無料の商品が多かったので、無料のものは課金されないため少しはましですが、それでも実質的に値上げになりました。なんでそこまでするのかなと思いますよ。ただ、楽天でやっているんだからしょうがないのかなと割り切っています。

Q:諦めていると?

A:我々は楽天のためにやっているようなものですから。楽天はとにかく楽天側の利益がすべてですから、そういう会社なので。それが嫌なら「楽天市場」を退店すればいいだけの話です。そこは難しいところですね。楽天だけに出店していると大変なことになると思いますよ。当社も一時期「楽天市場」での売り上げシェアが大きかったんですが、今は割合を減らしています。売り上げの半分くらいを「楽天市場」で稼いでいる会社にしてみれば本当に大変だと思いますよ。顧客に対して送料を普通に徴収しているところは結構つらいんじゃないでしょうか。楽天はそこまでして何がやりたいのか分かりません。すでに広告で十分とっているわけですから。

楽天の客は“バーゲンハンター”

Q:広告効果はどうですか?

A:広告の効果も相当薄れてきてますね。店が増えすぎていますし、みんな打ち出す販促が究極までいっています。無理しているというか、コストを詰めまくってやっているのが現状です。ここから先、残っていくのは本当に固定のファンを付けているところで、そういう店舗が上位にひしめき合う形になるんじゃないでしょうか。

Q:「楽天市場」での“見せ方”の面はどうですか?

A:楽天用のクリエイティブみたいなのがあるじゃないですか、スーパーのチラシみたいな。あれも社内で問題になって、もうちょっとオシャレ感を出したいんですが、楽天では有効かもしれませんが、どうしてもスーパーのチラシになってしまうので、もうちょっと綺麗なサイト構成にしたほうがいいのではないでしょうか?品がまったくないですね。でもああじゃないと売れないんでしょうね。

Q:「楽天市場」を抜ける気は?

A:それはありません。しかし、他を伸ばしていこうという気持ちは強いです。今は、出店する仮想モールを増やして商品の供給ポイントを増やしています。その場合に当社の商品を別のモールで販売するとすごく売れて、とあるモールのランキングの上位を取りました。というのも楽天をにらんだブランディングなので価格が低いわけです。ただ、そうなるとモールによっては「楽天市場」とは異なる適正価格などもあるため、価格面でのバランスが難しいという問題はあります。

Q:楽天の価格帯はそんなに安いのですか?

A:そうですね。驚くのが、楽天であれば「この価格で普通」という商品が、モールを変えるとバカ売れするんですよ、「激安」という扱いで。それでも楽天のECコンサルからは「高い高い」と言われ、「値段をもうちょっと頑張って」となるわけです。ECコンサルは基本的に「値引き」「広告」「ポイント」「送料無料」の話ばかりです。つまり店舗がしんどい話が多いですね(笑)。そういう意味でも市場を変えるということはすごく重要だと思います。目を外に向けるというか。みんな良いモノを作っていると思うので、「楽天しか売り場がない」と考えるのは完全に間違いです。楽天に来るお客さんは基本的には“バーゲンハンター”ですから。だからそこで商売を成立させるのはしんどいですよ、どう考えたって。

Q:それでもみんな楽天に出店するんですね。

A:楽天は売る力がありますから。「スーパーSALE」(※楽天が昨年の3、6、12月の計3回実施した「楽天市場」での大型セール)とかで売り上げが上がると中毒になります。中には1日で1億円を稼ぐ店舗もあるようです。ただ、あれはどうなんでしょうか。SALEのお客さんにワッと買われてしまって、そのシーズンのMDが狂うんですよね。一気にそこで売れてしまって、売れ筋がなくなってその後の売る物がなくなるんですよ。そこは難しいです。ギリギリになって開催の通知が来るので、用意が間に合わないので既存の商品を並べるしかないということもあります。

Q:楽天以外を伸ばす策としては何を?

A:当社としては自社ドメインのサイトを強化したいです。楽天はザルの目が粗いんです。集客しても、目が粗いので、すぐにこぼれていきます。そのお客さんが違う店舗に流れて、広告でまたうちに入ってくるというような形です。その点、自社サイトの方がザルの目が細かいですから。

Q:楽天では継続されにくいため新規を取り続けなければいけないと?

A:穴の開いている風船に延々と息を入れ続けるようなものですね。つまり風船がしぼまないように広告を投下するといったサイクルを常に続けなければいけないということです。やるほうはなかなかしんどいですね。

Q:そんな状況が今後も続くのでしょうか?

A:どうでしょう。ただこれ以上、価格競争をさせると大変ですよね。商品価値がどんどん下がっていくんじゃないでしょうか。扱う商品の品質はすごく重要だと思いますが、これ以上あおると何か問題が起こるんじゃないですか?ブランドも偽物がどんどん出回ったりといった状況になりかねないです。

アマゾンへの人材流出も?

Q:他の仮想モールについてはどうですか?

A:聞くところによると、楽天からアマゾンへの人材流出がすごいみたいですね。職種はエンジニアやコンサルなど多岐にわたるようですが、移っている人が滅茶苦茶いますよ。優秀な人が引き抜かれているみたいです。一方のヤフーの「ヤフー!ショッピング」は広告を出してもしょうがないと聞いています。どちらかと言うと検索対策ですね。結果、ヤフーは昨年すべての月で前年越えしていますね。そういう意味ではヤフーはいいですね。ただ、ヤフーは楽天のようなコンサルがガッツリつくということがないので、少し寂しい気もします。

Q:「楽天市場」の今後はどうでしょうか?

A:いろいろ言いましたけど、結局のところ楽天は強いと思いますよ。特に集客面が。実店舗でそんな簡単に売れないじゃないですか。楽天ならすぐ売れますから。ありえないですよね。

“人がいい”店舗が損をする 覆面インタビュー②

課金は「事前に想定」

Q:送料課金についての印象を聞かせてください。

A:送料課金で損をしているのは、“人がいい”店舗なんですよ。つまり送料を0円にして身銭を切る心意気はないけども、損も得もない例えば300円や350円の送料をとっている店舗ですね。一方で「送料はちゃんといただきますが、ネットでしか買えない商品なのでそこは分かってください」と、送料も昔ながらの料金を顧客から徴収しているケースがあります。この昔ながら送料設定に課金されても、(運送会社との契約にもよりますが)送料ですでに売り上げが立っているという店舗があります。当社の場合はそうです。

Q:今回の課金に不満は?

A:楽天の肩を持つわけではありませんが、いつかこういう時が来るということは事前に想定できることです。楽天は胴元ですから。実店舗をテナント展開していたとして、商業ビルのオーナーが値上げしますと言うと「はい」というしかないです。それはどうしようもない。それを分かってない店舗は大変です。経営的視点からそういう事態は考えていなかったのかなと思います。もっと出てきますよ、これからも。例えばスマートフォンの売り上げ課金とか。ただ、それでも楽天は胴元なので、ビジネスとしては自由だと思います。それに対して声を荒げて文句を言うかとなると、「だったら自分で(ECサイトを)やればいい」ということになってしまいます。

Q:憤っている店舗もあるようですが。

A:伝え方も大きいと思います。ある日突然メールで伝えるのか、あるいは担当者が事前に来て説明するのか。聞くと、楽天の担当者が北は北海道、南は九州まで前もって説明しに行った店舗もあるようです。そういう店舗からは文句は出ていないでしょう。つまり、それまでの関係性が重要なのではないでしょうか。

Q:送料0円は実施しますか?

A:当社の社員も送料0円にしようと言ってくることがありますが、安易です。他の店舗がやっているからとか。だったら、500円高くても当社で買ってくれる努力をしたほうがいいと思います。ところが“人がいい”店舗は、お客様にも負担してもらうけど、自分たちも我慢する。つまり送料の部分で儲けようと思っていない。その場合、コスト分の送料をそのまま設定しているので、利益はないわけです。その送料に課金されるとマイナスになってしまうという店舗が文句を言っているのではないでしょうか。恐らく送料に課金されるということを夢にも思っていなかったんだと思います。

Q:御社の場合は、商品力に自信があるので、余裕のある送料を設定できるのでしょうか?

A:そういうやり方がいいのかなと思って店舗展開してきました。商売はずっと伸びるということが難しいので、いろんな施策を出し尽くしてしまうと最後の手がなくなります。そこでまだジョーカーを何枚か残しておきたいという思いはあります。送料無料オプションというのはジョーカーだと思っていますので、その手は使わずにとっておいたほうがいいと思っていました。

課金率のアップも

Q:送料課金の狙いは何でしょうか?

A:楽天はアマゾンに対抗するために、「送料0円」「送料込み」、さらには「当日配送」も行いたいので楽天物流をやっています。ただ、価格設定は店舗がしているので、楽天側から送料を0円にするようには言えません。独禁法に引っ掛かりますから。そのため楽天としては店舗が送料を0円にするよう仕向ける必要があります。そこで出てきたのが課金です。楽天としては、「送料0円」と「送料込み」という商品群を増やすことで、ユーザーに「あれ、アマゾンだけじゃなくて、楽天も安いんだ」という印象を与えたいんです。と、ここまでの流れが読めたら、今回の課金は十分あり得るストーリーです。それが「いつか」というだけのことで。ただ、変に「スーパーSALE」の前にやるので炎上したんだと思います。

Q:さらなるコスト増はありえるでしょうか?

A:送料課金も今後どうなるか分かりません。課金率がアップすることも考えられます。消費税などの税金と同じで、一度上がったら下がることはありません。先ほど述べたようにスマホが伸びているので、そちらに課金される可能性もあるかもしれません。その場合も理由は何でもいいんです。スマホの管理ページを作るや、スマホ用のコンテンツを拡充するといった名目で、「店舗の皆さんご協力ください」と、スマホ用の価格帯を作り、多分最初は安いのでしょうが将来的にはパーセンテージのアップということも考えられます。

Q:それでも胴元の言うことは従わざるをえないと?

A:難しいんですが、楽天の言うことのいくらかは受け入れますが、だからといって迎合しないというか。売れている店舗はそこの立ち位置がうまいと思います。一番駄目なのは正直に楽天の言い分に合わせにいってしまうケースではないでしょうか。「今、送料0円が盛り上がっているので0円にする」といったような。一度、0円にするとなかなか戻せなくなってしまいます。

Q:かと言って、広告に頼っても効果が薄れていると聞きましたが。

A:前ほどは出なくなったんじゃないでしょうか。ユーザーも慣れてきたのかもしれません。

立ち上がった「青R」

Q:その流れで新しい売り場を探した場合に、リクルートライフスタイルが3月に開始すると言われている仮想モール「ポンパレモール」も、選択肢として出てくるのではないでしょうか?

A:それは大いにあるでしょうね。「赤R」「青R」という言い方があります。「赤R」は楽天で、「青R」はリクルートなんですが、これは両社の頭文字が「R」というだけでなくて、互いの出身者がいろいろ入れ替わっています。つまり楽天にはリクルート出身者が多いんですよ。「青R」(リクルート)の血が「赤R」(楽天)に入っている。そんな中で「楽天市場」が大きくなってきて送料課金などがあり、ついにリクルートが立ち上がったという流れです。

Q:どうしてこのタイミングなのでしょうか?

A:リクルートとしてもずっとモール展開は狙っていたと思います。ただ、楽天がやってきことをまともに追いかけても勝てません。そこで楽天が崩れ出すタイミングを狙っていたんだと思います。それが店舗からの不平・不満が出ている今だったんじゃないでしょうか。

Q:「ポンパレモール」の特徴は?

A:立ち上がりは500店舗程度ですが、そこでは「楽天市場」の売れ筋店舗を厳選しています。リクルートのキーワードとしては「楽天さんと同じように」というもので、データの書き換えがいらないなど「楽天市場」に完全に合わせにいっています。そこは良い意味でプライドがないです。それでいいと思います。リクルートは「ウチは2番手でいいです。ただ、楽天さんの弱いところを突いていきます」という戦略です。だから、出店料やロイヤリティは断トツに安いですよ。とはいえ、その戦略が当たるかどうかはオープンしてみないと分からないですね。

Q:「ポンパレモール」は楽天にとって脅威になるでしょうか?

A:楽天のECコンサルはもちろん素晴らしい人材もいますが一方で、もはや広告屋に成り下がっている人たちもいます。そう感じている店舗が「ポンパレモール」の担当コンサルが、「楽天市場」の最初の頃のような熱気で来ると、心が惹かれると思いますよ。逆に言うと、「ポンパレモール」の担当者はそのように営業すればいいわけですよ、戦略として。そもそもリクルートは営業がうまいので、そこは楽天に対して脅威になるでしょう。

運営主がやるから悪印象 覆面インタビュー③

年間数十万円のコスト増加に

Q:送料課金の影響はありましたか。

A:当社の試算によると、年間数十万円の負担増になる予定です。

Q:送料課金によるコスト増への対策は何かされたのでしょうか。

A:対策してもしょうがない、というのが本音です。送料課金によるコスト負担を試算すると、1件あたり数円の負担増になるわけです。じゃあ、数円ずつ商品価格に上乗せするのか、といえばそこまでではありません。今回の送料課金は価格を改定するほうが手間なわけです。

Q:コスト負担に対する対策はないということですか。

A:そうですね。ネット販売はヒット商品が生まれてしまえば、利益が改善されるケースが多いです。例えば、独自商品を扱う店舗は、送料無料などの販促方法によっては、死に筋商品を大ヒットさせる方法もあります。コスト負担を前提として受け入れて、売上拡大による増益を目指す方法しかないと思います。

Q:ただ、中小企業の店舗にとっては送料課金はじわじわと響いてくるとの見方もあります。

A:それでも、受け入れるしかないんですよ。もともと出店料金が値上げするといっても出店者は抗いようがありません。楽天市場の売上比率は大きく、『出店をやめれば』と言われるととても困るのが実情です。先方もそれを承知した上での措置ではないでしょうか。

ただ、われわれ出店者は、それぐらい市場環境が変わることがある、ということ常に意識する必要があると思います。正直、こういったことをやられると我々出店者は裏切られた気分になりますし、楽天に対する印象も正直、よいものではありません。ですが、市場環境の変化という視点で捉えれば、それぐらいの覚悟がないと前には進めないでしょうし、割り切ることも1つの対策です。

Q:過去にも出店者の負担を強いることがありました。そうした中で、退店を検討したことはありましたか。

A:販路は楽天だけではないので、選ぼうと思えば他も選択できるのは事実としてあります。機能面や市場性で他のモールとの差があるわけではありませんが、楽天のメリットはモールの規模感にあります。良い商品を持っていれば売れるという環境です。やはり受け入れるしかありません。

「優遇措置」をエサに告発させない

Q:今回、楽天のやり方に独禁法違反のおそれを指摘する声も上がっていました。公取委は抵触しない見解を出していますが、出店者の不満の声があがること事態に問題があるのではないでしょうか。出店者としてどのように見ていらっしゃいますか。

A:今回の件だけではなく、過去にも独禁法に抵触する恐れがあると指摘される可能性のあるケースはありました。法律については解釈の違いもあるので何とも言えませんが、皆さん受け入れるしかないと思っているのだと思います。上位店舗には広告の優遇措置もありると聞いていますから、行政から法律の問題が浮上しない限り、情報提供など動くこともできないと思います。

Q:広告の優遇措置とは?

A:出店店舗は決められた時間になると広告枠を入札できる仕組みになっています。このとき、上位店舗は優先的に購入できると聞いています。また、販促企画にも優先的に参加できることなどもあるようです。これは楽天市場に限らずどこのモールでも行われていることですが、もしも告発をしてそうした露出の機会がなくなれば出店店舗には大打撃となるでしょうね。

顧客にとってはメリットなし

Q:今回の送料課金は「物流の円滑化」を目的としたものといわれていますが、一方では楽天市場の「送料無料化」を目指すものともいわれています。出店者にとってメリットはあるのでしょうか。

A:今回の出店料金の見直しは楽天の物流システムを使うと送料が安くなるとして、出店者が楽天の物流利用を促進させるものだと思います。アマゾンを意識していることは皆さんが知っている話だと思いますが、アマゾンを下回る送料を実現できるなら利用のメリットがあるでしょう。ただ、本当に安くなるかどうかは、また別の話だと思っています。

現状、送料を無料と訴求するかどうかは出店者の自由です。商品代金と送料に課金されるのであれば、送料を含めた価格を表示して“送料無料”と訴求してもコストは変りません。だったら送料無料にすればいい、というのが楽天側の理論です。
ですが、お客様の中には、低価格の商品を複数買う方もいらっしゃいます。送料を価格に上乗せした場合、複数商品を購入するユーザーからは重複して送料をいただくことになりますし、低価格商品の価格メリットも薄れます。お客様目線で考えるとあまり良い施策ではないと考えています。

Q:楽天市場全体でみると送料課金後に“送料無料”とする店舗は増えたのでしょうか。

A:送料を無料にしても出店手数料が変わらないなら、送料を無料化する店舗が増加する可能性はありそうです。商材によって異なるので一概にはいえませんが、もともと楽天市場は送料無料で検索されることが多く、実際、送料無料商品が売れる傾向にあります。そもそも市場がそうなっているので、これを機会に送料の無料化を訴求する店舗はあるかもしれません。

Q:今後、全店で送料を無料化した場合、アマゾンだけでなく、他のモールに対しても競争力をもちそうです。
A:いいえ、それが実現することはありえないでしょう。楽天が送料を負担しないかぎり、全店舗で送料無料にはならないでしょうね(笑)。ただ、3000円以上の購入で送料を無料になるなど一定の基準を設ければ可能だとは思いますが。とは言え、楽天がやることなので、楽天の物流やシステムを経由すれば、どこか別の部分で手数料が発生するのではないでしょうか。

価格訴求でアマゾンのシェアを奪取できるか?

Q:今回の送料課金は、アマゾンを意識して送料無料化を目指したものという声も聞こえています。出店者からみて、「楽天VSアマゾン」はどういった状況下にあると思いますか。

A:カテゴリーでみるとアマゾンは家電や書籍など「型番商品」が強く、楽天はグルメなどの商品比較が難しい商品で優位にあると感じています。楽天はアマゾンから型番商品のシェアを奪取したいと考えているのではないでしょうか。
型番商品は価格に対する感受性が高いものですから、消費者は比較して安く買いたいという心理が働きます。ナショナルメーカーが生産している以上、原価を割るわけにはいきませんが、規模のメリットを活かした仕入れで価格競争力を持たせることができるでしょう。ただ、出店者の反発は相当あると思いますが、楽天市場の持つ流通量を活かして自社で展開することも難しいことではないと思います。

(続きは「月刊ネット販売」2013年2月号で) ご購読はこちらからどうぞ。

運営主がやるから悪印象

覆面インタビュー③

年間数十万円のコスト増加に

Q:送料課金の影響はありましたか。

A:当社の試算によると、年間数十万円の負担増になる予定です。

Q:送料課金によるコスト増への対策は何かされたのでしょうか。

A:対策してもしょうがない、というのが本音です。送料課金によるコスト負担を試算すると、1件あたり数円の負担増になるわけです。じゃあ、数円ずつ商品価格に上乗せするのか、といえばそこまでではありません。今回の送料課金は価格を改定するほうが手間なわけです。

Q:コスト負担に対する対策はないということですか。

A:そうですね。ネット販売はヒット商品が生まれてしまえば、利益が改善されるケースが多いです。例えば、独自商品を扱う店舗は、送料無料などの販促方法によっては、死に筋商品を大ヒットさせる方法もあります。コスト負担を前提として受け入れて、売上拡大による増益を目指す方法しかないと思います。

Q:ただ、中小企業の店舗にとっては送料課金はじわじわと響いてくるとの見方もあります。

A:それでも、受け入れるしかないんですよ。もともと出店料金が値上げするといっても出店者は抗いようがありません。楽天市場の売上比率は大きく、『出店をやめれば』と言われるととても困るのが実情です。先方もそれを承知した上での措置ではないでしょうか。

ただ、われわれ出店者は、それぐらい市場環境が変わることがある、ということ常に意識する必要があると思います。正直、こういったことをやられると我々出店者は裏切られた気分になりますし、楽天に対する印象も正直、よいものではありません。ですが、市場環境の変化という視点で捉えれば、それぐらいの覚悟がないと前には進めないでしょうし、割り切ることも1つの対策です。

Q:過去にも出店者の負担を強いることがありました。そうした中で、退店を検討したことはありましたか。

A:販路は楽天だけではないので、選ぼうと思えば他も選択できるのは事実としてあります。機能面や市場性で他のモールとの差があるわけではありませんが、楽天のメリットはモールの規模感にあります。良い商品を持っていれば売れるという環境です。やはり受け入れるしかありません。

「優遇措置」をエサに告発させない

Q:今回、楽天のやり方に独禁法違反のおそれを指摘する声も上がっていました。公取委は抵触しない見解を出していますが、出店者の不満の声があがること事態に問題があるのではないでしょうか。出店者としてどのように見ていらっしゃいますか。

A:今回の件だけではなく、過去にも独禁法に抵触する恐れがあると指摘される可能性のあるケースはありました。法律については解釈の違いもあるので何とも言えませんが、皆さん受け入れるしかないと思っているのだと思います。上位店舗には広告の優遇措置もありると聞いていますから、行政から法律の問題が浮上しない限り、情報提供など動くこともできないと思います。

Q:広告の優遇措置とは?

A:出店店舗は決められた時間になると広告枠を入札できる仕組みになっています。このとき、上位店舗は優先的に購入できると聞いています。また、販促企画にも優先的に参加できることなどもあるようです。これは楽天市場に限らずどこのモールでも行われていることですが、もしも告発をしてそうした露出の機会がなくなれば出店店舗には大打撃となるでしょうね。

顧客にとってはメリットなし

Q:今回の送料課金は「物流の円滑化」を目的としたものといわれていますが、一方では楽天市場の「送料無料化」を目指すものともいわれています。出店者にとってメリットはあるのでしょうか。

A:今回の出店料金の見直しは楽天の物流システムを使うと送料が安くなるとして、出店者が楽天の物流利用を促進させるものだと思います。アマゾンを意識していることは皆さんが知っている話だと思いますが、アマゾンを下回る送料を実現できるなら利用のメリットがあるでしょう。ただ、本当に安くなるかどうかは、また別の話だと思っています。

現状、送料を無料と訴求するかどうかは出店者の自由です。商品代金と送料に課金されるのであれば、送料を含めた価格を表示して“送料無料”と訴求してもコストは変りません。だったら送料無料にすればいい、というのが楽天側の理論です。

ですが、お客様の中には、低価格の商品を複数買う方もいらっしゃいます。送料を価格に上乗せした場合、複数商品を購入するユーザーからは重複して送料をいただくことになりますし、低価格商品の価格メリットも薄れます。お客様目線で考えるとあまり良い施策ではないと考えています。

Q:楽天市場全体でみると送料課金後に“送料無料”とする店舗は増えたのでしょうか。

A:送料を無料にしても出店手数料が変わらないなら、送料を無料化する店舗が増加する可能性はありそうです。商材によって異なるので一概にはいえませんが、もともと楽天市場は送料無料で検索されることが多く、実際、送料無料商品が売れる傾向にあります。そもそも市場がそうなっているので、これを機会に送料の無料化を訴求する店舗はあるかもしれません。

Q:今後、全店で送料を無料化した場合、アマゾンだけでなく、他のモールに対しても競争力をもちそうです。

A:いいえ、それが実現することはありえないでしょう。楽天が送料を負担しないかぎり、全店舗で送料無料にはならないでしょうね(笑)。ただ、3000円以上の購入で送料を無料になるなど一定の基準を設ければ可能だとは思いますが。とは言え、楽天がやることなので、楽天の物流やシステムを経由すれば、どこか別の部分で手数料が発生するのではないでしょうか。

価格訴求でアマゾンのシェアを奪取できるか?

Q:今回の送料課金は、アマゾンを意識して送料無料化を目指したものという声も聞こえています。出店者からみて、「楽天VSアマゾン」はどういった状況下にあると思いますか。

A:カテゴリーでみるとアマゾンは家電や書籍など「型番商品」が強く、楽天はグルメなどの商品比較が難しい商品で優位にあると感じています。楽天はアマゾンから型番商品のシェアを奪取したいと考えているのではないでしょうか。

型番商品は価格に対する感受性が高いものですから、消費者は比較して安く買いたいという心理が働きます。ナショナルメーカーが生産している以上、原価を割るわけにはいきませんが、規模のメリットを活かした仕入れで価格競争力を持たせることができるでしょう。ただ、出店者の反発は相当あると思いますが、楽天市場の持つ流通量を活かして自社で展開することも難しいことではないと思います。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG