ライブコマース、成功のポイントは?

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コロナ禍を機に盛り上がり、再び

数年前から徐々に各社で取り組みが始まっていたライブコマース。ユーザーとリアルタイムかつ双方向でやり取りができ、訴求力も高いこの手法はEC実施企業各社からも注目されてはきたが、効果的な運用の難しさなどから一部の事業者を除き、手が出しにくかったよう。しかし、このコロナ禍により再び注目され展開を模索し始めたEC実施企業が増え始めており、一躍、盛り上がりを見せている。ライブコマースで成功するポイントとは何か。展開し始めた各社の事例を見つつ。成功のための要因を考える。

事例① シップス
視聴者数などで一定の成果 配信動画の二次活用に着手

 シップスは、ウェブでも従来以上に商品の魅力を伝えられるライブコマースの可能性を検討していたが、コロナ禍で実店舗の休業を余儀なくされる中、顧客へのオンライン接客や商品訴求、店舗スタッフの活用といった目的で5月22日から自社通販サイト内でライブコマース「SHIPSSHOPPINGTV」をスタートした。すでに7月末までに12回の番組を配信し、視聴者数などで一定の成果を得ている。

シップスでは実店舗の販売員などが出演するが、外部からゲストを招いて商品を深掘りすることも

 同社はライブコマースの専用ツールを導入し、パソコンサイトはライブ映像の右側に紹介商品の一覧が表示され、スマホサイトの場合は映像の下をスクロールするとアイテム一覧を確認でき、各商品をクリックすると自社ECの詳細ページに遷移して購入できるようにした。

 7月末までは、今春始動した新ブランド「シップスエニィ」の認知拡大を図る狙いもあって同ブランドで10回、最後2回は主力の「シップス」で実施。各ブランドの店舗販売員とPR担当者が出演している。スタート当初は金曜と土曜の午後9時から約1時間の尺で配信したが、最近では曜日、時間帯、尺などを変えながらテストを繰り返している。

 同社はライブ配信の醍醐味である配信者と視聴者のインタラクティブなやりとりを重視。ライブ配信自体が初めてということもあり、担当者それぞれの役割分担を明確にすることで、スムーズに番組を進行できるようにした。

 例えば、基本的には出演者が視聴者の質問に直接答えるものの、ライブ配信であっても実際にオンラインで流れる映像との間に時間のズレが生じるため、ライブで次の話題に移っているときなどは、前の質問に裏方のスタッフが画面上で回答するなどした。また、番組では毎回、初めてライブ配信を視聴するユーザーを意識し、サイトの見方やEC購入の方法なども丁寧に説明している。

 同社では、「声から生まれる説得力は動画配信の強み」(萩原千春デジタルマーケティング課課長)とし、商品の細かい機能や素材などは視聴後に自社ECで確認してもらい、ライブ配信では商品の質感やコーディネートの組み方、商品に対する思いなどをメインに発信しているという。

 ライブを視聴してもらうための集客面では、オウンドメディアやメール、SNSでの告知に加え、SNS広告などの活用も試している。

 同社によると、ライブコマースの視聴者数は想定よりも多く、エンゲージメントの高いユーザーが多いのが特徴で、実店舗でも「ライブコマースを見た」という話題になるという。また、平均視聴時間は約20分と長く、飽きさせないような番組構成の成果も出ているようだ。一方、売り上げについては当初、ライブ配信中や配信直後に重きを置いてきたが、実際にはアーカイブ経由が多いことから、今後は配信動画の二次活用を推進し、少し長いスパンでライブの効果を検証していく。

 具体的には現状、シップスのインスタグラムアカウントのIGTVにライブ配信の動画を展開しており、8月中には、インスタグラム内の写真や動画をハッシュタグで収集して自社ECに表示するツール「visumo」を介してIGVT動画を自社ECの商品ページに出せるようにしたり、IGTVの特集ページを作ることで、視聴数のさらなる拡大や購入率向上につなげる。

また、足もとではライブコマース以外でもインスタライブに取り組んでおり、今後はユーチューブでの動画配信も視野に、各チャネルの特性を生かしながらさまざま顧客層にリーチしていくとともに、動画コンテンツの充実を図る考えだ。

なお、8月についてもライブコマースを毎週のように実施する計画で、引き続き「シップス」および「シップスエニィ」の商品を提案していく。

事例② ファンケル
ライブコマースで顧客との 〝新たなコミュニケーション〟模索

 ファンケルは7月21日からライブコマースを始めた。新型コロナウイルスの影響で、顧客の店舗利用が制約を受ける中、既存顧客との新たなコミュニケーション手法の確立を目指し実施。新型コロナ感染症対策から、消費者の生活様式が変化する中、マスク着用による肌への影響に着目した化粧品や、在宅勤務や自宅で過ごす時間が増える中でのダイエットケアを目的にしたサプリメントを紹介した。

コロナ下の生活意識した商品紹介

 政府の緊急事態宣言を受け、ファンケルも店舗休業を余儀なくされた。以降、顧客との新たなコミュニケーションを模索。インスタグラムの動画配信などSNSを活用に挑戦してきた。

 今第1四半期連結(4~6月)の化粧品事業は、「店舗」が休業の影響から前年比66%減と苦戦を強いられる一方、「通販」は同約21%増と、通販への誘導が進む。

 7月に行った第1弾の配信では、消費者がマスク生活を強いられる中、夏の毛穴ケアアイテムを目的にした限定セットを紹介した。

 紹介したのは、炭とクレイを配合した酵素洗顔「ディープクリア洗顔パウダー」、同じく炭やクレイを配合した洗い流しパック「ポアクレンジングパック」、毛穴を引き締める「ポアエッセンス」のサンプル等をセットにした「シーバムポアキット」(税込1980円)と、「マイルドクレンジングオイル」(限定デザイン、税込1870円)の限定セット。通常3850円(税込)を3333円(同)の特別価格で展開した。

参加型の配信を意識

 ただ、配信は商品紹介など販売を目的にしたものではなく、顧客とのコミュニケーションを強く意識し構成している。配信内容も、商品紹介より「毛穴ケア」に対する理解を深める内容を中心に構成した。

 配信では、例えばクイズ形式で「顔の平均的な毛穴の数は?」などとパネルで示し、顧客が楽しみながら毛穴に関する知識を理解できるよう、双方向のコミュニケーションを意識して行った。

 進行は、商品企画、広告宣伝両部署の女性社員2人が行ったが、後半では、日ごろ毛穴に対する悩みを持つ男性社員が登場。実際に鼻やおでこ、あごなど毛穴の気になる箇所に塗って洗い流す「ポアクレンジングパック」を使ってみせ、「男性にもおすすめの商品」「肌はぬらさずに乾燥状態のまま塗ってくれれば」、「ハーブのような香りがする」と、使用方法や使用感を〝ナマ〟で伝えることで、視聴者を飽きさせない工夫もした。「商品紹介を中心に行わず、クイズやチャットで入る質問への即レス回答でコミュニケーションを意識。男性社員によるお試し企画で意外性を織り交ぜ、最後まで興味を持ってもらえるようにした」(同社)とする。

配信に手ごたえ、継続実施も

 集客もショッピングアプリや店舗会員向けのメンバーズアプリにおける情報発信で行い、既存顧客を中心に呼びかけた。ライブコマースの告知はプレスリリースでも配信。一定数の新規顧客も視聴したとみられる。視聴数は6000人を超えたという。

 視聴者からは、配信中、「オイルクレンジングとジェルの効果や違いはどのような点か」、「洗顔は何分ほど洗ったらよいか」など使用方法や使用感に関するコメントがあったほか、「分かりやすい説明でまるでお店にいるよう」など好意的な感想も得られた。

 手ごたえが得られたことから、8月4日には、コロナの影響から在宅勤務や自宅で過ごす時間が増える消費者がいる中、食べ過ぎ等のケアを目的にした「カロリミット」や「パーフェクトスリムW」などを含む限定セットをライブコマースで紹介。試験管を使った簡単な実験で、体内に吸収されたサプリメントの働きを視覚的に分かりやすく説明するなどした。今後もライブコマースを通じた顧客コミュニケーションを積極的に展開していく。

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事例③:小田急百貨店
配信中に1対1の接客も 顔まわりの商品を提案へ
事例④:ディノス・セシール
50代向けファッションブランドで初挑戦、ライブ視聴者数予想以上に
事例⑤ 楽天
ファッションやコスメの店舗が利用 相互コミュニケーションが重要に
事例⑥ au コマース & ライフ
グルメ・衣料品・美容家電が人気 「お気に入り登録」訴求にも効果

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