三木谷社長「コロナ禍でEC化進展が加速」――楽天がオンラインで出店者向けイベント

 楽天は8月27日、仮想モール「楽天市場」の出店者は向けにオンライン上のイベント「楽天オンラインEXPO2020」を開催した。当日は、三木谷浩史社長による講演のほか、楽天市場における下期の事業戦略を公開した。同社では毎夏、出店者向けに同様のイベントを実施しているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から、オンラインでの開催となった。

講演する三木谷浩史社長
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「送料無料ライン」への参加呼びかけ

 コロナ禍でネット販売へのシフトが進んでいる。三木谷社長は「EC化のスピードは、20%ほどリフトアップされたのではないか。楽天市場の流通総額は約3兆円だが、これが5兆円になり7兆円になり、10兆円になるという時代が現実化した。店舗の流通額も今の3倍、5倍、10倍になる可能性が高い。皆さんと一緒に頑張りたい」と店舗に呼びかけた。

 楽天市場の4~6月におけるショッピングEコマース(楽天市場と日用品、衣料品、書籍、ネットスーパーなど同社直販事業のほか、フリマアプリなど)の流通総額は、同48.1%増となっており、7、8月も好調に推移している。新規購入者と復活購入者の増加が好調の要因だ。「日本の家計消費におけるEC化率は6.76%で中国やヨーロッパに比べるとまだまだ低い。コロナ禍を受けて、EC化率20%まで突っ走るのではないか」。

 ただ、EC化率20%の達成に向けては課題もある。その1つが物流だ。同社では近年の「宅配クライシス」を受け、自前の物流網の構築を始めた。2020年6月には千葉県習志野市で物流拠点が稼働を開始したほか、来年上期には神奈川県大和市で稼働を予定しており、計6カ所となる予定だ。

 同社が出店者の物流業務を請け負うサービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」利用店舗は高い売上成長率になっているという。70%以上の商品をRSLから出荷する店舗の4~6月における平均月次流通総額の前年同期比は、全店舗の同じ数字に比べて35.9ポイント高くなっている。年末にも予定配達時間のお知らせ機能を導入するほか、RSLを利用する複数店舗でユーザー購入した場合、1回の配送でまとめて複数の注文を届ける「まとめて配送」を導入する予定だ。

 3月に導入した送料無料となる購入額を税込み3980円で統一する「送料無料ライン」は、80%以上の店舗が導入しており、導入店舗の4~6月流通総額における前年同期比は、未導入店舗の同じ数字に比べて、約20ポイント高い。同社調査では「送料が分かりやすくなった」「楽天市場での買い物がお得になると思った」などといった声が目立つという。三木谷社長は「全店舗への導入が実現できれば、もっと伸び率は高くなるはずだ。『楽天市場は4000円以上買えば送料無料になる』という共通認識がユーザーに広がれば、皆さんの流通総額はもっと上がる」と述べ、未導入店舗に施策への参加を促した。

「取引条件開示」は慎重な姿勢

 三木谷浩史社長の講演後、野原彰人執行役員が楽天市場の戦略などを報道陣向けに説明した。「送料無料ライン」に関しては、「あと○円送料無料」表示を開始することや、商品ページや閲覧履歴などに同施策を導入している店舗のロゴを露出してく方針などを明らかにした。また、4~6月に実施した、同施策で不利益を受ける店舗に対する金銭的な支援「安心サポートプログラム」については、5月以降に施策を導入した店舗を対象として、第2弾の安心サポートプログラムを10~12月に実施する(支援内容は第1弾と同様)。

 5月に成立した「取引透明化法」への対応を報道陣から問われた野原執行役員は、「国からのリクエストがあれば応じる」としながらも、「審査基準や検索ロジックについては、詳しい部分まで開示することは不安に思っている。基準を開示すればするほど、悪意を持った事業者が跋扈(ばっこ)しやすくなり、良心的な店舗が不利益を被る可能性があるからだ」と述べ、慎重な姿勢を示した。

 また、送料無料ライン導入による、注文単価減や利益減といった副作用については「そういったクレームは今のところ当社側には来ていない」とコメントした。

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