化粧品各社、アプリ機能充実で顧客接点創出――肌診断や美容関連コンテンツを充実

 アプリを起点に、顧客接点を創出する企業が増えている。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた外出自粛など、企業は、店舗などリアルの場で接点を築きにくくなっている。こうした中、アプリの機能を充実することで、接点にする。とくに、店頭でのタッチアップ、カウンセリングに制約が生じた化粧品企業でそうした動きが活発だ。新日本製薬は2021年11月、アプリにAI肌診断機能を追加。コンテンツの充実を図った。

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3年後にEC化率20%を計画

 新日本製薬は25年9月期に総売上高に占めるEC化率20%を計画する(海外売上高を含む)。こうした中、一環として、アプリを起点にした顧客接点を強化している。

 これまでウェブは、購入時の利用などECによる接点に限られていた。アプリでは、会報誌が閲覧できる機能やシミや乾燥など肌の注意報付き天気予報など美容関連情報の配信を強化。歩数計や占いなどのコンテンツ充実、限定クーポン配布も行い、EC以外の顧客接点の構築を図っている。コロナ禍におけるマスク着用の習慣化による肌
荒れ、外出機会の減少でカウンセリング機会が減る中、21年11月には、AI肌診断などアプリの機能を新たに搭載した。

AIが「肌質」や「肌年齢」を診断

 AI肌診断機能は、同診断システムを提供するNovera社の「skinsense(スキンセンス)」を導入した。「スキンセンス」は、化粧品販売インやメイクアップアーティストなど200人以上の専門家が見た肌の印象データを学習させている。

 新日本製薬は、主力スキンケアの中心顧客が60代以降のシニア世代であることから、アプリの使いやすさを重視して設計した。AI肌診断では、スマートフォンのカメラで撮影した顔の画像から肌状態を分析。「シワ、キメ、シミ、透明感、潤い、毛穴」の6項目をスコア化し、「肌質」、「肌年齢」を算出する。診断結果から、最適なスキンケア商品の提案でアップセル、クロスセルにつなげる。今後、ユーザーの利用データを商品開発に活かしていくことも検討している。

 現在、アプリの累計ダウンロード数は約4万件。ツイッター広告やダウンロード特典として商品購入に使える1000円クーポンを提供して新規獲得につなげる。メルマガや公式LINEアカウントでの案内で既存顧客の利用も促す。「まだ多くはないが、1年前と比べ利用ユーザーは2倍に伸びた」(同社)とする。利用も40~50代が中心で、「パーフェクトワン」ユーザーより若い世代と接点を築く。

EC強化の一環でアプリ機能強化

 新日本製薬の顧客基盤は、60代以降のシニア世代が中心になる。これまで、オフライン広告、アウトバウンドを強みに事業を拡大してきた。一方、アプリ開発など、ここ数年、若年層の獲得を強化している。

 21年9月には、20~30代向け新ブランド「パーフェクトワンフォーカス」を立ち上げた。新ブランドは、デジタル投資の拡大で初年度にあたる22年9月期に7億円の売り上げを計画している。同10月にリブランディングを行った主力の「パーフェクトワン」も40~50代の獲得を強化。中国をはじめ海外でSNSやライブコマースを活用した施策によりEC化率の向上を図っている。

 アプリの機能強化も継続して進める。現状は、商品購入はアプリからECサイトにリンクする形で行っている。このため、ECの購買データ、顧客データと、アプリのユーザーデータのひもづけは行えていない。時期は未定だが、より詳細な顧客の購買行動データ分析に向け、アプリ内に決済機能を導入することも視野に入れる。

 21年9月期のEC化率は約12%(約41億円、海外売上高を含む)。海外はほぼECのため、国内売上高のEC化率は9.7%(約32億円)になるとみられる。今期は総売上高に占めるEC化率で14.6%、国内のみで同11.4%(本誌推計)を計画する。

肌診断機能で顧客と関係強化へ

 コロナ禍の影響で店舗などリアルでタッチアップなど顧客接点を築くことが難しい中、化粧品企業では肌診断機能のアプリ搭載などで顧客との関係強化を図っている。

 ファンケルは21月9月、「AIパーソナル肌分析」サービスを導入した。パーフェクト社が開発したAI技術を使い、瞬時に顔写真を分析。「シミ」
「シワ」など肌状態6項目を測定する。加えて16の質問に回答することで、「保湿不足乾燥肌」「エイジング乾燥肌」「インナードライ肌」「シミ注意肌、マスク性敏感肌用」など肌タイプを7つに分類。これらから独自の肌指数「素肌美スコア」を算出する。

 測定結果から、個々の顧客に合った肌ケアの方法を提案したり、最適なスキンケアの提案につなげている。店舗アプリで利用できるほか、全国の直営店にも導入。肌に触れることなく肌状態を確認できる非接触型のカウンセングを進めている。

 オルビスもアプリのAI診断機能を充実させている。顔写真をもとに自身の肌に合ったカラーやフェイスタイプ64通りから分析する「パーソナルカラー診断」は、メイクをシチュエーション別に提案。メイクテクニックもアドバイスする。また、20年9月にhあ、顔写真から自身に似合う眉の形とケア方法を提案する「AIアイブローシミュレーター」を、同12月には、現状の肌状態やケア習慣から未来の顔立ちを予測し、必要なケア方法を提案する「AI未来肌シミュレーション」を搭載。一部の店舗でもサービスを提供している。

ファンケルの「AIパーソナル肌分析」は、肌タイプの分析、スコア化により、店頭でも非接触で最適な商品を提案する
オルビスは「AIアイブローシミュレーター」など診断機能が充実している。
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