日本郵便が「レベル4」でドローン配送を成功 EC商品のドローン配送実現へーー2023年度からは実用化のフェーズに

 

日本郵便が3月24日、東京・奥多摩町でのドローンによる荷物配送において、第三者上空(有人地帯)を含む飛行経路での補助者なし目視外飛行(「レベル4」)を成功させた。「レベル4」の運航は国内初となる。日本郵便は2023年度からが5kgまでの荷物に対応する物流専用の新型ドローン機体による実用化のフェーズとしており、山間地での顧客向けの郵便・荷物の配達だけでなく、郵便局間の輸送にも取り組んでいく。

今回のドローンの配送経路

 今回の「レベル4」は22年12月5日の改正航空法施行に基づき、日本郵便が申請していたのに対し、国土交通省が3月17日に許可・承認したのを受けて実施した。また、同法ではドローン機体は「第一種機体認証」を取得する必要があるが、今回の機体は業務連携先のACSLが製造したもので、同機体は同認証を3月15日に日本で初めて取得していた。

 今回のドローン配送は、1kgの荷物を積んで奥多摩郵便局の屋上から離陸し、約2km強離れた住居まで運航。住人へ荷物を届けた後、再び離陸地の郵便局屋上に戻った。

荷物を積んだ離陸前のドローン
奥多摩郵便局屋上を飛び立つドローン
目的地に向け山間地へ入るドローン
配達先住居の庭に着陸するドローン
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飛行距離は従来比22%削減

 往復の飛行距離は約4.5kmで、要した時間は約9分。19年度に行ったレベル3での運航では、有人地帯などを避けての飛行となったため、飛行距離が5.87km、飛行時間が15分だった。「レベル4」での運航となったことで目的地までほぼ直線に近い飛行が可能となり、飛行距離で22%、飛行時間で40%を削減した。

 山間地にある配達先の住居へは、配達バイクで行うと、林道を通り抜け、さらに徒歩で勾配のきつい小道を登ってたどり着くところ。山間地での荷物配送をドローンにより行う好例のモデルと言えるものとなった。

 奥多摩郵便局屋上を飛び立ったドローンは、上昇後目的地となる山間地へ進み、操縦士がいる屋上から目視できない状態になったが、操縦士がパソコン画面で進行を確認し、配達先住居に到着。住人が荷物を受け取った。

 荷物を受け取った住人は「奥多摩町よりも大変な地域は全国にたくさんあると思う。その中でわざわざ配達員が届けなくていいのであれば、ドローン配送もあるかなと思う。今回は配達してもらったが、逆に荷物などを持っていってもらえるようになればと思う」と今回のドローン配送についての感想を述べた。

性能向上した新機体を投入

 日本郵便は22年12月6日、ドローン配送の実用化に向け新たな物流専用の国産ドローン(ACSL製)を発表。「レベル4」での運用を前提にした機体で、全長が1.5×1.7mと今回の機体より大きい。そのため、積載する荷物の重量が5kgと従来比5倍、最大飛行距離も約35kmとなっている。

 今回の「レベル4」の運航の次のステップとして、同機体を活用して実用化を進めることになる。山間地での荷物配送だけでなく、山間地などの郵便局と郵便局との間で郵便や荷物を輸送する事業モデルにも取り組む予定。

 また、将来構想として、日本郵便の社員が「レベル4」でドローンの操縦を行えるよう「一等技能認証」の取得も進めていく。

国土交通省、指針Ver.4.0を公表

「レベル4」に関して、国土交通省は3月31日に「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0」を公表した。有人地帯における補助者なし目視外飛行(「レベル4」)が昨年12月の改正航空法施行で解禁となったことを受け、「レベル4」飛行も対象に加えた内容にしたもので、ドローン物流の社会実装を一層推進していく。

 今回の「Ver.4.0」は「過疎地域等におけるドローン物流ビジネス検討会」においてまとめたもので、従来の「第1部社会実装編(全5章)」「第2部法令編」の2部構成を取り止め、法令編も含めて全5章立てにしている。各章の見出しは従来と同様で、「第1章利用者視点を踏まえた事業コンセプトの構築」「第2章検討・実施体制の整備」「第3章サービス内容、採算性確保」「第4章安全の確保」「第5章PDCAの活用等による事業継続性の確保」としており、第4章に従来の法令編を含めた。

 主な追加事項等は、第4章に小項目として「飛行方法別の安全対策」と「飛行後の注意」を追加したほか、第5章に従来の法令編としていた「航空法に基づく安全の確保」を加えている。

 第4章に小項目として加えた「飛行方法別の安全対」は、「夜間飛行」「目視外飛行」「物件投下」のそれぞれについての必要事項等を記している。「飛行後の注意」では、飛行後の機体
の不具合の有無の点検、「レベル4」飛行を含む特定飛行を行った場合の飛行記録、日常点検記録、点検整備記録について飛行日誌を作成と備えを求めている。

 第5章に加わった従来の法令編は、「航空法に基づく安全の確保」の大項目に、「無人航空機の登録(航空法第132条~第132条の12)」、「飛行ルールの見直し、レベル4飛行の現実に向けた制度改正」、「順守事項(同132条の86)」、「特定飛行(同132条の85、同132条の86)」「無人航空機の機体認証制度(同132条の13~同123条の39)」などの「レベル4」飛行に関連する規定について説明を行っている。

このほか、「参照条文」の修正・追加、「事例集」での追加などが行われている。

ドローン配送のガイドラインは21年6月にドローン物流に着手しようとする事業者等を対象にした手引きとして「Ver.2.0」を整理。さらに昨年3月には国内のドローン物流の取り組みをまとめた事例集を追加した「Ver.3.0」として取りまとめた。「Ver.4.0」に関しても今後の状況の変化を踏まえて、適時見直しを行う予定という。


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