景品表示法処分取消訴訟が増加へ――消費者庁の22年度運用

 消費者庁が今年6月に公表した2022年度の景品表示法に基づく措置命令件数は、41件だった。課徴金納付命令は、15社に対する17件。総額3億441万円だった。返金措置計画の認定は0件だった。景表法は16年の課徴金導入で制裁が強化されて以降、行政処分取消訴訟が増加している。来年施行予定の改正景表法は、事業者の違反行為抑止を目的にさらなる制裁強化が図られており、今後も行政訴訟は増加傾向が続きそうだ。

措置命令件数は年間 40 件前後で推移(消費者庁資料より抜粋
スポンサードリンク

調査件数は減少傾向に

 調査件数は、274件(前年からの繰越し85件を含む)。前年の調査件数は374件。17年度の653件をピークに減少傾向にある。内訳は、行政職員による「職権探知」は48件、「情報提供」は137件(総数は1万4410件)、「自主報告」が4件だった。

 処理件数は、200件(前年は289件)。「措置命令」が41件(同41件)、「指導」が112件(同172件)などだった。

 措置命令の内訳は、「優良誤認」が38件、「有利誤認」が3件、「おとり広告」が1件の計42件。関係条文が2以上にわたる事件があるため、命令件数と一致しない。優良誤認のうち、不実証広告規制の適用は29件(76%)あった。指導の内訳は、「優良誤認」が72件、「有利誤認」が26件などだった。

 21年から昨年にかけて、消費者庁は、アフィリエイト広告に関する検討会(外部委託の広告に関する表示管理義務の強化)、景表法改正に向けた検討会、ステルスマーケティングに関する検討会(指定告示の導入)など相次っている。調査件数や処理件数の減少は、これら検討に取り組んだ影響もあるとみられる。

課徴金命令対象に初の行政訴訟も

 景表法の制裁強化を受け、行政処分取消訴訟も増加している。継続中の案件を含め昨年の3件から8件になった。22年度は、課徴金命令の取消しを対象にした初の行政訴訟も提起された。

 18年末に有利誤認で措置命令を受けた葬儀仲介サイト等を運営するユニクエストは、21年7月、1億180万円の課徴金を課された。同年12月に提訴。算定の基礎となる売上額の推計手法が不当と主張している。併せて措置命令(有利誤認)の妥当性も争っている。

 健康食品通販を行うだいにち堂も21年に370万円の課徴金を課されたが、これを不服として22年末、消費者庁の課徴金命令を不服として行政取消訴訟を提起している。

 同社は17年、販売する健康食品の表示をめぐり、景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を受けた。広告で「ぼんやり・にごった感じに」などと表示したことが目の症状を改善するかのような誤認すると判断された。

 これを不服として18年8月、処分取消しを求め提訴。表示抽象的表現であり、これに不実証広告規制を適用するのは、「表現の自由」「職業選択の自由」を侵害すると訴えていたが、昨年、最高裁への上告が棄却されていた。

法改正で課徴金の制裁効果は強化

 ほかに措置命令取消訴訟では、大正製薬(19年提訴、継続中)、東亜産業(20年提訴、同)、ティーライフ(21年提訴、請求棄却で確定)、レック(21年程度、請求棄却で確定)、セブンエー美容など3社(22年8月提訴、提訴取り下げで終了)など。大幸薬品は措置命令を前に差止めを求める訴えを起こした(申立人の抗告棄却で確定)。同社には今年4月、消費者庁が約6億円の課徴金命令を下している。

 景表法をめぐっては、制裁強化を念頭に「繰返し違反」に対して課徴金を加算する制度が導入される。10年以内に課徴金命令を受けた事業者を対象に、課徴金額を1.5倍にする規定を新設する。また、直罰規定も導入される。制裁強化を受け、行政訴訟は今後も増えそうだ。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG