ECで進むバーチャル試着体験――PV数や購入率などを改善も

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アプリ不要の仮想試着サービス

 コロナ禍でファッションECのユーザーは増えたが、依然として試着できないことによるサイズ感や似合うかどうかといった不安が購入のハードルになっている。そうした中、バーチャル試着体験を提供することで、購入を後押しするようなサービスが増えている。

 アパレルEC向けの販促サービスを手がけるSally127(サリーワンツーセブン)は3月31日、バーチャル試着サービスの提供を開始した。新サービスはAIとAR技術を活用し、ユーザーのスマートフォン上ですぐに使えて、没入感が高いバーチャル試着のプラットフォームだ。アプリ不要でリアリティーの高いARを表示でき、従来のバーチャル試着が持つエンタメ性と、EC売り上げに直結する販促効果を両立させたという。

商品ページに埋め込まれた試着ボタンをクリックすると、すぐにスマホのカメラを使ったバーチャル試着がスタートする

 導入企業にとってはアプリ開発や高額な導入・運用コスト、IT専門人材、洋服のCADデータなども不要だ。当該サービスのコードを通販サイトに埋め込むだけで試着サービスを始められるため、サイトからの離脱防止につながるほか、アプリをダウンロードしてもらうための広告費や手間がかからない利点もある。

 EC利用者は商品ページに埋め込まれた試着ボタンをクリックするとすぐに、スマホのカメラを使ったバーチャル試着がスタート。ARで表示された洋服は360度身体に追従するため、後ろ姿も確認できる。

 新サービスはレディースの洋服向けでスタートしたが、メンズや子供服にも展開できるのに加え、すでに技術的にはトップスとボトムスの2着同時試着も可能で、例えばシャツの裾のイン・アウトにも対応できる。リアルの店舗ではなかなかできない、ブランドの垣根を越えたトップスとボトムスの同時試着も、複数ブランドで当該サービスを導入すれば可能だ。

 コロナ禍でアパレルのEC利用は一気に高まったが、消費者の店頭回帰の傾向や、EC利用時の失敗体験もあって、ECの伸び率は鈍化している。

 同社のアンケート調査によると、EC利用で失敗したユーザーは、ECで買うことをやめたり、何度でも返品できるサイトでしか購入しなくなったり、購入したことのないブランドや高単価な商品には手を出さなくなるなど、EC購入の選択肢を狭めてしまう傾向にあるという。

 サリーワンツーセブンでは、自社運営するレディースアパレルの通販サイトにバーチャル試着を埋め込んで3カ月間検証した結果、バーチャル試着ありの服は試着なしの服に比べて販売数が2.5倍に、PV数は2.2倍になったほか、アイテムを見た5人にひとりがバーチャル試着を試した。また、試着を体験したユーザーからは「EC購入の不安が安心に変わった」「買ったことがないブランドの服もECで買えるようになった」などの声を得たという。同社によると、「アバターなどでは得られない“没入感”をARでは提供できる。実際の試着とは違うが、サイズ感はもちろん、自分が可愛く見えるか、似合うかどうかが服を買う時に一番大事。それにはリアルタイムの映像が必要になるのでARを使う設計にした」(鳥巣彩乃社長)という。

 まずは、リアル店舗を持たずに試着の機会を提供できていないEC専業のほか、購入率の改善や返品率低減を図りたいアパレルメーカー、大手小売りなどへの導入を目指す考えで、すでにそうした企業が興味を示しているのに加え、下着やウエディングドレスのメーカーやデザイナーズブランドからも問い合わせがあるという。

店舗で顧客のアバター作成

 増永眼鏡と光学レンズメーカーのカールツァイスビジョンジャパンは4月7日、増永眼鏡が運営するオンラインストアでアバターを活用した仮想試着サービスを開始した。

 同サービスではまず、店頭で9台のカメラを用いて180度を撮影し、顔を正確に測定。瞳孔間距離や目の高さ、顔に対するフレームの角度やカーブなどの個別データをもとにユーザーのアバターを作成する。作成した顔のアバターに、3Dフレームデータを重ね合わせることで仮想試着が楽しめる。

 試着結果を180度回転させて、架け替えなしで正面だけでなく側面などからも試着姿が確認できるほか、レンズ部分に色を入れて顔とフレームのバランスもチェックできる。実店舗での仮想試着体験はもちろん、パソコンやタブレット端末、スマホから専用サイトにアクセスすることで、いつでも仮想試着を楽しめる。

9台のカメラを用いてワンショットで180度を撮影し、利用者のアバターを作成する
自分のアバターやサンプルアバターにフレームを試着させ、かけたときの印象などをチェックできる

 実店舗に来店したことがないユーザーも、オンラインストア内の商品ページで「3Dで見る」ボタンをクリックすることで、フレームが3D表示され、多角度から確認できる。また、サンプルアバターにフレームを試着させ、色違いのフレームをかけたときの印象などもチェックできる。自分のアバターで仮想試着したい場合は実店舗に来店し、アバターを作成することで、それ以降は専用サイトで自分のアバターを介した仮想試着体験が可能だ。

 なお、3Dフレームについては、実際のフレームを1本1本スキャンしてフレームの装飾や艶感など細部まで再現しているという。

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