LINE、「公式アカウント」のEC連携に手応え――「ヤフーショッピング」有力店舗が成果公表

  LINEでは、企業が「LINE」上に自社アカウントを開設できる「LINE公式アカウント」と、ヤフーの仮想モールとの連携が成果を挙げているようだ。8月31日、店舗や企業のマーケティング担当者と代理店を対象としたイベント「LINEローカルデー」をオンラインで開催。LINEの広告事業担当者から「LINE」の最新情報や、店舗における「LINE」の活用方法と実績の紹介があった。

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開設数は3万超に

 LINEでは、企業がLINE上に自社アカウントを開設できる「LINE公式アカウント」の機能強化を進めており、アカウント数は39万を超えた。うち、ショッピング・小売店が15%を占める。また、2022年7月におけるアクティブなアカウント数は、前年同期と比較して27%増となっている。

 EC関連では昨年から、ヤフーとLINEが経営を統合したことを受けて、「PayPayモール」「ヤフーショッピング」に出店する店舗のアカウント開設を受け付けている。現在までに開設数は3万を超えた。同社による実証実験に参加した店舗におけるLINE経由の取扱高は、メールマガジン経由の約2倍となっている。メッセージの開封率は、メールマガジンと比較して4.6倍、クリック率は同3.3倍、1人あたりの購入金額は同1.4倍に達している。

 池端由基上級執行役員(42ページ写真)は「プロジェクトを開始してわずか1年だが、EC領域でもLINE公式アカウントが非常に有効であることが証明できた」と胸を張った。

 今後はスマートフォン決済「PayPay」との本格連携を開始。PayPay決済時の「LINE」における「友だち」への追加を促進する。また、「友だち」の企業に対する理解を深めるための分析・配信機能を強化する。性別や年代、居住地域など「LINE」属性データや店舗が個別に入力するデータだけではなく、クーポン履歴やEC購入有無といった「LINE」のサービス利用データ、LINE公式アカウントのアンケート機能で取得したアンケート結果を「友だち」と紐づける。

 これにより「来店したことがある」「クーポンを使ったことがある」「ECを利用したことがある」といった情報を企業が把握できるようになる。「特定のユーザーにさまざまな情報を紐づけることができるのは、これまでチャットでコミュニケーションを取ったことがあるユーザーであることが前提だが、より顧客を深く理解した上でのコミュニケーションが可能になる」(岩本大地マーケティングソリューションカンパニーエグゼクティブ)。さらに、「店舗は利用しているがECは未利用」という顧客にEC特別商品を紹介するなど、行動履歴に基づいたメッセージ配信を可能にする。

LINEが「ひと押し」に

 また、イベントでは「澤井珈琲」(運営は澤井珈琲)と「SHIROHATO」(同白鳩)の担当者が登壇し、自社におけるLINE公式アカウント運用方法などを紹介した。

 澤井珈琲の澤井理憲常務取締役兼銀座店店長(43ページ写真中央)は、「LINE」導入のきっかけについて「当社がECを始めた20年前は、メールを送れば送るほど開封率が高くなった。ただ、スマートフォンへの移行が進み、メルマガの開封率は年々下がっている。顧客とのコミュニケーションを取るために、『LINE』にチャレンジした」と話す。

澤井珈琲では、サイトとメルマガに「LINE」の友だち追加のためのバナーを掲載。発行するクーポンに関しては、メルマガ会員の15%割引に対し、『LINE』は20%割引と優遇している。「メールと違い、『LINE』の通知は仕事中でも開いてくれる。メルマガ読者もサイトへの来訪者も『LINE』の友だちになってもらうことで、次のアクションにつなげるため、『LINE』ではより強力な販促を打っている」(澤井常務)。

 こうした施策により、PayPayモールの「ズバトクキャンペーン」では3万人超の友だちを獲得。楽天・PayPayモール合算で友だち数は21万人を超えた。「メルマガ会員は約70万人だが、『LINE』を始めて約4年で21万人という結果は大満足。『LINE』はアクセスや売り上げ増といった反応が凄いので、こちらとしても楽しみながら配信をしている」(同)。メルマガと比較した場合、開封率は3.3倍、クリック率は1.7倍に及ぶ。

 メッセージ配信のタイミングは、消費者がコーヒーを飲むことが多い朝や、仮想モールが開催する大型セールを意識。セールの前日や前々日に商品の良さをアピールして、当日の配信で最後のひと押しをするイメージという。

 澤井珈琲では、2021年11月からPayPayモール店の「LINE」アカウントの運用を開始。22年7月の「LINE」経由売り上げは2.3倍になったほか、2月の大型セールにおいては、「LINE」経由で1500万円を記録した。4~7月における、1人あたり合計購入金額は、同社PayPayモール店の全体との比較で1.3倍となるなど、単価や購入回数増加につながっているようだ。「売り上げの上限値は顧客リストの上限値でもある。友だちが20万人から50万人、100万人と増えれば売り上げはさらに伸びる。より多くのユーザーに情報を届けるために、販売手法としての『コミュニケーション』をもっとアップデートしていかなければならない」(澤井常務)。

 今後は、友だち数をメルマガ発行部数と同じ水準の70万まで伸ばしていくほか、読み物としても活用する。澤井常務は「コミュニケーションツールとしての『LINE』は本当に凄い。これまで当社やってきたメルマガ配信は、もしかしたら一方的に『これがおすすめです』と押し付けるもので、乱暴な部分があったかもしれない。『LINE』を活用することで、顧客がより身近になるチャンスが生まれた。現状の20万人という友だち数は、本や雑誌の発行部数に匹敵する。『澤井珈琲をこうしたら楽しめる』など、当社の思いを伝えるコミュニケーションもしていきたい」と今後の「LINE」活用のビジョンを語った。

若年層開拓に成功

 白鳩WEB事業部CRM課の森谷真夕子課長(43ページ写真右)は「メルマガの開封率が年々下がってきたこともあり、新たなコミュニケーションツールを探していた。『LINE』は顧客が気軽に使えるし、プッシュ通知などの即時性もあることから、開封率・送客率が期待でき、新たな販促ツールとして使えると判断した」と、「LINE」導入のきっかけを説明する。

 白鳩でも、サイトとメルマガでのバナー掲載に加え、LINEの動画プラットフォーム「LINEVOOM」、さらにはLINEスタンプも活用して友だち追加につなげている。その際には、友だち追加の特典を紹介するページを見せることで、友だち追加後すぐにブロックするユーザーの数を抑えているという。

 同社の場合、「LINE」を経由した売り上げのうち57%が、友だちに追加された直後に配信する「あいさつメッセージ」経由だ。森谷課長は「この数字は、新規の友だち限定クーポンを配布している影響が大きい。また、クーポン獲得後すぐにブロックされないように、特典の詳細をあいさつメッセージと一緒に送っている。顧客に対し、最初に『このアカウントと友だちになるとどんなメリットがあるのか』を分かりやすく提示することが大事だ」と語る。

 白鳩では、「LINE公式アカウント」の機能である「リッチメニュー」(トーク画面下部に固定で表示されるメニュー)に注力しており、特に「ランキング」「新着アイテム」「セールアイテム」といったバナーの位置にこだわっているのだという。

 同社が自社コンテンツで検証したところ、右上に配置した「セールアイテム」のクリック数が他と比較して約2倍であることが判明。「ユーザーの多くが、右手の親指でスマートフォンを操作するので、親指の届きやすい右上部分が押されやすいのではないか。そこで、クーポンやセールなど、一番タップしてもらいたい情報を右上に掲載している」(森谷課長)。

 PayPayモール店アカウントの友だち数は10万人を突破した。「LINE」経由の売り上げも伸びており、4~7月における1人あたり合計購入金額は、同社PayPayモール店の全体との比較で1.6倍に達したという。すでに、メルマガ経由の売り上げを大きく上回っており、特に若年層の購入が目立っている。森谷課長は「当社の顧客は年齢層が高めだったが、『LINE』のおかげで、これまでアプローチできなかった若年層が獲得できた」と手応えを口にする。

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