「コンプガチャ」で揺れるモバイルSNS――集客力への影響はあるか

5月5日の一般紙報道から始まったコンプリートガチャ(コンプガチャ」の規制問題。8日には松原消費者担当相が記者会見で「コンプガチャは(景品表示法で禁止する)カード合わせによる景品の提供に当たる可能性がある」という趣旨の見解を示すなど、規制ムードが高まっている。急成長するモバイルSNSは、ネット販売を手掛ける事業者にとっても有用な出稿先だけに、今後の動向が注目されるところだ。

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コンプガチャは「カード合わせ」

5月5日の読売新聞朝刊1面に踊ったのが「携帯ゲーム新商法『違法』 消費者庁、中止要請へ」という見出しだ。各社も後追い報道を行い、一気にコンプガチャ規制へのムードが高まった。松原消費者担当相は、8日の会見で「カード合わせによる景品の提供に当たる可能性がある」との言い方にとどめたが、消費者庁は「カード合わせである可能性は高い」(表示対策課の片桐一幸課長)とみているのが実情だ(注:5月18日に景表法違反にあたるとの見解を発表)。

そもそもソーシャルゲームでいう「ガチャ」は、ゲーム内で利用できるアイテムやカードを入手する手法の一つ。カプセルトイの自動販売機を模しているためについた名称だ。ガチャには無料で回せるものもあれば、1回数百円かかる有料のものもある。

中でもコンプガチャとは、ゲームを進めるのに有利となるレアアイテムを手に入れるために、特定のアイテムを複数揃えさせるというもの。入手するにはアイテムの「コンプリート」が条件となるため、際限なく課金を行い、ガチャを繰り返してアイテムを引き続けるユーザーが続出。「射幸性をあおっているのでは」として問題視されていた。

一方、景表法で問題となる「カード合わせ」は、一定の組み合わせで複数のカードを揃えると景品がもらえるグリーの「探検ドリランド」46 ネット販売 VOL.13 No.6というもの。菓子のおまけとしてついてくる、プロ野球選手カードを何枚か集めると景品と交換できる、という手法を思い浮かべると分かりやすい。景表法ではカード合わせによる景品の提供を禁止している。

通販にとっても重要な出稿先

こうした動きを受けて、ディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーなど、ソーシャルゲームの関連会社各社は、コンプガチャを廃止する姿勢を相次いで表明した。

今回の規制は、DeNAやグリーといったソーシャルゲームのプラットフォーム企業にどの程度影響をあたえるのだろうか。ソーシャルゲームは成長産業だが、特に若い女性の利用者が多いだけに、通販企業にとっても重要な出稿の場だ。

ある化粧品通販企業の幹部は「(コンプガチャ規制が)どの程度集客に影響するのか読めない」と不安を口にする。モバイル経由の販売比率が高いこの会社。特に、アクセスが急増し若い女性のサイト利用が見込める「モバゲー」などのモバイルSNSは「ランディングページへの誘導が安定して期待できる」(先の幹部)出稿先。そんな中でぼっ発した今回の騒動だが、5月はちょうど7~9月の出稿を検討する時期となる。「大幅にサイト来訪人数が減るのであれば、当然料金値下げ要請も視野に入れなければいけない」(同)。

アクセス数への影響は少ない?

こうした通販企業の不安に対して、ゲーム会社側では「コンプガチャ目当てのユーザーがどれくらいいるかが把握できないため、(来訪者数やアクセス数がどこまで減るかは)はっきりとは分からない」(DeNA広報)としながらも、「急に減少することはないと考えている」(同)とする。

DeNAの見解に従えば、コンプガチャはあくまでもゲーム中のイベントの一種。コンプガチャでレアアイテムを手に入れることを目的にゲームを遊んでいるわけではなく、廃止したからといってアクセス数には大きな影響はないだろう――というわけだ。

さらにいえば、有料サービスを利用しているユーザーは少数派。大半は無料でサイトを利用しており、「無料配信されるニュースを目当てにしているユーザーもかなり多いのではないか」(同)という。コンプガチャに大金を投じるユーザーがごく一部であることを考えると、収益面での目減りはともかくとして、アクセス数への影響は少ないことが予想される。

規制への動きは始まったばかり

とはいえ、実際にどの程度の影響が出るかは、ふたを開けてみるまでは分からない部分も大きい。

今後、各社はコンプガチャに代わる課金手法を編み出していくことになるだろうが、規制への動きもまだ始まったばかり。今回はコンプガチャのみがやり玉にあがる形となったが、他にもカード合わせ的な要素を有するガチャはある。例えば、ビンゴゲームのように、指定された1列の絵柄を揃えるとアイテムがもらえる「ビンゴガチャ」、規定回数ガチャを引くと、アイテムがもらえる可能性がある方式のガチャなどだ。仮に、こうしたカード合わせ的な要素のあるガチャが全廃されたとしたらどうなるのか。

消費者庁でもこれらの事実は把握しており、コンプガチャ以外のガチャの取り扱いについても「調査中」(表示対策課の片桐課長)とするなど予断を許さない。ガチャはDeNAやグリーにとって収益の柱だけに、過度な規制はソーシャルゲームの成長に待ったをかける可能性は高い。さらに、アイテムを実際の通貨で取引するリアルマネートレード(RMT)を防ぎきれていない問題もある。

今後はDeNAやグリーなどが参加するソーシャルゲーム6社連絡協議会による自主規制が進むことになりそうだが、行政とのせめぎあいは続きそう。出稿を検討する通販事業者も、ソーシャルゲーム業界の動向を注視する必要があろう。

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