楽天を中心に「新経済連盟」発足、ネット販売企業のメリットは?

「イノベーションが国の力を左右する時代なので、そこを軸にいろいろな政策提言を考えていきたい」――。

楽天やサイバーエージェントなどを中心とするeビジネス推進連合会は6月1日開催の臨時総会で名称を「新経済連盟」に改め、新団体として活動を開始した。同団体には一般会員245社、賛助会員534社の計779社が参加。今後はインターネット業界以外の新産業まで対象を拡大し、eビジネスの拡大や新産業の育成を通じた競争力強化などを目指していく。「今まで以上に議論を重ね、より具体的な政策提案を行っていく」(三木谷代表理事)考えという。

ただ、会員数をみると「eビジネス推進連合会」設立時と比べて賛助会員が大幅に減少しており、会員基盤の増強のためには具体的なメリットの提示が必要不可欠な状況でもある。楽天の三木谷代表理事はワーキンググループやフォーラムなどが好評とするが、「あまり活発化していないグループもある」という声もあるほか、政策提言に関しても一部で「政治にあまり影響は与えられなかった」という指摘も出ている。新たに発足した新経済連盟。果たして新団体として、今後どのような方向に進むのか。そして、ネット販売事業者にとって、入会に値する団体として存在感を発揮するのだろうか。

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ネット以外の企業も参加可能に

「新経済連盟」の代表理事には、前団体から引き続き楽天の三木谷社長が就任。理事にはサイバーエージェントの藤田社長やGMOインターネットの熊谷社長、フューチャーアーキテクトの金丸CEO、ライフネット生命保険の岩瀬副社長らが就任している。また、監査役にはフリービットの石田社長、事務局長には楽天の関渉外室室長が就任。前団体で副会長を務めていたヤフーの井上前社長は退任。なお、ヤフーは新団体には加入せず、退会している。

新たに発足した「新経済連盟」では、「政策提言」や「ワーキンググループ」などこれまでの「eビジネス推進連合会」での活動を軸に、より強化していく方針。特に「政策提言」では「規制がすべてダメというわけではないが、医薬品のネット販売の規制はインターネットのことを理解していないゆえに出てくる規制論。そのあたりについてはしっかり議論をしていきたい」(同)とする。

また、これまではインターネットでビジネスを行っている企業が対象だったが、今後はそれに加え「新しい取り組みに積極的にチャレンジしている企業やベンチャー」(同)なども会員として迎え入れる方針だ。

ワーキンググループでメリットを

では、ネット販売事業者が新団体に加入するメリットはどこにあるのだろうか。入会のメリットについて三木谷代表理事は、前身のeビジネス推進連合会時代から行っている、会員を対象とした「フォーラム」や「ワーキンググループ」などが好評とアピールする。「海外の情報などはなかなか日本に入ってこない。だから例えば、我々のネットワークでシリコンバレーのベンチャーと日本のベンチャーを合わせる場を作るとか、講師を呼んで勉強会をやるなどをこれからはより積極的にやっていきたい」(同)というわけだ。

ワーキンググループは基本的には「幹事社」が中心となって座長を務め、テーマを設定して賛同する企業らで進めていく形。現在稼動しているワーキンググループをみてみると、ケンコーコムが座長を務める「薬事法に関するワーキンググループ」や、楽天が座長の「地域活性化ワーキンググループ」「選挙とインターネットワーキンググループ」「迷惑メール技術対策ワーキンググループ」「国際ワーキンググループ」、それにIDCフロンティアなどが座長を務める「BCMワーキンググループ」など6つがある。ただ、これらは前団体に行っていたものであるため、今後は現在のものをベースに、新たに選定された幹事社を中心として新しいテーマのワーキンググループが追加されていく予定となっている。こうしたワーキンググループをメリットとみる声もあり、「業界の情報収集が必要と判断している」「ワーキンググループに参加するなどして活用している」など、入会理由に挙げる会員も多いようだ。

活動内容に疑問も?

ただ、そのワーキンググループについて、一部では不満の声も挙がっている。例えばヤフーは井上前社長の任期満了に伴い、「新執行体制への移行に注力したい」として前述の通り退会しているが、退会理由には「(ワーキンググループなどの)方向性の違いはなくはない」(ヤフー)としており、ひとつにはワーキンググループの内容や進め方における見解の相違もあったようだ。

詳しい内容は不明だが、例えば先に述べたとおり「活発化していないグループ」の存在や、中には「活動報告が薄いグループもある」という意見も出ており、こうした点が新団体に違和感を持った原因と思われる。

ヤフーは前団体において、「モバイルプラットフォーム」や「HTML5」など4つのワーキンググループで座長を務めており、これについては団体の枠を超えて、「勉強会」などの形で継続していく考えだという。なお、ヤフーでは今後、自社の新体制が整ったあとも、新団体に加入する予定はないとしている。

一部では“冷めた意見”も

ヤフー以外でもこうした動きは一部で出始めている。例えばあるネット販売事業者は「eビジネス推進連合会には情報交換レベルで参加しており、今後、加入を継続するかは検討中」と語る。また、新団体への「衣替え」の話を知ったのは発足直前で、「寝耳に水」状態だったと性急な姿勢に疑問を抱く。

さらに、違う事業者からは「特に積極的な取り組みをしているわけではないので、コメントすることがない」などとやや冷めた意見も聞こえてきており、求心力という意味では必ずしも磐石とは言えない状態にあるようだ。もちろん、中には新団体に刷新したことに対して「加盟企業の増加や発信力の増強にもつながるのでは」「発言力も含め、業界の価値が高まれば」と期待する声もあるが、それだけではないことも知っておく必要はあるだろう。

始動した新経済連盟。“会員離れ”を防ぐためにも、また業界団体として発言力を強めていくためにも、今後は具体的なメリットをいかにわかりやすい形で会員社に提示し、基盤を増強できるか。そこが問われる1年になりそうだ。

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