商品に直接アクセスする流れを構築
YKSでは、IT関連の人材派遣のほか、通販サイトの構築などフロント部分に特化したWeb制作事業などを展開。「タッチパネルECアプリ」は、Web制作の分野で、競合他社と差別化されたサービスとして開発したものだ。YKSの奥住智洋社長は、そのコンセプトを「仮想モール出店事業者のリピーター開拓と囲い込みの支援」とする。
具体的な考え方として、まず挙げられるのは、個々の出店事業者にアプリを作成すること。顧客がダウンロードしたアプリのアイコンをスマートフォンなどのホーム画面に常駐させることで、ダイレクトに仮想モール上の自社商品へアクセスできる流れを構築する。
すでに仮想モール運営事業者でもアプリを展開しているが、基本的なサイトの作りはPCサイトと同じで、トップページから商品カテゴリーやカテゴリーなど各階層のページに入っていかなければならない。これに対し、「タッチパネルECアプリ」では、ひとつの画面上で商品のカテゴリーや一覧などを表示することで、目的の商品にたどり着くまでの導線を短縮(決済は、「楽天市場」のスマホ用サイトやPCサイトに遷移して行う仕組み)。商品一覧画面の商品画像をカートのアイコンにフリック(スマホの場合は、商品欄を横方向にフリック)するだけで商品をカートに入れられる機能を付加するなど購入までの手順の簡素化も図っている。
このほかにタブレット端末では、デジタルカタログの体裁で商品一覧を表示し、指でページをめくる感覚で商品を探せるようにするなど、端末の特徴に合わせた商品の見せ方も追求。顧客が常に商品へアクセスできる環境と、購入までの手続の簡素化により、リピーターの獲得や囲い込みにつなげる。
出店事業者の負担を軽減し導入促進
「タッチパネルECアプリ」のもうひとつの特徴は、商品画像や説明文、在庫など仮想モールサイト上の情報を活用していること。すでに展開している「楽天市場」版は、仮想モール上の情報をクロールする仕組みだが、これにより新たにアップされた商品や在庫数の変動などをほぼリア
ルタイムで表示できるようにしている。また、サイトのデザイン設計や構築、審査機関への申請はYKSが行う仕組みで、仮想モール出店事業者としては、データベースの構築や商品マスタ登録などをかけずに導入でき、通常の仮想モールを運営していればアプリにも反映されるわけだ。
導入ペース加速、有力どころも関心
楽天版の「タッチパネルECアプリ」は2011年5 月から展開。当初は、iPhoneなどのiOS端末のみの対応だったが、同年10月にAndroid向けの展開を始め、現状、全てのタッチパネル端末に対応しているという。
現在の楽天市場版「タッチパネルECアプリ」の導入出店事業者は、ビックカメラやミドリ安全など約30社。導入出店事業者のなかには、それまで20%だったモバイルカート経由の売り上げが25%に拡大し、全体の月商が10%伸びた例もあるという。約3万8000の「楽天市場」出店事業者数を考えると、「タッチパネルECアプリ」の展開は、まだ、これからといったところ。だが、YKSによると、認知度の高まりなどから導入出店事業者のペースが上がってきており、大手総合通販のベルーナが楽天に出店するショップでの導入準備を進めるなど、有力通販事業者の間でも関心が高まってきている状況だ。
複数モールに対応、運営事業者協力も
仮想モールに出店する事業者が利用しやすい形にする。スマホ経由の売り上げが拡大する
なか、仮想モール運営事業者も、出店事業者の支援ツールとして「タッチパネルECアプリ」に着目。実際、ヤフーは、同アプリ向けにAPIを開放するなど積極的で、YKSと共同の販促を行う可能性もあるという。楽天についても、有力出店事業者の導入実績ができ、「見方が変わってきている」(奥住社長)ようだ。
こうした状況も踏まえ、YKSでは今後、「タッチパネルECアプリ」の機能拡充を推進。今年度中に1000サイトへの導入を目指す構えだ。