動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のEC機能「ティックトックショップ」が日本でスタートしてから約半年。当初の期待とは裏腹に「あまり売れないのでは」といった声もEC企業の間ではちらほら。そのため「様子見」を決め込むEC企業も少なくない。ただ、運営するTikTokShopJapanによれば、成功事例も出てきているようだ。同社が開催した記者会見より、ティックトックショップの現状と、出店企業の声を取材した。
35歳以上の購入が約半数
動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では2025年6月より、アプリ内で商品の販売から購入が可能となるEC機能「ティックトックショップ」の提供を行っている。2月3日には、日本におけるサービス開始から半年が経過したことを受け、TikTokShopJapanが記者説明会を開催。同社の邱開洲ゼネラルマネージャー執行役員は「日本のセラー・クリエイター・ユーザー、地域に根ざした商品や文化を支援することで、長期的なエコシステムを築いていきたい」と述べた。
ティックトックショップのアクティブセラー数は5万超で、サービス開始時から3倍以上に増加。クリエイター数は20万以上。動画やライブ配信といったコンテンツを起点とした流通が全体の約70%となっている。顧客の年齢層は、18~34歳と35歳以上がそれぞれ約半数を占めている。若年層以外の購入も少なくなく、王子製薬の事例では、30~50代の主婦層の購入が一番多いという。
生成AIへの対応も重要
日本向けサービスの特徴は、ライブ配信経由の購入比率が他国よりも高いことにあるという。特に、ショート動画経由の購入が好調。食品やファッション、ビューティーカテゴリーが伸びている。
例えばファッションカテゴリーにおいては、70%以上がライブ経由で売れており、マーチャント自身のコンテンツによる流通額比率が79%。平均注文額も高いという。また、ビューティーカテゴリーにおいては同様にライブ経由売り上げが70%を超えているほか、アフィリエイターとのコラボレーションから生まれた流通額が53%となっている。
邱執行役員は、現状について「同じ年にサービスを開始した国や、数年前に開始したイギリスやアメリカと比較しても非常に順調だ」と評価。ライブ配信が受け入れられている理由については「おもてなしを表現できる点が大きい」。
また、レビューや商品詳細を確認してから購入する「ユーザーの慎重さ」も日本の特徴。そのため、レビュー投稿を促進するクーポンの発行なども行っている。今後はポイント制度の導入なども検討している。
成功事例も出てきている。松屋フーズは25年10月に公式店を開設。1カ月で月商3800万円、累計7500セットを販売したという。TikTokクリエイターとのコラボレーションを軸に、大量の短尺動画を投稿、認知と話題性を獲得したことが成功につながった。また、広告ソリューション「GMVMax」を活用することで、人気動画の閲覧数を効果的に拡大することができたという。
GMVMaxは自動化に特化した広告商品。カート付きショート動画広告と、ライブ配信が主な誘導先だ。商品も動画もAIが自動で選ぶのが特徴となっている。「広告なし」と「広告あり」を比較すると、後者のセッションあたり平均流通額は、前者より49%多いという。
出店企業は大企業から中小企業まで幅広い。地方自治体との取り組みも行っている。ティックトックショップ運営支援企業を通じ、兵庫県豊岡市と連携した地域特産品の販売イベントを昨年9月に実施。リーチ数は約394万人、ライブ視聴者数は9.3万人で、新規購入者比率は82%だった。こうした動きを受け、地域の特産品や中小事業者の商品などの販売を支援する「ティックトックショップローカル」を開始する。今後はオンラインだけではなく、地域と連携したリアルでの施策も行う。
邱執行役員に聞く「TikTokShop」の現状
TikTokShopJapan執行役員の邱開洲ゼネラルマネージャーに、現状や今後の施策などを聞いた。Q:日本におけるサービスの進捗は。
A:例えば商品数においては、8カ月目の現在で、18カ月目のアメリカの商品数と同程度。昨年サービスを開始したイタリアやフランスは、現在の日本における商品数に到達するまで丸1年かかりそうです。
Q:とはいえ、様子見しているEC企業も少なくない。
A:通常のECプラットフォームは、商品とユーザーのバランスを取りながら成長させます。しかし、ティックトックショップのビジネスモデルはコンテンツも軸となっています。クリエイター、セラー、ユーザーのバランスを取りながら成長させなければいけない。このバランスが崩れると破たんする可能性があります。いくら他国より成長が早いといっても、現時点ではアマゾンや楽天市場とは規模が全く違うわけです。一部の大手、特にオフラインが大きな売り上げを占めている小売り企業が「出店を急ぐ必要はない」と判断するのは納得できます。また「様子見」といっても、裏では出店を決めており、準備を進めているケースも多いのではないでしょうか。
Q:アマゾンや楽天市場に対抗できる流通規模を目指すのですか。
A:目指せると思っていますが、そこまで競合と考えているわけではありません。ティックトックショップはエンターテインメントが中心のプラットフォームであり、Eコマースとの融合でいかにユーザーを提供するかが重要。コンテンツを支えるためにクリエイターのエコシステムを作る必要があり、自然の結果としてどこまで行けるか。また、これまで仮想モールに出店したことがない企業が出店しているケースがあるので、既存の仮想モールとは属性が違います。
Q:「ティックトックショップはハードルが高い」と考えているEC企業も少なくない。
A:カートシステムなど、第三者との連携を進めていきます。また、クリエイターとのマッチングはオフラインでの紹介が中心ですが、最終的にはAIに任せることで効率化したいですね。
Q:今後、どのようなサービスを導入するのですか。
A:ポイント制度に関して、現在はユーザー向けにプラットフォーム側が付与していますが、今後はセラーが自分たちでユーザーにポイントを付与できるようにします。CRM機能については、これまでリスクコントロールの観点から、テンプレートを使ったやりとりしかできませんでした。今後はセラーから自由にコミュニケーションが取れるようにします。ただ、これは技術的には簡単ですが、その前にモニタリングやコンテンツの審査体制を導入しないといけません。
Q:ポイント制度は他国にはないのですか。
A:日本だけです。
Q:この先注力したいテーマは。
A:ユーザーの信頼度を高めるために、日本で知名度が高いブランドを増やしたいですね。また、ライブ配信経由の売り上げが好調ですが、自走可能な体制で拡大させるためのエコシステムを築きます。特に、リアルタイムでライブ配信がコントロールできる専門家は少ないので、教育体制を作る。さらに、クリエイター向けの啓蒙活動をしていきます。