日本郵便は2024年12月23日、ヤマト運輸に対して120億円の損害賠償を求める訴訟を提起したと発表した。ヤマトホールディングスと日本郵便は2023年6月に荷物の配送業務委託などの協業に合意。ヤマトは2025年2月までに取り扱う小型薄物荷物の配達をすべて日本郵便に委託する予定としていたが、「従来よりも配送時間がかかっている」ことなどを理由に全面委託時期の見直しを要請していたが、これに対して日本郵便は「ヤマト運輸側の一方的な事情で2025年1月から当面の間、当社への運送委託を停止することを内容とする計画変更の申し入れを受けた」とし「(協業締結時の)合意内容である小型薄物荷物の当社への運送委託についてヤマト運輸が履行義務を負うことの確認を求めるとともに、これが履行されない場合の損害の賠償を請求すべく、東京地方裁判所に損害賠償等請求訴訟を提起した」とする。
荷物の配達委託で合意も…
日本郵便とヤマトグループは2023年6月19日にいわゆる「2024年問題」や環境問題など物流をめぐる社会課題の解決への貢献を目的として、「持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意」を締結。その一環としてヤマト運輸が展開するメール便「クロネコDM便」については24年2月から日本郵便の配送するメール便「クロネコゆうメール」への切り替えを完了。
23年10月から展開を開始した日本郵便の配送網で配達する衣類や書籍などの小型荷物を日本郵便が配達先の郵便受けに投函する「クロネコゆうパケット」も25年2月をめどに自社で集荷・配送を行っている小型薄物荷物商品「ネコポス」との完全切り替えを進めてきたが、ヤマトホールディングスでは「日本郵便への配達委託を進めるなかで、従前よりお届けするまでの日数が伸びてしまう事態が発生している」とし、「お客さまのニーズに応えられない状況を解決するため、日本郵便に対して『ネコポス』から『クロネコゆうパケット』への切り替えに伴う配達委託スケジュールの見直しに係る申し入れを行い、真摯に協議を重ねている」ことを12月18日に発表小型薄物荷物の配達の完全委託の時期の見直しを日本郵便に申し入れていたことを明らかにしていた。
これに対して日本郵便は2023年の提携合意に伴い、「メール便領域および小型薄物荷物領域において協業を進め、2025年2月までに(ヤマト運輸の荷物の配達について)完全移管し、両領域の荷物の全量を当社の配達網でお届けすることとしていた」とし、「メール便領域では、ヤマト運輸が取り扱っているクロネコDM便のサービスを当初の予定どおり2024年1月31日に終了し、新サービス「クロネコゆうメール」の取り扱いを開始している。小型薄物荷物領域では、ヤマト運輸が取り扱っている『ネコポス』のサービス提供を2023年10月から順次終了し、2025年2月から全ての地域で新サービス『クロネコゆうパケット』を利用いただけるようにすることを目指して当社は最大限の準備を進めてまいりましたが、ヤマト運輸側のシステム対応やお客さま対応の遅れなどにより、
『ネコポス』から『クロネコゆうパケット』への移行は、当初計画を大幅に下回る状況が続いていた」としたうえで「小型薄物荷物領域の『クロネコゆうパケット』に関して、ヤマト運輸側の一方的な事情で2025年1月から当面の間、当社への運送委託を停止することを内容とする計画変更の申し入れを受けた。この申し入れについて当社は承諾していないが、ヤマト運輸側は合意に基づく運送業務の委託義務の存在自体を争い、一方的に当社への委託の停止を進めるべく、既に当社への運送委託の停止に向けたアナウンスや準備作業を進め、2025年2月を予定していた当社の配送網を活用した両社による投函サービスの全国展開については、予定どおりの実施が困難となる見込み」とし、「(2023年6月の協業締結時の)合意内容である小型薄物荷物の当社への運送委託についてヤマト運輸が履行義務を負うことの確認を求めるとともに、これが履行されない場合の損害の賠償を請求すべく、東京地方裁判所に損害賠償等請求訴訟を提起した」として、ヤマト運輸に対して合意内容の履行義務を負うことの確認と、履行されない場合は損害賠償として120億円の支払いを求めたとしている。
なお、ヤマト運輸は1月21日付で「クロネコゆうパケット」の全国発売開始と、「ネコポス」による全国翌日配達の継続を発表。2月1日からこれまで一部の地域で展開してきた日本郵便に委託する形で配達を行う「クロネコゆうパケット」を全国で展開するとした。一方、「ネコポス」も同日以降も継続。全国翌日配達(一部地域を除く)を行なっていくとしており、2月時点での「クロネコゆうパケット」への全面移行を見送ることを正式に表明している。