売れるライブコマースとは?ーーTikTokShop実践運営術

2025年6月に鳴り物入りでスタートした、「TikTok」のEC機能である「TikTokShop」。プラットフォーム側は「数年前に開始したイギリスやアメリカと比較しても非常に順調」と強気な姿勢を崩さないが、出店者からは「思っていたほど売れない」「安売りセラーばかりが目立っている」という不満の声も聞こえる。EC企業にとってTikTokのライブコマースは有望な販売チャネルなのか。出店者や識者に聞いた。

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事例1:ヨドバシカメラ
低単価商材でノウハウ蓄積高価格帯の販売が今後の課題

  家電量販店大手のヨドバシカメラでは、2025年11月からTikTokShopを活用している。

 ヨドバシの関連会社で、TikTokShopを運営するトレンドキャスケットの二階堂京介社長は「TikTokShop上陸前から注目しており、サービス開始後に『新しいリテールの形ができるかもしれない』という話をヨドバシの定例会議でしたら『ではやってみよう』ということになった」と出店経緯を明かす。

 ヨドバシの場合、自社通販サイトは2000億円を超える売上高を誇るものの、これまでアマゾンや楽天市場といった仮想モールに出店したことはない。なぜTikTokShopに出店したのか。「TikTokShopにはEC機能があるのは事実だが、何よりライブコマースのUIが素晴らしい。一方でフルフィルメント機能に関しては、ヨドバシが使っているものをそのままAPIで繋ぐことができる。ヨドバシの強みは何といっても物流にある。これを活かしながらTikTokShopと連携できるのではないかと考えた」(二階堂社長)。そのため「、ヨドバシ.com」の大きな特徴である「最短翌日配送」や「全品送料無料」をTikTokShopでも打ち出すことが可能となった。

 また、TikTokというプラットフォーム自体への期待も大きい。TikTokのユーザー層は10~20代が中心だが、ヨドバシカメラの発行する「ゴールドポイントカード」のユーザー層は圧倒的に40代以上がマジョリティだ。「実店舗でも若年層とのタッチポイントが作りにくい中で、ECでこういった層は『Qoo10』や『SHEIN』に流れがち。新たなタッチポイントを作りたい、という狙いもある」(二階堂社長)。二階堂社長は、数年後のTikTokShop流通額を2000~3000億円と見積もる。

 APIを活用したことで、ヨドバシの優れた物流サービスが利用できる一方、ヨドバシのポイントサービスは利用できない。価格がヨドバシの通販サイトで買うよりも、実質的に10%ほど高くなってしまうため、タイムセールで対応している。

「盛り上がり感」が大事

 これまでライブコマースには全く携わってこなかったため、ノウハウもなかったヨドバシ。スタート当初は菓子を中心にライブコマースをスタート。衝動買いがしやすい価格で、何より「全品送料無料」というヨドバシの強みを最大限に発揮できる商品ということもあり、それなりに売れたという。12月には、対象ブランドのクーポンやライブ限定特典などを提供するキャンペーン「ブランドデー」の初回の対象ブランドにも選ばれ、かなりの流通を生み出すことができた。二階堂社長も「ライブのノができれば、まさに『飛ぶように売れる』こともある」と驚く。

 もう一つ大事なのは「継続してライブを行うこと」だ。ヨドバシの場合、トレンドキャスケットのスタッフが出演していることも強みとなっている。外部スタッフを使っている場合、なかなかライブで良い結果が出ない際に継続していくのが難しくなるからだ。

 また、盲点となりがちなのが労務の問題。ライブコマースは朝と深夜が良く売れる時間帯となる。通勤時や就寝前に視聴するユーザーが多いからだ。ただ、こうした時間帯にスタッフを働かせるのはハードルが高い。「テレビ通販専門チャンネルのように100万人が視聴するのであれば、企業側もいくらでも投資できるが、現状のTikTokShopの同時接続者数は多くて1000人、中堅どころでは数十人程度。これでは24時間ライブ放送できる体制を整えるのは難しい」(同)。

フォロワー数は約 26 万人

期待値には届かず

菓子など低単価商材の販売からスタートした

 低単価商材である菓子からスタートしたヨドバシ。ライブコマースを中心に商品を販売してきたが、2026年に入ってからはショート動画からも商品が売れるようになってきており、現在では売り上げの3割程度を動画経由が占めているという。

 価格帯の高い家電の販売につなげていきたいところだが、現段階では目論見通りにはなっていないようだ。二階堂社長も「もちろん、スタート当初と比較すれば流通額は大幅に伸びているが、期待値ほどの成長かと言われると難しいライン。衝動買いしてくれるのは1000円が限度であり、現状では単価の高い商品を売るのはなかなか難しく、5000円、1万円、2万円に壁がある。特に1万円を超えると途端にハードルが上がる」と顔を曇らせる。

 二階堂社長によれば、低単価商材が中心となっているのはヨドバシだけではなく、TikTokShop全体の課題だという。「Temuで扱っているような中国系の商材が目立っている。こうした商材を扱うブランドほど経験値が高いので、このままではナショナルブランドが参入しなくなってしまう。もっとプラットフォーム自体が育っていかないとハイエンド商材を売るのは難しいのではないか」(同)。プラットフォーム安い商材があふれる中で、「正規商品を売る」ためのノウハウがセラー側に備わっていないのが実情だ。

 TikTokのアクティブユーザーが4000万人を超える中で、TikTokShopを利用しているとみられるのは1%程度。「伸びしろ」と捉えることもできるが、二階堂社長は「TikTokで買い物をする人を、プラットフォーム側がどうやって育てていくかが大きな課題。ユーザーが増えないと売り上げだけで広告費を回収することができない。現状ではまだまだ」と指摘する。

「届けたい相手」がまだいない

 今後、TikTokShopで高額商品は売れるようになるのか。二階堂社長は「先行している他国の事例では、インドネシアや台湾などで中価格帯の商材がライブで売れている。日本でもそうなる可能性は十分あるはずだ」とみる。例えばアメリカでは有名ブランドがTikTokShopのトップ層となっており、Sharkの掃除機などが売り上げトップに来るという。「小売りの構造が似ている」と言われるイギリスのTikTokShopにおいても、一定の流通規模になっていることから、「日本でもある程度期待はできるのではないか」(二階堂社長)。

 ただ「ライブコマース」というカルチャーが売る側・買う側双方に浸透するには、「しばらく時間がかかるのではないか」(同)。他国と異なるのは、日本の一般消費者が、商品品質への期待値が非常に高いこと。そのため、メーカーにとっての参入ハードルが高いこともネックとなっており、「全く広まらない可能性もゼロでなないと思っている」(同)。

 ヨドバシではTikTokShopに今後何を期待するのか。二階堂社長は「ブランドが投資する価値のあるプラットフォームになってほしい」と要望する。「本来は高額商品だからこそ、プロが説明しつつ、質問にも答えられるライブコマースというスタイルは相性が良いはず。プラットフォーム自体の価値は感じているが、届けたい相手がまだいない」。

 家電製品に関しては、美容家電やイヤホンなどのガジェット系に伸びしろを感じているという。二階堂社長は「大赤字を出さないような運営をしているが、まだまだ足りない。ただ期待はしているので、とにかく継続するしかないだろう。1年後にどうなっているかで将来性を見極めたい」と腰を据えた取り組みの必要性を説く。

本誌ではこの他、事例2 Cellest:「継続力と信用」が第一 配信はエンタメ性を重視、ULTRA SOCIAL 高橋 亮太 代表取締役 TikTok Shop は「ららぽーと」の ようなショッピングモールだ、がお読みいただけます。ご購入はこちら >>