〝偽造品〟販売めぐり製造元と販売者がアマゾンを提訴――2億円の賠償請求

 〝偽造品〟の販売をめぐりアマゾンジャパンが訴えられた。訴えたのは、医療機器の輸入、製造販売を行うトライアンドイーと同社製品を販売するエクセルプランの2社。販売するパルスオキシメーターの偽造品とみられる商品を安価に販売する事業者への対応を行わず、売り上げが減少したとして、約2億円の損害賠償を求めている。アマゾンは、「訴状が届いていないのでコメントを差し控える」としている。

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「相乗り出品」で売り上げ減少

 原告のエクセルプランは、2011年5月、トライ社製のパルスオキシメーターの商品登録を行い、アマゾンのマーケットプレイスで販売していた。コロナ禍で需要が高まった20年8月、中国企業の偽造品が販売されていることを確認したという。

 アマゾンの通販サイトは、商品ページに販売元や価格が異なる同一商品が「相乗り出品」して表示される仕組み。エクセル社が定価2万5740円で販売していたのに対し、同じ商品は2200円等で販売されていた。

 ただ、パルスオキシメーターは、薬機法上の「特定保守管理医療機器」にあたり、国内で販売するには高度管理医療機器等の販売許可が必要になる。中国企業の商品はこうした許可を得て販売していたものではなく、「偽造品」と主張している。一部商品を購入して確認した。また、トライ社とエクセル社は、独占販売契約を結んでいる。

 トライ社とエクセル社は、定価の10分の1の価格等で販売される「相乗り出品」で売り上げが減少したという。同社によると、アマゾンのシステムは、より安価な商品の評価が高いとされ、価格差が大きい商品の販売が停止されることがあるという。このため、正規品であるにもかかわらず、定価販売の同社商品はシステムの判断で出品が停止されることもあったという。

エクセルプランは出店サイトで注意喚起する。

アマゾンに対応求めるもスルー

 同社は、アマゾンに「相乗り出品」する事業者の商品の販売中止など対応を求めたが、商品ページ自体が削除されるなど、「相乗り出品」とともに販売できなくなったこともあったとしている。正規品ではない商品と顧客レビューが混在し、「日本製と思ったら中国製だった」など低評価を受けたという。レビューの削除も求めたが対応されなかったとしている。

 アマゾンにおける製品の売り上げは、20年9月から21年8月の1年で3億3600万円だったものが、直近は3540万円(21年9月~今年8月)まで減少している。

 アマゾンに出品する場合、販売許可の証明書の提出は求められない。このため、販売事業者が登録すれば、無許可でも同じ商品を販売できる状況だという。多くは許可を持たない中国企業の出品で、「偽造品」としている。

 トライ社の藤井敬博社長は、「アマゾンは偽造品対策を行っているとするが、やっていればこのような結果にならない。品質に問題のある脱法商品に相乗り出品され価格競争せざるを得ず、中小企業は太刀打ちできない」と話す。

悪質出品者対策は実施

 アマゾンは、21年の1年間で有名ブランドの模倣品などを含む不正品の販売を行う悪質出品者のアカウント開設を250万件以上阻止している。前年の阻止件数は600万件以上。同年に9億ドルを投資するなどしている。模倣品販売による規約違反の法的責任を追及する専任チームも組織する。

 また、サイトでブランド権利者向けに自動ブランド保護ツールを提供したり、知財専門の法律事務所を紹介するサービスも行う。医療機器関連の具体的な対策については、本誌掲載までに回答が得られていない。

 「楽天市場」を運営する楽天は、権利侵害品等の販売を禁止するとともに、専従の組織がブランド権利者やセキュリティベンダー、行政などの協力を得て対策。医療機器は、出店店舗がパルスオキシメーターを取り扱う場合、販売許可証の取得を確認するほか、出店者向けガイドラインで、商品ページ上に、当該商品が「医療機器」である旨を記載するようルールを設けている。医療機器の認証を受けていない商品を、診断目的・医療目的の用途として誤認を与える表示で販売することは、ガイドラインで禁じており、注意喚起やモニタリングを行う。

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