ゴルフ用品のネット販売などを行うゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)では、近年の物価上昇に伴い、手ごろな価格の中古ゴルフクラブなどを中心に販売が伸びている。集客面ではリアルで展開するゴルフレッスンスタジオと連携した顧客への最適な商品提案を本格展開。加えて、アプリ経由でのアプローチの拡大やEC内で展開するスタッフコンテンツの拡充も進んでおり、コンバージョン率の向上に成果が表れているという。同社が描くゴルフ用品EC市場での成長戦略に迫る。
4つ中古クラブが販売けん引 物価高のニーズを捉える
新品・中古ともゴルフクラブ価格は上昇傾向
――2025年12月期を振り返って。
我々自体はほぼ横ばいの結果でした。ただ、ゴルフ用品の市場全体で見ると、若干、横ばいよりも少し下降傾向にあったと聞いています。前年比95~100%の間くらいの微減の状況だったようです。
――カテゴリー別の状況は。
好調なのは中古品です。中古(クラブなどのゴルフ用品)は2桁増になりました。やはり、新品の単価が上がっているため、その分中古品に流れている傾向はあると思います。一方で低調だったのがゴルフウェアです。アパレル系のカテゴリーが前年より落とした分、ゴルフクラブなどでカバーしている構造です。市場全体ではゴルフクラブも前年よりかは少し落としており、ウェアの方も落ちたと聞いています。
――売り場別の状況で見ると。
大手モールなどECの方はリアル店舗よりも苦戦しているように感じます。やはりリアル店舗の場合はまだまだインバウンドの影響がプラスにあるため、その分、ECよりも少し底上げができているのでしょう。おそらく円安の影響で、日本でのゴルフクラブやウェアに対して割安感があるのではないでしょうか。
――ゴルフクラブの価格推移について。
昨年の新品クラブ価格は、平均で10%程度は上がっている印象です。その中で努力して価格を上げていないメーカーもあり、そうしたところは好調ですが、どうしても単価を上げているところは金額ベースではそこまで変わらなかったとしても、販売本数では下がってきている面があります。
買い替え頻度で見るとドライバーの割合が多いので、そうしたドライバーの単価上昇と顧客単価のアップは即時に反映されています。元々が数万円くらいする商品なので、10%も価格がアップするとなると影響は大きいです。
――ゴルフクラブの価格推移について。
どうしても買取価格が上がっている分、販売価格も上がる状態です。とはいえ、中古の場合は2、3年前の古いモデルがあるため、そういったものはお手頃価格で買えるので、実際の購入単価としては新品と比べるとかなり低くなります。
当社では(ゴルフクラブの購入と同じタイミングで手持ちのゴルフクラブの買い取りを行い、買い取り額との差額で決済する)『下取り割』サービスがありますが、この利用率がかなり上がっています。基本的に売って買うということを同時にする顧客が増えている印象があり、また、購買履歴を見ていると、2本売って1本買うといったように、買う本数よりも売る本数の方が多いケースが見られています。
――顧客層の変化は見られますか。
(三密回避でゴルフが流行った)コロナ禍では女性や若年層が増えましたが、2025年に関しては、その層自体が若干減っている印象です。50~70代の層は変わらず維持していますが、40代以下の少し若い層が男女問わず減ってきました。これまではそうした若い層が単価の低いウェア類などを購入していましたが、それが減りました。今はウェアに関して選択肢がかなり広がっています。アンケート調査のデータを見ると、若い人ほどファストファッションの服をゴルフ用としても着ていて、そこで節約しているのではと感じます。いわゆるゴルフブランドの専用ウェアを買わないで、使い分けをしている印象です。
加えて、今は新興のD2C系(スポーツファッション)ブランドなどが増えてきたのでそうしたところに流れている傾向はあると思います。当社としても、国内だけではなく、海外のブランド、今だと韓国ブランドのように新しい商品も取り扱うようにして選択肢を広げています。
メルマガの配信頻度や内容を調整
――集客でテコ入れしているものは。
直近ではメルマガの出し方を少し変えるようにしました。今まではチラシのような形で毎日メルマガを発信していましたがその頻度を減らして、1つずつのメルマガのメッセージであったり、コンテンツや伝え方を大幅に変えています。顧客によっては毎日届くことを歓迎しないケースもあると思いますので、適切な頻度でコミュニケーションを取るという大前提のものです。
当然、送る頻度が落ちると伝えられる情報量も減ってしまいますが、そこはメルマガではなく、アプリのプッシュ通知を強化しています。いわゆるシナリオで出すようなものやセール告知などは、基本的にはアプリの方に寄せて、頻度よく来店してもらう。メルマガは大型キャンペーンの告知であったり、ブランドの商品リリースのタイミングに合わせた訴求というように、使い分けています。そのため、今はアプリでの集客がかなり伸びました。
――アプリ通知で反響が高いものは。
やはりセール系は動きがあります。あとは、例えばカゴに入っている商品の在庫が残りわずかになった際の通知や値下げ情報など、こうしたパーソナルな接客やコミュニケーションはかなり引きが強くなります。
現在の国内事業のゴルフ用品販売の売り上げの内、35%ぐらいがアプリとなり、この比率も少しずつではありますが、年々高くなっています。今はアプリ自体のUIも変えて通知が見やすくなるように改善しています。
フィッティングから個別に最適商品を提案
――リアルと連携した集客施策としては。
昨年からは「GolfTech」というレッスン事業との連携強化を一つのテーマとしています。基本的には1to1のレッスンで、コーチと生徒の関係性は非常に高いです。レッスンはゴルフの上達を支えることも大きなテーマですが、どのような道具を使えば良いかという提案も一つあります。例えば、クラブフィッティングなどについて扱えるブランドの品数を増やしていて、フィッティングのノウハウなどもメーカーさんと協業してコーチにインストールし、販売を伸ばしていく取り組みです。
メーカーさんによって製品の設計思想みたいなものがそれぞれ個別にあるので、接客のためにはそうした製品特性を理解する必要があります。コーチはレッスンを通じてフィッティングしながらこのタイプの人にはこのヘッドとシャフトの組み合わせが向いているなどの提案ができます。
これまではフィッティングできる商品の数が少なかったりECからの導線もなかったのですが、今は各メーカーのメイン商品などは取り扱うようにしています。また、特に新商品が発売された時のニーズは高いのでランディングページにテックの特集を入れたり、ECから誘導していくことができています。当日買うこともできれば、後にECからの購入もできますので、昨年以降、フィッティング体験を経由したクラブ販売はかなり伸びています。教えてくれるコーチが勧めてくれるということで、やはりその関係性は(購買への結びつきが)強いと思います。
カスタムクラブが好調に推移
――2025年秋から年末にかけてECも含めた物流について、大手宅配各社で遅延が生じましたが、その影響は。
影響は受けました。11月にブラックフライデーのセールが各社であり、当社も行っていましたが、ちょうど11月末~12月初旬にかけて配送に遅延がありました。通常は2~3日で届くような配送が、1週間近くになってしまいました。ただ、これについての対策として、我々の中だけでできることは非常に限られています。配送業者からは今後への対策なども聞いてはいますが、やはりこの時期に需要が集中すること自体は大きく変わらないと思います。
そのため、(この時期は)遅れる前提を顧客にも伝えながら販売していく必要があります。一方で11月末に売り上げを集中させない方が良いのではという話もありますが、どうしても一番盛り上がるタイミングに我々だけが何もしないこともそれはそれでリスキーです。基本的には顧客への告知を強化しながら整備していくという形になるのではないでしょうか。
特に12月はゴルフコンペが多い時期でもあるので、(商品到着が)間に合わない人たちはキャンセルになってしまうケースもあり、迷惑もかけてしまいました。できる限り(販売が集中する)山を平坦にしていくことが、セールの内容も含めて変えていかなければなりません。ただ、ブラックフライデーで見ると、11月初旬ぐらいからセールを始めているところもかなり増えてきたので、今後は(受注の山が)平坦になっていく可能性は十分にあります。
――今期(2026年12月期)の優先順位が高い取り組み予定は。
まずは中古を含めたクラブの販売を伸ばしていくということです。その中でも「カスタムクラブ」は強化したいと考えています。カスタムクラブは在庫品ではなく、メーカーさんにオーダーしてから組み立ててもらうものです。クラブは基本的にはヘッドとシャフトの組み合わせですが、メーカーさんが在庫として用意している組み合わせと、そうでない特注品のような形でカスタム品があります。今までのカスタムクラブは、実店舗などでフィッティングしてからの注文という買い方が主流でしたが、ECでもそうしたオーダーができるように今は整えています。我々の中で品揃えを増やしてカスタムクラブの幅をかなり広げているところで、結果として売り上げも高まっています。あとはECでの選びやすさや買いやすさを改善していきたいです。
――EC上でカスタム注文が完結できるのですか。
基本的には組み合わせを一つずつ商品別で作っていくような形で、商品一覧の中でカスタム品と在庫品が並んでいるような状況です。例えば、「カスタム」と表記されている商品を選択すると、シャフトなどの種類を選べるようになっています。このバリエーションが増えていて、お取り寄せみたいなイメージでもあります。
今はユーチューブなどの影響もあってか、カスタムクラブの情報を得るソースがかなり増えてきました。顧客自身がシャフトの情報などにかなり詳しくなってきています。自分に合ったものを選びたい、試したいという意欲は昔よりもかなり強くなっていると思います。今はこれがうまく売り上げにつながっているので、ここはもっと強化していきたいです。
そしてもう一つは、ゴルフウェア販売の課題を解決したいと考えています。前述の通り、昔は特価品のようなアウトレットのゴルフウェアが我々の強みでもありましたが、そういった商材が市場から減ってきているので、そこには頼り切れない面があります。そのため、改めてプロパー商品の魅力を伝えて販売するところに力を入れていきます。今はコンテンツや商品の見せ方の改善を行っているところで、特にコーディネートでの見せ方を考えています。
最近はセットアップで着用するウェアも増えていますが、今のサイトでは商品検索がカテゴリー検索になっているため、ポロシャツはポロシャツの売り場、パンツはパンツの売り場と別れてしまっています。このポロシャツに対してセットアップのパンツはどこかという形で探せません。メーカーさんのイメージとしては対(つい)になる商品同士を一緒に提案したいと思うので、そこをうまく今のサイトの中でも提案できるように、データとして紐付けて接客できるようにしたいです。
――そのほか拡充しているところは。
スタッフコンテンツには力を入れていて、ECサイトの下のコンテンツのところで、当社のバイヤーや販促担当者が自分たちで写真を撮って投稿し、コメントを入れています。これを見てくれる人が結構いて、ここの情報から商品が買われる場合も少なくないです。特にカテゴリーは絞っておらず、アパレルのバイヤーからギア(ゴルフ道具全般)のバイヤーまで様々いるため、制限をかけずに行っています。
ファッションのコーディネートやスタイリングというよりかは、商品を試してみた感想などの使用感を伝えています。やはり、本当に商品を一番分かっているのはバイヤーであり、そうした人達から見て、一般的に誰もが知っている商品だけではなく、「こんな商品があるのか」という発見につなげてもらえればという感覚でもやっています。ゴルフをするスタッフはたくさんいるので、投稿するメンバーは今後も増やしていきたいです。
――今期の国内販売の計画は。
前年比で5~7%くらいは伸ばしていきたいと思います。やはり、中古品、カスタムクラブ、ウェアの3つが鍵となるでしょう。
坪井春樹(つぼい・はるき)氏
カタログ通販会社で商品調達の経歴を経て、2012年にゴルフダイジェスト・オンライン入社、リテールビジネスユニットにて商品部にて在庫管理、バイヤー職を担当。その後、企画部に異動し、販促マネージャー、企画部部長を歴任。2022年よりユニット長に就任。
◇ 取材後メモ
ゴルフ用品市場にも物価高の大きな波が押し寄せています。とりわけ、主力商品であるクラブの値上がりは大きな課題です。そうした中で始まった同社のレッスンスタジオとECの連携は、利用者の購買意欲を高める効果的なシナリオとなって機能しているようです。スイング解析なども活用しながらデータに基づいた最適な商品提案は、顧客にとっては何よりも説得力があるもの。1本のゴルフクラブにかける買い手側の想いやこだわりがますます強くなる中で、最高の出会いをサポートする仕組みと言えるでしょう。今後もGDOが仕掛ける多面的な顧客アプローチに注目です。