ケンコーコムは、2013年1月1日付でアマゾンとのフルフィルメントサービス(ドロップシップ)契約を解除することを明らかにした。ケンコーコムのドロップシップ事業で、アマゾンは有力なパートナーと言えるが、ケンコーコムによると、アマゾンの自社仕入れ商品拡大に伴い、ケンコーコムで扱うネット販売商品との競合が激化していたため、契約の解除を持ちかけたという。ケンコーコムでは、“自社の経営判断"であることを強調するが、周囲からは、楽天の意向を取り沙汰する声も聞かれる。
ケンコーコムとアマゾンは、2005年11月にドロップシップサービスの契約を締結。ケンコーコムがアマゾンの顧客の注文した自社取扱商品の一部について、アマゾンへの卸販売および梱包や出荷などのフルフィルメント業務を受託するというものだ。
ケンコーコムによると、アマゾン側が商品の自社仕入れ商品の販売を進めるのに伴い、自社ネット販売で扱う商品との競合が拡大していたため、アマゾン側にドロップシップ契約の解除を打診。9月27日に開催した取締役会で来年1月に契約を解消することを決議したという。
一方で、すでにアマゾンとの取引縮小を進めており、ケンコーコムが毎月公表している月次情報によると、ドロップシップを含むその他事業の売上高は、8月度が前年同月比0・7%減の1億4200万円、9月度は同16・0%減の1億3200万円と減少。今後、さらにアマゾンとの取引を絞り込んでいくようだ。
ケンコーコムのドロップシップ事業の売上高は2012年3月期で14億8100万円(前期比13・7%増)。増収ではあるものの、豊富な品ぞろえや自社物流機能という自社の強みを活かした新規事業として考えると、規模的な物足りなさもある。その中でアマゾンとの取引のウェイトは大きかったと見られ、今回の契約解除によるインパクトも小さくはないはずだ。
ケンコーコムでは、ドロップシップ事業の拡大を図る方向性に変わりはないとし、今後、同事業のパートナー企業の開拓を進める考えのようだ。
アマゾンとのドロップシップ契約の解消についてケンコーコムは、あくまでも自社の経営判断であることを強調するが、一方で、他のネット販売関係者の間では、アマゾン追撃の構えを強める親会社の楽天の意向が働いたのではないかという見方があるほか、「ケンコーコムのドロップシップを使って『楽天市場』の出店事業者の獲得を進めるのではないか」といった声も浮上している。
こうした声は憶測に過ぎないが、今後、ケンコーコムがどのような形でドロップシップ事業を展開していくのか、注視していく必要はありそうだ。