「市場は拡大する」が8割占める――通販実施各社に聞く、今後の通販・EC市場とは?

 本誌姉妹紙・通販新聞は7月、通販(EC)実施企業を対象に、今年下半期以降の通販市場の予想、景況感についてのアンケート調査を行った。その結果、「拡大する」と回答した企業の割合は78%にのぼった。コロナ禍による通販の利用増が今後も一定程度継続するとの見方のほか、ワクチン接種が進むことによる景気回復効果が通販市場にも好影響をもたらすのではとの回答が目立った。一方、足元の消費動向には「横ばい」とする回答が半数を占めた。

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コロナ機に通販利用増が定着

 本紙は主な通販実施企業約600社を対象に7月に実施した通販通教売上高調査に合わせてアンケートを実施した。

 まず、「2021年下期以降の通販市場について、どのように予想していますか」と質問し、「拡大する」「横ばい」「縮小する」の3つの選択肢の中から選んでもらった。その結果、有効回答数のうち、「拡大する」と回答した企業は78%を占めた。「横ばい」は13%で「縮小する」は9%だった(8ページのグラフ参照)。

 「拡大する」と回答した事業者を多くはコロナ禍をきっかけに増えた通販利用が定着し、それが市場拡大に今後も寄与していく、との意見だ。

 「コロナによる通販利用の定着により、通販市場自体は維持・拡大すると思う」(GSTV)や「コロナによって通信販売の利便性・安全性が高く評価され、それは今後も一定は定着すると想定されるため」(ジュピターショップチャンネル)、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、ECの購買行動のハードルは下がり、マーケット全体の裾野が広がったと捉えているため」(オイシックス・ラ・大地)、「新型コロナの状況が先を見通せない中にあって、引き続きインターネットによる情報収集~購入の消費行動は変わらないまま増進するとみられるため。また、一度、アカウントを作成して通販を使用すれば、その利便性は手放せないことからも、アフターコロナも引き続き通販市場は勢いが落ちないのではないか、と期待している」(大網)などの回答が多かった。また、「新規参入者が多いから」(世田谷自然食品)などコロナ禍による通販市場への新規参入事業者の拡大が起因するのではという意見のほか、「いまだにコロナに対する決定的な対策がないため、健康食品や通信販売の需要は継続的にあると思う」(ちゅら花)、「長引くコロナ禍における先行き不透明な状況ではあるが、デジタルシフトは継続し、持続的な成長を維持できる」(マガシーク)などの意見もあった。

 「横ばい」と予測した事業者の意見で目立ったのは、通販の利用増は継続するもののコロナの収束により、巣ごもり需要が減少していくことで昨年までのような特需は見込めないとの見方だ。

 「ワクチン接種の普及により、コロナが収束に向かい、店頭での需要が回復傾向となり巣ごもり需要による消費がやや減少する。これまで拡大傾向ながらも一時的に横ばいになる」(アイム)、「外出時間が増え、お店での購入が増加すると予測。通販については、コロナ禍での特需が徐々に収まり、通常に戻ると予想」(ヒラキ)などといった回答があった。

 「縮小する」と予測した事業者の回答では「コロナに起因する需要増が落ち着きをみせる可能性があるため」(ロッピングライフ)などコロナ禍での通販特需がコロナの収束でなくなり、それにより市場は縮小するという回答が多かった。

現状の消費は「横ばい」

 アンケートでは次に「現状の消費の動向をどう捉えていますか」と質問し、各社に「上向いている」「下がっている」「横ばい」の3択で回答してもらった。その結果、「横ばい」が50%と最も多く、「下がっている」は29%、「上向いている」が21%となった(9ページのグラフ参照)。

 最も多かった「横ばい」の選択理由ではいまだ続くコロナの感染拡大というマイナス要因とワクチン接種などが進み、全体的に消費意欲が上向きつつあるプラス要因がせめぎ合う現状を踏まえた回答をした企業が目立った。

 「外食、旅行、イベント関連の需要は落ち込み、消費スタイルは変化したものの、巣ごもり需要の増加によって自炊、生活家電、オンラインサービスに関連する消費が大きく伸びており、消費行動は変化していないため」(北の達人コーポレーション)、「現在、コロナウイルスのワクチン接種の順番待ちやオリンピック開催による不安などから現状の消費動向は横ばいになっている印象を受ける。ワクチン接種率の上昇やオリンピック、パラリンピックの終了に伴い、2021年下半期以降は全体的に経済が回復し、ネット通販に関しても状況が今の状況より良くなるのではないか」(プラグイン)などの回答のほか、「店舗の売上減少の一方、通販の売上増加」(ヒラキ)、「アフターコロナの消費環境、市場が見通せない」(ベルネージュダイレクト)などの回答もあった。

 次いで多かった「下回っている」はコロナの影響を挙げた回答が大半を占めた。

 「新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、先行き不安が増大」(ニッピコラーゲン化粧品)、「店舗の売上がマイナスしている分、通信販売が伸びているが、全体の消費は落ち込んでいると捉えている」(JALUX)、「政府による消費喚起政策やコロナウイルスの段階的な鎮静化により、一時期と比べて消費動向は回復の兆しを見せているものの、コロナ前と比べては依然、低水準での消費が継続しており、先行き不安からの消費抑制・貯蓄増が予想されているため」(オイシックス・ラ・大地)、「先が見えない状況が予想以上に長引いていることから、消費動向は全体的に低調と見ている。リベンジ消費を大きく期待できる状況にはない」(田中貴金属ジュエリー)などだった。「上向いている」を選んだ企業からは「昨年から新型コロナウイルスが蔓延しているが、流行初期と比較すると上向いている。自粛を余儀なくされている中で、『禁止・自粛』という視点から『今の環境をどう楽しむのか』という視点に消費者全体の意識が変化したと考えている」(えがお)、「自宅で過ごす時間が増えたことにより、様々な形のエンターテインメントによって『楽しむ』時間を求める傾向がある。『鑑賞』『作る』『遊ぶ』などのキーワードを持つホビー商材(フィギュア・プラモデル・ゲーム)などはその需要を満たすものであって、ある程度自分のお金を自由に利用できる社会人世代にも人気の高い分野であることから、消費は上向きであると考えている」(大網)などの回答があった。

コロナ禍による市場への影響は

 まだまだ収束が見通せない新型コロナウイルス。とはいえ、ワクチン接種も進みつつあり、今後、消費者の生活様式も再び大きく変化する可能性がある。通販・EC各社は今後の通販市場がどのようになっていくと観測しているのだろうか。これについても各社にアンケートで尋ねた。

 「コロナが落ち着いても通販市場の活況は続くのではないか」(世田谷自然食品)、「『健康であることの大切さ』や『通信販売の利便性』等、新しい生活様式の中で消費者が感じた『メリット』は必ずある。そのため、コロナウイルスの影響で市場のブレは多少あるとは思うが、大きく市場が縮小することはないと考えている」(えがお)、「アパレル等、一部商品の通販離れ、リアル店舗回帰は起こるものの、ECでの購入体験とその優位性(商品・価格・サービス)は浸透しており、通販市場規模は伸び率の鈍化はあれ、拡大基調が続く」(ベルネージュダイレクト)、「コロナ前の消費行動に段階的に戻ると想定するものの、EC経由の買い物スタイルの広がりは不可逆なものであり、今後も加速すると想定する」(オイシックス・ラ・大地)など、通販市場の今後の行方について楽観的な意見が多かった。

 一方で「withコロナの世界がある意味、日常になっていくだろうが、その分、特需は見込めなくなり、売り上げも落ち着くと考える」(ロッピングライフ)、「コロナにより通信販売の利便性・安全性が高く評価され、それは今後も一定は定着すると想定される。一方でコロナ収束後にはリアル店舗での購買や旅行・レジャー等の消費も伸びることが見込まれるため、顧客層や商材によっては影響を受けると思われる」(ジュピターショップチャンネル)といった回答や、「ワクチン接種率が上がれば外出自粛や緊急事態宣言の発令等による消費マインドの冷え込みの反動があると想定。その時に消費者の購買行動の変化に合わせた新しいショッピング体験の提供が重要」(マガシーク)、「過去にも社会情勢の変化や消費スタイルの多様化によって、新たな需要が生まれてきたように、アフターコロナではまた様々な分野で新たなビジネスが生まれると想像している。特にコロナ禍で自粛を強いられた分野、サブスクリプション系、顧客の利便性が更に向上するサービス等に影響があると考える」(田中貴金属ジュエリー)などとみる回答もあった。

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