ニトリホールディングスでは、ニトリ事業における前期の通販売上高が前年比1・5%増の716億円となり、コロナ禍で店舗事業が同7%の減収となる中、増収を維持した。巣ごもり需要で大幅な増収となった前年をさらに上回る結果となり、前々年との比較では60・1%増と伸長している。需要の一服感が懸念される家具・インテリア市場において、継続して通販需要を獲得することができた同社の取り組み内容を見てみる。
同社の通販事業の拡大を支えた要因の一つには、前年に引き続き、実店舗とECの併用を促すアプリの会員数増加がある。お気に入り商品情報やポイントなどを実店舗とECで共有できる同アプリの会員数は、今年2月末時点で前年同期比44・7%増の1314万人に拡大。当初予想を超えるペースでの成長となった。今期末には1600万人の達成を目標にしており、引き続き買い物時の利便性向上を図っていく。
そして、顧客とのリアルタイムでのコミュニケーションを狙った、インスタライブも昨年から開始している。
第1回目の放送(12月9日収録)では都内の実店舗から配信。展開中だった実店舗・EC共催の商品値下げ企画や家具配送無料企画と連動したもので、店内を歩きながら次々と対象商品の中からおすすめを紹介していった。中にはビーズソファーなど、向きを変えて使うことで2種類の座り心地が体感できる様子を出演者が実演しながら解説。生地の触感など、ECでの静止画像だけでは表現が難しい細部まで紹介していった。
初回以降は、新生活をテーマにした「リビング編」「寝具編」「収納編」や、「花粉対策グッズ」「韓国インテリア」といった商品ジャンルごとに切り分けた内容でも動画を配信している。
今年2月末時点で合計9回実施しており、これまでに配信した動画については通販サイトの特設ページの中でアーカイブとして掲載。動画だけでなく「インスタライブ紹介アイテム」として商品画像を一覧で掲載しているページ(画像)もあり、ともに接客コンテンツとして活用している。
IT人材確保へ新会社を設立
なお、同社では4月1日にIT・デジタル部門のグループ会社として「ニトリデジタルベース」を設立した。
もともとニトリでは製造物流IT小売業として、自社で内製化したシステムを通じてビジネスモデルを運営している。今回、社内で持っていた情報デジタル部門を丸ごと移管して分社化し、新会社として設立した。
開設に当たっては「情報関連の人材は取り合い。従来のニトリの賃金体系ではなかなか対応できない。逆にうちの人間をスカウトされてしまう」(似鳥昭雄会長)と説明。従来のニトリとは別組織の会社に分けることで、賃金体系を柔軟に変更。成果に応じてより高い水準の報酬となる制度となっているほか、フレックス・リモート勤務も導入。職場環境などを手厚くした新会社として運営することで、IT・デジタル人材、データサイエンティストなどで優秀な人材を国内外から確保していく狙いがあるとしている。
同日よりキャリア採用の募集も開始しており、4月27日には開業予定のニトリ新店舗「目黒通り店」に併設する形でオフィスを設ける。
事業内容については、バリューチェーンの効率化や、グローバル事業での大規模なプロジェクトなどを予定しているほか、デジタルトランスフォーメーションによる新たな購買体験の提供なども対象となっており、今後、何らかの形でEC事業と関わっていくことも考えられる。
そのほかの取り組みとしては、昨年に連結子会社化したホームセンターの島忠との連携については、島忠で手薄とされていたPB商品の共同開発が進んでいる。今年3月20日時点で約400SKUの開発がすでに完了し、加えて、3100SKUを開発中。目標まで約21・9%の進捗率となっている。
さらに、実店舗ではニトリポイントが「島忠・ホームズ」で買い物の際にためて使えることができるようになっているが、島忠の通販サイトでの付与や利用についても、準備ができ次第、運用を開始することを明言した。