航空事業などを手がけるANAグループは1月31日、仮想モールの「ANA Mall」を開設した。同グループではコロナ禍で航空ビジネスを巡る環境が変化する中、2021年より非航空事業の強化に着手。新たな収益の柱の一つとしてEC事業に注目し、今回のモールではANAマイレージクラブ会員をメインターゲットとした、マイル活用ができる内容で運営していく。
同グループでIT事業などを手がけるANA Xは昨年10月にANAグループのサービス利用でマイルを貯めて使うこともできる「ANAマイレージクラブアプリ」を、各種サービスの入り口となるゲートアプリとして刷新。今回、そこにモール機能を加えることで、会員が日常でマイルを使える機会を拡大した。
以前より、同グループでは子会社などを通じて「ANAショッピング A‐style」や地域の名産品を扱う「TOCHI‐DOCHI」など複数の通販サイトを運営。しかし、これらの通販サイトがグループ内で点在する形での運営であったためそれぞれ個別のマーケティングとなり、集客導線もばらばらとなっていた。また商品の選別や調達も含めてグループ内の範囲にとどまっていたため、展開できるラインアップには限界があったという。今回は既存の5つの通販サイトを同モール内に集約することで集客導線を効率化。合わせてモール型として他社の出店も募ることで品ぞろえを拡大していく。1月31日の開設時点では20万SKUを超える商品を提供できるようになったとしている。
先行する他のモールとの差別化のポイントとしては、エアライングループならではの旅と関連した特典がある。一つにはANAカードで15万円分の買い物をすることで、対象路線の中から通常のマイル数より少ないマイルでANAの航空券が利用できる「今週のトク旅マイル」の国内線片道航空券と交換することが可能。一例として、2月1日の搭乗分の企画では羽田発熊本行きのチケットが3000マイル(約15万円分の購入)で交換できる。
また、顧客層となるマイル会員の購買力の高さも出店開拓に当たっての強みになるとしている。現状、約3800万人のANAマイレージクラブ会員を有しているが、その属性としては首都圏在住者が半数以上を占め、世帯年収が1000万円以上の人が約50%を占めている。
加えて、同社によると2000円~3000円が一般的となるECの購入単価と比べ、既存のグループ直営の通販サイトでは平均1万円以上と高くなっている。必ずしも高価格帯の商品だけを揃えているわけではないものの、比較的高所得の顧客がメイン層となるため、出店者に対してはこうした優良顧客にアプローチできる売り場であることをアピールしている。
顧客に対しては、貯めたマイルを余すことなく使えるポイント施策で訴求。一般的に、航空券とマイルを交換する場合、相当なマイル数を貯めることが必要であるため、航空機のライトユーザーにとってはマイルを活用するシーンが限られていた。しかし、買い物という日常使いでも使用できる場を広げることで、行き場のなかったマイル活用が活性化すると見ている。
オープニングの販促企画としては、2月28日までの期間中、新規登録や購入額などの各種条件達成で最大1500マイルが貯まるキャンペーンを行う。
なお、モールの運営や出店者開拓はANAXが担当。モール開設時点の出店者としてはグループ内の全日空商事やANAケータリングサービスをはじめ、外部の企業ではアンファーや日テレ7、DINOS CORPORATION、〓島屋など合計23店舗がある。来年度中にはこれを100店舗まで拡大する考え。
出店コストについて、定価の料金プランの一例としては「大型ショップ(1万商品~)」のプランの場合、初期費用が15万円、月額出店料が5万円、そのほか月間売り上げに対する販売手数料が必要。販売手数料については100円当たり1マイル付与の費用や決済手数料が含まれた内容となる。