シヤチハタ DtoC事業を拡大

 シヤチハタがDtoC事業を拡大して実績を上げている。自社通販サイト「シヤチハタオフィシャルショップ」(写真)の売上高は前年比30%増と成長している。

 自社ECの取扱商品数は1000点以上。主力商品「Xスタンパー」はインキを内蔵したスタンプ台不要の浸透印で、ロングライフ商品のため買い替え需要は少ないものの、補充インキや、印鑑のボディを着せ替えることができる専用パーツなど関連商品の需要も高く、会員登録後はリピーター化する傾向が強いという。

 「自社ECは定価販売だが、メーカー直販の安心感や自社EC限定商品を評価していただいている。実際、外部の仮想モール公式店よりも倍以上の実績がある」(同社)とする。

 ビジネス用途のイメージが強い同社だが、近年はDtoCの比率を高め、ニーズを確認するための新規顧客層を開拓している。特に好調なのがデコレーション用スタンプパッドなどの商材で、全体の転換率は1・5~2%と高水準を維持。会員数はSNSキャンペーンの登録者なども含め全体で約120万人を突破した。また、5月からは会員制度に4段階のランク制を導入。商品購入やキャンペーン参加、レビュー投稿などのミッションを達成すると、ランクに応じてポイント付与率を最大5%とするなどの特典を付与している。

 自社ECの運営は、社歴は浅いものの経験豊富な中堅社員が中心的役割を担う。

 「商品数も多いため、社内では常識化している情報でも一般消費者に近い視点で見ると分かりにくい部分もあった」(同社)とし、バナーの配置やカテゴリーの整理、コンテンツの訴求方法など、サイトの使い勝手全般を改善。リアルイベントと連動したコンテンツも用意し流入率を高めている。

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「リップ型」がヒット

 自社ECを起点に新たなヒット商品も誕生している。22年11月には、リップ型ネーム印「LIPIN(リピン)」を応援購入サービスMakuakeにて先行販売し、応援購入総額は約1170万円を達成した。目標額を大きく上回る成果を受けて23年5月からは自社ECで一般販売を開始。販売好調のため販路を拡大し、同年12月からは国内流通でも取り扱いを開始した。「リピン」は本物のリップようなピンクゴールドの容器で、口紅を出すようにスティックを回して使用する特長が女性層に受けた。「自社ECでテスト販売ができるので、ニーズを確認した上で販路拡大できる点がメリット」(同社)。自社EC限定で販促品を付けるなど、購入意欲を高める取り組みも行っている。

 また、市場に定着した「文具女子」を背景に、スタンプデコレーションブランド「Shachi・iro」も好調に推移。特に、日本の伝統色を採用した油性顔料系インキのスタンプパッド「いろもよう」は独自技術による速乾と鮮明な印影が特長。色数も豊富で、新色が出ると「即買い」する熱量の高いコレクターの獲得にも成功している。

 配送面では、商品の企画段階からコンパクト化を推進している。「自社ECを開設するまでは一般消費者向けに個別配送をする仕組みが社内になかったので、物流部門と密に連携して最適化に取り組んできた。なるべくメール便を利用するため、パッケージも大きくならないよう工夫をしている」(同社)とし、自社ECでは厚みのある既存商品などをメール便で発送できるサイズに作り替える「テスト設計」を実施。軌道に乗った段階で国内の取引先にも商品を展開していく考え。

 前期(2023年6月期)の売上高は前年比増の177億円で着地。今後も幅広く商品展開をしていくためにもDtoCの構成比を高めていきたいとしている。

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