家電量販店のノジマは10月16日、家電、パソコンなどを取り扱う通販サイト「PCボンバー」を展開するアベルネットの株式を取得し、子会社化すると発表した。ノジマでは近年、通販サイトを刷新し、ポイントを店舗と共通化するなどネット販売の強化を進めている。ネット販売で実績のあるアベルネットを傘下に加えることでサイト運営のノウハウなどを吸収し、売り上げを伸ばす狙いだ。
ノジマはアベルネットの発行済み株式の48・5%を、創業者の一人である渡邉健次氏から5億8100万円で買い取る。アベルネットの2012年2月期売上高は264億400万円、営業利益は3億1600万円、経常利益は3億200万円、当期純利益は1億7600万円だった。
アベルネットでは店舗も展開しているが、売り上げの大半は通販となっており、前期通販売上高は252億4400万円。一方、ノジマの2012年3月期通販売上高は122億7500万円で、合算すると約375億円となる。
ノジマでは「今後のネット販売戦略など、詳しいことは決まっていない」(同社)としているが、ノジマの「ノジマオンライン」とアベルネットの「PCボンバー」は今後も別サイトとして事業を展開するものとみられる。
アベルネットは1998年から通販サイトを運営する老舗のネット販売企業で、価格比較サイト「価格.com」で常に上位に入る価格訴求商法で業績を拡大してきた。そのため、同じ商品でもノジマオンラインよりもかなり安い価格で販売しているケースは多く、例えば、ソニーの55型液晶テレビ「BRAVIA KDL―55HX850」の場合、PCボンバーは最安値とほぼ同額の16万5249円で販売しているが、ノジマオンラインでの価格は24万8000円(4960ポイント還元)となる(価格は10月22日現在)。
この価格差は、両社の仕入れルートの違いから生じているものだが、今後両社がどのような価格設定をしていくのかは不明。ある業界関係者は「上場会社の傘下入りすることで、アベルネットへの家電メーカーの締め付けは厳しくなるのではないか」と推測する。つまり、これまでのような過激な安値戦略は取りにくくなる可能性もある。
一方でアベルネットは、ノジマの傘下に入ることにより、生活家電や小物など定番商品の仕入れが潤沢になるというメリットがある。今回の提携は、安値戦略で成長してきた独立系家電通販会社の限界を示したものともいえそうだ。