適格消費者団体(適格団体)のインパクト勝ちだろう。タイミングが重なった「ライザップへの申し入れ」と「全日本通販への措置命令」。ともに景品表示法違反を問うが、知名度が圧倒的なライザップの問題は多くのメディアが一斉に報じた。一方、「ダイエット健食への処分は続いており、意外感が全くない」(業界関係者)。行政はインパクト重視で動くわけではないだろうが、一罰百戒の影響力も必要。さまざまな制約の中で法運用する行政と異なり、市民感覚で伏線なく切り込んでくるものほど怖い。適格団体が企業にとって怖い存在となる日もそう遠くなさそうだ。
「(消費者から)相談受けて、おかしいんちゃうのと。やめようとすると難癖つけて1カ月でやめられない。5、6カ月経っても成果がでない。国センに問い合わせたら苦情もあると。インパクトのあるテレビCMで景表法上、問題あるのではないかと思い議題にした」。全国に13ある適格団体の一つ、ひょうご消費者ネットの山崎省吾理事長(弁護士)は、ライザップを問題視したきっかけをこう話す。
適格団体は、何でもかんでも問題にできるわけではない。普通の消費者団体と異なるのは、国の認定を受けている点。これにより、景表法や特商法、消費者契約法に基づく「差止請求権」を行使できる。
構成メンバーは消費者問題に熱心な弁護士や消費者生活相談員。厳密な認定を伴う法運用が必要な行政と異なり、より”消費者目線”を重視する。だから大々的なテレビCMの展開で目立つなど、社会的に注目されそうな案件がターゲットになりがちだ。
過去には、別の適格団体が”ぐるぐる”で知られる世田谷自然食品のテレビCMに申し入れを行っている(昨年5月、CMの一部変更で決着)。最近でも京都の適格団体がサン・クロレラ販売のバイブルチラシに差止請求を行い訴訟に発展。今年1月、適格団体の勝訴を受け、控訴審の最中にある。
ライザップの場合も、きっかけは冒頭の相談。団体内で協議し、景表法違反の蓋然性が高いことを確認した上で事案化する。とはいえ、ある所属弁護士からは「山崎さんの一声で決まった」との声が聞かれる。行政に比べ、より感情的な判断が働いているのかもしれない。
ひょうご消費者ネットが扱ったこれまでの案件は、企業に何らかの改善がみられないものの大半が「差止請求訴訟」に発展。ライザップは現状、指摘を受けた「30日間返金保証制度」と、その詳細を規定した「会則」に「広告削除の必要性は認識していない」とする。景表法に基づく適切な”打消し表示”と考えるためだ。
ただ、返金を行わない条件としている「転勤」や「仕事の都合」、「食事報告を行わない日が3日以上」などには、行政、業界双方の関係者から「条件が厳しすぎる」と、同調する声が聞かれる。平行線を辿れば、訴訟に発展するかもしれない。
その間、企業から適格団体への回答書など、やり取りはすべて公開。訴訟が長引き、報道が続けば企業イメージに及ぼす影響も小さくない。企業にとって、適格団体が怖い存在になりつつある。