消費者庁は12月9日、「インターネット消費者取引研究会」の第5回会合を開催した。前回の会合ではモール運営事業者の出店企業に対する責任などについて議論を実施。今回はネット取引に関する消費者保護の在り方に関して、国際的なルールや対応について国内規制との比較・検討が行われた。集まった委員からは「行動ターゲティング広告」の是非に対して議論が集中した。
冒頭、消費者庁の羽藤秀雄審議官が、約30カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)で設けている「電子商取引に関する消費者保護ガイドライン」について、2015年をメドに改正に向けて各国行政が動いていることを説明。現在の論点としては、ネット販売での購買行動からニーズや関心、個人情報などが収集・保存され、行動ターゲティング広告目的に第三者に二次利用されている事例があることなどを挙げた。
主婦連合会の河村真紀子委員は「集めた消費者情報がどのように利用されているのか、消費者にも見られるような形をとるべき」と意見。さらに、ネット販売企業の広告手段について「消費者のためにはすべてオプトイン(ユーザーに許可を得た広告宣伝メール)が好ましい」と持論を展開した。弁護士の岡村久道委員はネットにおけるプライバシーポリシーに関して「国内では政府の『基本方針』が述べられているだけで、違反者への罰則が不明瞭」と指摘し、国内法の改善も検討するよう求めた。
これに対し、楽天の関聡司委員は「行動ターゲティング広告はマーケティングの一環であり、ネットに限らず実店舗でも同様のことが行われている」と反論。仮に新たなルールを設けるのであれば、実店舗も含めた規制内容になってしまうとの見解を示した。
また、研究会では日本と海外でのネット越境取引に関するトラブルについても議論を展開。ECネットワーク理事の沢田登志子委員が、消費者から寄せられた「返品・返金交渉がうまく進まない」「解約ができない」「商品が届かない」といった相談内容を紹介。沢田委員は「政府内の議論だけでは対応できない問題。関係民間団体を招きワークショップを定期的に開く必要がある」とした。
さらに民間事業者の立場から、ヤフーの別所直哉委員は、中国の大手仮想モール「タオバオ」の出品商品を購入できる「ヤフーチャイナモール」の事例を説明。ヤフーでは日中の消費者の間に販売業者を設置することでリスク回避に努めているが、それでも未配送や返品などでトラブルが起きていることを挙げた。
別所委員は「日本の消費者はまず、中国との商習慣が違うことを念頭に置いてもらいたい」と強調。その上で、同社が事前に安全な取引ポイントをサイト内で告知したり、日本、中国それぞれに問い合わせ窓口を設置して対応していることを説明した。今後のグローバル取引の課題としては、翻訳エンジンの精度を上げることなどを考えている。
これらの意見に対して消費者庁は、越境取引の実態調査や各国・地域間での相談窓口連携体制の確立に取り組むことを来年度の強化事業として予算要求していることを明らかにした。次回の検討会は1月13日に開催する予定。これまでの議論の課題を整理し、意見集約に向けて必要な論点を抽出していく方針。