エムシープラスが業態転換、会員にファッション情報を発信

トップ画面では、ブランドがセール情報を流したり、会員がつぶやいたりする

【2010年12月号】 渋谷系レディースブランドを中心としたモバイル通販サイト「LOVE EX(ラブイーエックス)バーゲン」とPC版通販サイト「LOVE EXPRESS(ラブエクスプレス)」を運営していたエムシープラスが、ファッション通販を取り巻く事業環境の変化などから今年8月に両サイトの運営から離れ、新たな事業展開として自社では物販を行わず、ファッション情報を発信する会員制サイト「&z(アンジー)」を10月6日に開設した。

 新サイトでは、割引クーポンや会員限定セールなどの情報を発信し、サイトに参加(出店)する120以上の通販サイトやリアル店舗に会員を送客する仕組みを作った。来年1月にも、業務提携する光通信の子会社が持つ1800の携帯電話ショップで、来店客に有料サービスとして紹介して会員の獲得を本格化させるという。

 昨今、SNS機能を持つファッションサイトが増えてきており、会員が喜ぶ特典や独自サービスで消費者を囲い込み、ファッションサイトのプラットフォームのひとつとして地位を確立できるか注目される。

 ネットや実店舗に送客

 同社の「&z(アンジー)」はPCとモバイルに対応しているが、モバイルの利用比率が高いという。会員は月額367円のサービス利用料を支払うと、通販サイトや実店舗での買い物がお得になる “お買い物特典サービス”と、買い物が便利になる“アンジーコンシェルジュ”の大きく分けて2つのサービスを受けられる。

  “お買い物特典サービス”は、サイトのトップページがツイッターのタイムラインと同様の仕組みで、ブランドの情報や会員の“つぶやき”が最新のものから順に表示される。このため、ネット販売企業は「今日だけ送料無料キャンペーン」とか「1時間限定の特別セール開催」などアンジー会員限定の情報をタイムリーに発信できる。会員は、リンク先をクリックするだけで、当該サイトに飛んでお得に買い物ができるという。

 ファッション情報はとくに“鮮度”が大事になるため、サイトにはその日に使える情報だけを表示するようにしている。情報を伝えるブランド、店舗のアイコンの下部には、利用者に分かりやすいように実店舗であれば「Shop」マークが、通販サイトには「Webshop」マークを表示している。

 一方の “コンシェルジュサービス”については、同社がファッションに関する問い合わせを電話かメールで受ける「おしらべナビ」がある。例えば、ファッション誌に載っているアイテムを購入したいとか、お気に入りブランドのセール時期や福袋について知りたいなどのニーズに基本的に1時間以内に回答するという。

 会員の手持ちの洋服に合わせるアイテムをコーディネート提案したり、最新のファッション情報を提供したりする「コーディネートアドバイザー」機能もある。

 また、忙しくて買い物に行けなかったり、地方に住んでいて近くに購入できる店舗がないなどの消費者ニーズに応えるのが「ショッピングサポーター」(買い物代行)だ。同社では、ECナビコンシェルジュなど複数の買い物代行企業と提携。通常、これらの代行企業に支払う手数料をアンジー会員は割引価格で利用できるという。

 さらに、アパレル商品買取り大手のスペースアンドコーと提携し、ハイブランドからファストファッション、ノーブランドまで幅広い商品を通常の買取価格と比べて10%高く買い取るサービスも行う。

 携帯販売店で会員獲得へ

 「アンジー」会員の獲得に際して、エムシープラスは今年6月末に光通信と業務提携。同社が販売するプロバイダーの契約者に対して、コールセンターからのアウトバウンドでサービスを紹介する。

 また、早ければ来年1月にも、光通信の子会社が運営する全国約1800店のモバイル販売店で、携帯電話の新規契約や機種変更時にオプションサービスとして同サービスの利用を促すという。

 ブランドやネット販売企業に使用料はかからないため、リスクをかけずに新客の獲得や購買率向上が期待できるとする。

 参加企業は、展開ブランドの紹介や商品カテゴリーごとの価格帯、実店舗の定休日やアクセス、通販サイトのURLなどを記入するページがあり、会員がお気に入り登録すれば、当該ブランドの配信情報を時系列で表示することもできる。

 現在、「アンジー」に参加するのは、「ナッティコレクション」や「セシルマクビー」「カイラニ」「ハニーサロン」「モロコバー」などハイティーンやF1層をメーンターゲットにする122ブランド(11月上旬時点)で、参加企業の半数がネット販売をしており、30%程度がネット販売専業企業だという。

 エムシープラスでは、来年3月までに200ブランド、会員については来年8月までに20万人を目標とする。

 会員とサイトをマッチング

 同社では、モバイル通販サイトで仕入れ販売をしてきた実績やノウハウを生かし、「会員とブランドをマッチングできるサイトに育てる」(竹内真取締役)としている。

 トップ画面には、会員とブランドのつぶやきが一覧で表示されるため、同社も“アンジーコンシェルジュ”としてサイト内でつぶやき、会員の発言やブランドの情報を丁寧に拾い上げて、すぐに埋もれないように心がけているという。

 スタートから1カ月以上が経過して、実際のブランド側の情報配信は、セール情報や新作情報、ノベルティープレゼント、芸能人の商品着用情報など想定よりも幅広い“つぶやき”があるようだ。

 ブランド側からは、「ファッション感度の高い消費者とダイレクトにコミュニケーションが取れる」「サイトや実店舗に送客して購入までつながった」などの声を得ているという。

 今のところ、同社の収益モデルは会員から徴収する月額の利用料だけだ。来年にはモバイル販売店を通じた会員獲得策が始まるが、ひとりひとりの会員が欲しい情報を、欲しいときに届けることができるかが、事業拡大へのカギとなりそうだ。

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エムシープラスの竹内真取締役モバイル事業部長に聞く

 サイトのコンセプトは「ファッションをもっと楽しみたい人たちのサポートサービス」です。出店ブランドが特別なセール情報を流したり、会員のファッションに関する問い合わせに素早く応えるサービスです。

 利用者から徴収する月額367円の利用料だけでサイトを運営しているので、会員のファッション回りをしっかりサポートして、飽きられないサイトにすることが大事です。

 現在、参加ブランドの約半数が通販サイトを運営していますが、会員はリアルとネットのどちらの情報も求めていると言えます。

 ブランド・店舗側には、統一フォーマットを使ってブランドの紹介ページを作成してもらっていますが、いずれはフォーマットを変更できるようにして、各ブランドが独自色が出せるようにしたいです。

 来年からは雑誌や「TGC(東京ガールズコレクション)」などの女性が集まるイベントへの参加など、PR活動も始めます。

 会員のわがままに応えられるファッションソーシャルサイトを追求して、音楽業界の「iTunes」や「アップルストア」に匹敵するようなサイトとして、ファッション業界のプラットフォームを目指します。

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