メタバースのEC活用進む?――QVC、日本直販、高島屋が展開へ

 ユーザーが「アバター」で社会生活を送れるインターネット上の仮想世界・仮想空間「メタバース」上でECと連動する動きが徐々に目立ち始めている。その効果については疑問視する声も少なくなかったがここにきてメタバースを利用するユーザーも増えつつあるようで、それに伴って新たな集客場所、新規顧客獲得策として通販・EC各社の中からも積極的に活用しようという動きが出てきているようだ。

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QVCジャパン、EC誘導や顧客とのコミュニケーションに活用

QVCジャパンが4月までの期間限定で公開した「メタバースQVCお買い物PLAZA」では本社屋を模した空間で商品の販売などを行う

 通販専門放送局を運営するQVCジャパンは2023年12月15日から、メタバース上で売れ筋商品などをネット販売する取り組みを期間限定で開始した。メタバース上で商品の販売や顧客同士でコミュニケーションが図れる取り組みなどを行う。メタバースを入口にネット販売への誘導などが目的のようだ。

 同社はRelicが提供するウェブメタバースサービス「MetaMe(メタミー)」内に専用空間「メタバースQVCお買い物PLAZA」を2023年12月15日から2024年4月14日までの期間限定で公開する。「メタバースQVCおい物PLAZA」では同社の本社屋を模した空間で商品を販売するショッピングスペースを「ファッション&ファッショングッズ」「ヘルス&ビューティー」「ジュエリー」「キッチン&フード」「ホーム&家電」「Men,sセレクション」「QVC催事場」と商品のジャンル別など7つの店舗に分けて設置しており、販売中の商品の画像を掲示。利用者自身のアバターが前に立つと商品名を記したボタンを表示し、利用者が当該ボタンをクリックまたはタップすると当該商品の説明文が表示され、当該画面の「ECサイトへ」というボタンから同社の通販サイト内の当該商品の販売ページに誘導する。このほか、特設スペースも設け、QVCで放送中の生番組の鑑賞や顧客同士で音声やテキストを通じての会話が楽しめる機能も実装した。

 なお、2023年12月22日はクリスマスイベントを開催。同社の番組に出演する進行役「QVCショッピングナビゲーター」が自身のアバターを操作して「メタバースQVCお買い物PLAZA」内を案内するガイドツアーを実施。空間内の名所や観光スポットを顧客と会話しながら周遊するほか、チャット機能から質問やメッセージ送信できる双方向型ライブコマースなどを実施した。同社ではメタバースを活用した取り組みを進めており、22年12月にも通販サイトへの誘導や顧客同士のコミュニケーション促進を狙い、7日間限定でメタバース空間「未来空間QVCプラネット」を公開していた。

日本直販、冷凍ずわいがにをライブコマースで紹介

 総合通販の日本直販ではメタバース内で冷凍カニのネット販売を行った。ブラウザ型メタバース「VmaplusStation(ブイマプラスステーション)」内で2013年12月12~19日まで開催したイベント「メタワールドフェス2023冬」に参加、日本直販の専用ブース「日本直販メタふぇす店」を設けて、年末年始時期の同社の売れ筋である冷凍ズワイガニ「特選・3Lサイズ本ズワイガニ脚肉お買い得セット」を訴求。ユーザーがブース内に掲示したガニの画像をクリックするとより詳しい商品の説明画像などを掲載した専用商品ページが立ち上がり、カートに追加することでネット販売できもの。

日本直販ではメタバースイベントに参加して自社ブース日本直販メタふぇす店」で冷凍カニを訴求した

 同ブースで販売した冷凍ズワイガニは19日までの限定としては通常よりも割り引いた税込9900円(送料1500円)で販売した。このほか、出演者が自らが調理したカニ鍋やカニ入り炊き込みご飯などを食べながら同商品のおいしさや特徴などを説明する動画の配信も行い、訴求した。なお、「メタワールドフェス2023冬」では日本直販のズワイガニのほか、「道の駅富士川」を運営する富士川のバウムクーヘン「ARURAバウムクーヘン特別セット」(税込3498円)や千葉・成田市で農家を営む福渡の「お野菜パックLサイズ(8種16品)&農業体験チケット(大人1名・子供1名)」(同1万円)など合計18社が専用ブースを設けて様々な商品をメタバース上でネット販売を行った。

高島屋、日本の酒を訴求で独自ブースを初出店

 高島屋は2023年12月2~17日、世界最大級のメタバースイベント「バーチャルマーケット2023Winter」に初めて独立ブースを出展した。同社が出展したのはHIKKYが主催するバーチャルマーケットの「パラリアルロンドン」エリアで、“コロナ禍以降、家飲み文化が定着し、ゆっくり過ごす時間に美味しい酒で心地よく楽しんでもらいたい”“日本酒はもちろん、ワインやウイスキーまで、注目される国産の酒を届けたい”などの思いから、高島屋として初の独立ブースを展開したという。

高島屋は「バーチャルマーケット2023Winter」に初めて独立ブースを出展。日本の酒を紹介、販売した

 メタバース空間への出展の狙いはデジタルネイティブ世代にアプローチするとともに、新たなファン作りと、日本だけでなく海外にも日本のハイクオリティな酒と高島屋ブランドの認知を広げることとしている。

 “ジャパニーズSAKE祭り”と題し、ブース内で30種類の国産酒を3Dモデルで展示。産地や造り手などの情報がモニターに表示され、気に入った酒は「高島屋オンラインストア」に遷移して購入できるようにした。また、質問に答えていくことで好みの酒が提案される「オリジナルお酒チャート」でユーザーがゲーム感覚で楽しめるようにしたという。さらに、もっとも品質が高いとされる「中取り」を1本ずつ直汲みした希少な日本酒や、数量限定販売で店頭にも滅多に並ばないレアなウイスキーなどの特別品をメタバース空間で紹介した。

 ブースでは、酒のバイヤー歴10年以上という高島屋のベテラン酒バイヤー2人によるメタバース接客イベントを12月9日午後5時~6時に開催。リアル店舗に行かなくてもバイヤーの接客を受けながら買い物をすることができるようにした。バイヤー自らが田植えから参加して作った特別な酒の販売もあるため、ここでしか聞けない酒の話などの会話も楽しめるものだったという。なお、アンケートの回答やブース内で撮影した写真を投稿すると抽選でタカシマヤギフトカードが当たるキャンペーンも実施した。

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