メルカリ、ライブ配信を事業者に開放 ―― 食品や衣料品などEC11社が参画

メルカリは12月1日、運営する個人間取引アプリ「メルカリ」で提供していたライブ配信機能を、ネット販売事業者などの法人出品者も利用できるようにした。スタート時点では夢展望やインプローブス、コージィコーポレーション、ズーティ、ネオグラフィック、ピービーアイ、マイティー、伊藤久右衛門とネスレ日本、ポケットマルシェ、携帯市場の11社がそれぞれライブコマースに取り組む。食品や衣料品、雑貨などを販売し、“ライブ”で訴求力を高め拡販につなげたい考えだ。

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動画配信中のみ購入可能に

メルカリがEC事業者に提供を始めたライブ配信機能は「メルカリチャンネル」。スタート時点ではライブコマースと相性の良いカテゴリーを取り扱う。食品は商品を使って実際に調理する様子をライブで配信することや、衣料品ではコーディネート方法や着用した様子を紹介するなどの利用方法を想定したという。静止画と比べて臨場感のある商品説明が可能となり、ユーザーの購買意欲の向上につなげたい考え。

事業者のアカウントは個人と同様に24時間配信が可能で、出品する商品の在庫を抱えて出品することが可能だ。「メルカリチャンネル」内では個人が行うライブ配信とは差別化せずに並列に取り扱っていく。
プロフィール画面で、事業者が運営する公式アカウントであることを記載。ただ、商品検索での表示など通常出品はできない仕組みで、動画配信中のみ購入できるようにした。ユーザーは、公式アカウントをフォローすることが可能。ライブ配信がスタートすると、フォロワーに通知するしくみ。
今後、参画企業を増やしたい考えで、利用企業を募集していく。出店審査を行い、特定商取引法を順守していることなどのチェックを経て、公式アカウントを作成する。ライブコマースで商品が売れた場合には、自社倉庫から直接発送する。参画企業の初期費用や利用料が無料だが、販売手数料として販売価格の10%をメルカリに支払う。

リアルタイムにコメントに返答

静止画と比べて臨場感のある商品説明が可能とすることで、ユーザーの利用促進につなげ たい考え

実際のライブコマースの活用状況をみると、配信時間は数分から数十分などとさまざまで、配信するタイミングも各社それぞれで取り組んでいるようだ。配信内容も、商品だけでなく店舗の紹介を行うなど独自性も打ち出しているようだ。
例えば、抹茶の菓子などの食品を販売する伊藤久右衛門の取り組みでは、12月に抹茶を使ったそばを紹介。男性の担当者2人が登場して、スマホを見て現状の視聴者数を伝えながら、ユーザーが投稿したコメントや質問を紹介した。「本日限定ですか?」とのコメントに対して、配信中だけの販売であることや、今後も紹介する予定があることなどを説明。また、「お値下げはしますか?」といった質問についても、今後検討するなどと答えていた。
また、出演した担当者の名前入りのコメントに対しては、ユーザーの名前を呼び掛けて返答するなど、双方向のやりとりを楽しめる内容となっていた。配信終了前には「じゃんけん」をするようにし、視聴者が参加しやすい雰囲気作りを心がけているようだ。
このほか、そばを紹介する数十分間のライブ配信では、冒頭に自社が持つ店舗を紹介。売り場やカフェスペースの案内、立地などを説明した。その後、実際にそばをゆでて盛り付けるといった調理の実演と試食も行った。特に盛り付け事については、ゆでたての香りの良さや、きれいな色合いを強調。「見た目や彩りは、とても大事。きれいというだけでおいしく見える」などと語った。一方で、自身の盛り付けに対しては「なかなかうまくできない」などと評しながらも、そばの味は「おいしい」とコメントしており、親近感のある配信内容になっていた。
実演中には、商品の購入経験があるユーザーからの「抹茶の味がしておいしくいただける」とのコメントを紹介。店頭での値段に関する質問にも回答し、店頭価格は送料を含まない価格設定であることや、配送が1週間程度かかることなども案内し、興味を持ったユーザーが安心して購入できるように説明していた。

このほかに、ネスレ日本は自社商品のコーヒーマシンの販売で、メルカリの特別セットを販売。マシンとともに、マグカップ用サイズのコーヒーと、カプチーノをセットにして紹介。他の売り場にはないメルカリ限定商品を、購入しやすい価格帯で提案し、新規客の獲得につなげているもよう。夢展望でも、着用イメージの紹介やコーディネート提案などを行いながら、ライブコマースの特性を生かした販売方法を展開していく考えとしている。

午後9時~午後11時に視聴者増加の傾向

「メルカリチャンネル」は2017年7月に、個人間取引アプリ「メルカリ」内に実装した機能で、個人の出品者向けにサービスを提供。当初は配信時間を限定していたが、現在では24時間配信が可能となっている。静止画では難しかった商品特徴を動画で説明できるほか、双方向のコミュニケーションを行えるとして利用が加速していた。特に午後9時~午後11時は視聴者数や取引数が増加する傾向にあり、テレビなどを視聴するようにライブコマースを閲覧するユーザーも増えている。
「メルカリ」において、ライブコマースが定着しつつあるのは、出品者が商品を説明して紹介するだけでなく、販売方法を工夫したことが貢献したとみられる。面白い内容を体験してもらうことで、視聴頻度が上がり定着につながったようだ。
例えば、衣料品の出品者は、コーディネートを紹介し、ハンドメイド関連商品などは制作過程を紹介してきた。通常の出品では難しかった提案ができるようになり情報が増えることで、購入者にとっては新しい商品と出会える楽しい売り場になっているようだ。また、一定数の「いいね」数を獲得したら値下げする売り方を行う出品者も登場しており、コミュニケーションを重視した商品提案も行われているという。「ストーリー性がわかると購入しやすい傾向があり、『いいね』機能などが活用され、人気の出品者が登場している」(同社)としている。
また、メルカリでは、「メルカリチャンネル」を活用する出品者に対して、メルカリは売り方のアドバイスも行い、取引の活性化を目指してきた。例えば、視聴者と出品者の双方向コミュニケーションができる機能を生かしたコツとして、コメントに対する返答の方法や、視聴を開始した購入者の名前を呼び掛けること、出品者の顔を出して売ることなどを提案している。「顔を出すことで、違う結果が得られることがわかってきた」(同)としている。

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