企業を支える“人財”を創出 有望EC各社の働き方改革・人材獲得策は?

人手不足が進む中、ビジネスを支える優秀な人材の発掘が近年の大きな企業課題となっている。競合他社とは一線を画した採用手法での工夫や、新人育成での独自スキームの確立などは各社の腕の見せ所だ。加えて、昨年から政府が推奨する「働き方改革」の意向もあり、多様な勤務時間や休暇制度を取り入れて働きやすい職場を構築することも人材定着の大きな鍵となっている。すでに先進的な取り組みを行っている企業の事例から、自社のビジネスと絡めた独自の取り組みなど、各社の注目アイデアを見ていく。

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社内連携強化やリモート勤務など労働効率が高まる工夫が随所に

【事例① ゴルフダイジェスト・オンライン】

各チーム同士で進行状況を把握

社内にあるオープンスペースではミーティングなどができるようになっている

ゴルフ用品販売やゴルフ場予約、ゴルフ関連メディアなどの運営を手がけているゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)では、優秀な人材を集め、その能力を最大限に発揮するための快適な職場環境づくりに力を入れている。労働時間の最適化をはじめ、社内外でのコミュニケーションを通じた社員同士の絆を深める取り組みなど、独自の工夫が成果を挙げている。
同社のECでは商品企画、発注、入荷、商品化、集客、販売、問い合わせ対応、在庫管理、出荷などの業務があり、それぞれのチームに分かれて作業を行っている。「部門最適」という観点からは自分たちの作業に集中できるというメリットがあるものの、以前はチームごとに作業が分かれていることで生じる問題もあったという。
例えばメルマガを作る担当者は、商品化が進んでいないために自身の作業ができず、他チームの作業が終わるのを待っているような状況が発生していた。同じように、倉庫作業の担当者の場合では、どういった商品がいつ入荷するか、どんな集客を行って売っていくのかが事前に分からなかったために、倉庫内で集荷効率の良いゾーニング(空間の配置)がスムーズに行えないこともあった。
そこで、1年ほど前から各チームでの横連携を強化して、互いの仕事の状況をもっとよく知るように意識改革を図っていったという。「基本的にはまずは隣の人、隣のチームとの情報を共有していった。今までは他のチームのことに口をはさむのは“越権行為”のように感じる人もいたようだが、それが今では非常にスムーズになった」(リテールビジネスユニットの渡辺貴正ユニット長)という。特に各チーム内で部長職の下にいるラインマネージャー同士が「議事進行係」のいないミーティングなどを積極的に行っていき、そうした互いの考えを述べやすい場を通じて交流が活発化していった。

加えて、社内のオープンなスペースでチーム単位でのミーティングなども行っていき、他のチームの社員でもその内容を自由に共有できるような機会も設けていったという。

結果的にこの1年間を通じて、各チーム同士の横連携が加速。前もってある程度、他のチームの進行状況が分かるようになったことで、自分がいるチームの仕事がやりやすい環境になったという。集荷効率や作業効率などが改善されたほか、残業の機会も軽減することができた。

残業時間の目標を事前に申告

社内には試打などができる設備もあり、社員同士の交流を深める役割も果たしている

残業時間の削減などに向けて、会社で後押しする制度もある。これは、各チームのラインマネージャーがチーム全員の「目標残業時間」を事前に申告するもので、チームメンバー全員で話し合って決めるようになっている。申告した目標時間と実際の残業時間の誤差が15%以内だった場合、チームの「懇親会」のための費用を会社が一部補助する内容となっている。

残業時間に対する意識改革だけでなく、こうした機会を通じて社員同士のコミュニケーションが深まる効果にもつながっているようで、「マネージャーが部下をいきなり呼んで連れ出すと抵抗を感じる人がいるが、こうした機会であれば目標を達成して楽しい場として共有できる。また、チームごとに競わせるという性質のものでもないので社内の雰囲気が良くなっている」(同)とした。
あくまでも「定時帰宅」を制度で強制するのではなく、会社にとっても効率的な働き方が実現できる望ましい目標として前向きにチャレンジできる内容であるため、無理なく運用が続いている。契約社員もこの制度の対象となっており、こうした機会を通じて自身の仕事にかける想いなどを周囲と共有することができ、正社員になることにつながった事例もあった。

在宅・朝方勤務が効率化を生む

パターが打てるスペースもある

また、会社以外の場所から勤務に参加することができる「リモートワーク」も採用している。実店舗と倉庫以外のすべての業務が対象となっており、基本的には週1日程度のペースで自宅などに居ながら仕事を行うことができるというもの。
実現できた背景には、前述の各チーム同士の連携を高めた効果も影響しているようで、自分のチームが行う業務予定を事前にある程度まで予測できるようになったことで、リモートワークのスケジュールをうまく調整できるようになっている。

実践に当たっては、「社員同士の関係性が良ければうまくいく」(渡辺ユニット長)というように、事前の申告以外には詳細なレポートでの報告義務なども特に設けていない。これまで大きなトラブルもなく、形がい化されない実践的な取り組みとして適切な運用が続いている。
そのほか、事前に申告することで午前7時から最短で午後1時までの勤務時間となる朝方勤務制度の「アーリーバード」も導入。時短になることで限られた時間の中で効率的な業務を目指す動きが浸透していった。
これらの制度はラインマネージャーたちも積極的に活用しており、現場の上司が率先して活用している下地があるからこそ、他の社員も気兼ねなく使える空気ができているようだ。

「業務側の効果はかなりあった。明らかに変わっているのは会議の時間。これまで会議は基本1時間だったが、そうするとアイスブレイクの時間が15分くらいできてしまう。今は30分くらいまで短縮されている」(同)とする。ECのあるリテール部門では火曜日と水曜日にミーティングを集中させており、月曜日と金曜日でリモートワークなどを活用するケースが多いようだ。

社内でゴルフができる設備も

ゴルフビジネスを行う会社ならではの設備として、オフィス内には「ドライビングレンジ」(ゴルフの打ちっぱなし練習場)を設けている。ここではクラブの試打ができるほか、ボールの弾道などが確認できる設備もある。各自で空き時間などに自由に使用できるなっており、打ち合わせや息抜きで使うケースもあるほか、未経験の社員がゴルフに触れるきっかけにもなっている。「以前はリテールで4割ぐらいゴルフをしていない社員がいたが、(同設備や社内でのゴルフコンペを通じて)かなりやる人が増えていった。未経験者がゴルフの良さを知るきっかけにもなっている」(渡辺ユニット長)とした。
関連して、リテール部門の女性社員を中心に「女子ゴルフ活性委員会」も立ち上がっており、新卒社員などと共にゴルフに行く機会も増えている。社内でもゴルフの上手な社員が講師役として参加するなど、ゴルフを軸とした社員同士のコミュニケーション活性化がうまく進んでいるようだ。

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