AIはどう使えばよいのか?ーー注目各社にみるECへのAI活用最前線

 AI(人工知能)のビジネス活用が各社で進みつつある。諸業務をAIを使って工数を削減しつつ、より高い成果を上げることに成功したり、AIを顧客対応やサービスに活用して目新しくユニークな取り組みを行う事業者も出てきている。とはいえ、AIをどのように使えばよいかと戸惑う事業者も少なくない。AI活用で先行する事業者の活用方法やEC・通販で活用できそうな注目のAIサービスを見ていく。

スポンサードリンク

Cace1:シバデン
「カスタムGPT」でLPを即作成キャッチコピーやペルソナ像も

 

オリジナル家電を販売するシバデン(運営は三ツ谷電機)は、自社で商品を企画・開発し、中国で生産、ECで売るというD2C企業。楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」には2005年に出店、順調に売り上げを伸ばしてきた。ロングセラーとなっている電動歯ブラシをはじめ、最近は卓上の焼き鳥コンロや、カップ酒や徳利を簡単に湯せんできる電気酒燗器などがヒット商品となっている。

 同社は企画・開発からサイトのページ作成、さらには顧客対応まで数人の社内リソースだけで対応している。直近では楽天市場の有名店舗が講師となり、他の出店店舗にネット販売のノウハウを伝授する企画「NATIONS(ネーションズ)」でAI講座の講師を務めるなど、AI活用の重要性について発信をしている。

 生成AIの活用は「さまざまなアイデアやヒントを得るために使っている」(三ツ谷大氏)という。同社の場合、ニッチ商品や「お悩み解決系」商品を多数扱っており、ChatGPTにペルソナを考えさせたり、商品ページやキャッチコピーの案を提案させたり、広告バナーのデザイン案を作らせたり、さらにはユーザーレビューに対しての返信文面を作成させる、といった使い方をしている。

 同社の場合、独自で作った「カスタムGPT」をもとに、基本的な商品情報を項目別にChatGPTへ渡すだけで、商品ページの構成が生成されるだけではなく、その内容をもとにキャッチコピー、サブコピーを生成できるようにしている。

AI案は「満点」ではない

 例えば、携帯用電動歯ブラシのランディングページ(LP)とキャッチコピーを生成する場合、まずは基本的な商品情報を、項目別にChatGPTへと渡すことからスタートする。内容は「理想の顧客」「想定する顧客」のほか、価格や楽天市場内での同製品のポジショニング(楽天ランキング1位、年間3万台の販売実績)などといったものだ。

 こうした情報を生成AIへ与えると、すぐにLPが生成される。これは、あらかじめ指示しておいた「セールスレター」のテンプレートにのっとった文面となる。「Problem(問題)」「Affinity(親近感)」「Solution(解決策)」「Benefit(利点)」「Evidence(根拠)」「Offer(提案)」など、項目別に文章が作られる。

 LPの内容から、キャッチコピーとサブコピーを生成。楽天市場向けキャッチコピーとして、目的別にいくつかの案がChatGPTより提案される。さらには、LPの内容をもとに、具体的なペルソナ像を作らせることも可能だ。

 三ツ谷氏は、ChatGPTより提案されたLPやキャッチコピー案をブラッシュアップ、実際のページ作成に反映させている。これまで商品ページ作成に1週間かかっていたものが、数時間に短縮することができたという。

 また、自分でキャッチコピーを作る際にも「これまでは10パターンくらい考えた上であれこれ悩んでいたが、ChatGPTに投げて点数をつけさせ、精度を高めることにも使っている」(三ツ谷氏)。レビュー返信についても、返信専用のカスタムGPTを作成。同社楽天市場店に寄せられたレビューをコピー&ペーストすると、顧客に寄り添った内容の返信文面を考えてくれる。

 三ツ谷氏は「自分でページを作成すると、どうしても画像に頼りがちで文章が少なくなってしまう。ChatGPTを使えば文章を考えなくて済むのが大きい」と話す。とはいえスマートフォンから注文するユーザーが大半のため、文字が多すぎるとページを読んでもらえない、ということも考えられる。そのため「ChatGPTが生成したものが満点とは思っていない。必要なものとそうでないものの区分けは必要になってくる」。

LP・キャッチコピー生成時の流れ

 生成AIを使うことのメリットは、「作業量を減らす」ことだけではない。三ツ谷氏は「自分だけでやっていると、50歳のおじさん感覚から抜け出せない面もある。楽天市場ユーザーには20代も多いわけだし、ChatGPTにペルソナをしっかり伝えれば、若い人向けの文面やキャッチコピーも考えてくれる。それだけではなく、セグメントによってメールマガジンを出し分ける場合も、それぞれのセグメントに寄り添った文面を生成してもらえるのではないか」と語る。

 生成AIにページやキャッチコピーを考えてもらうことで、コンバージョン率に変化はあるのだろうか。三ツ谷氏は「まだ測定していないので、効果が出てくるとしてもこれから」とした上で、「広告バナーに関してはかなり成果が出るのではないか」と期待する。

 同社は商品数が多くないため、楽天市場内にバナー広告を出稿する際も同じ商品を選ぶことが多く、デザインが似たりよったりになることが多かったという。「広告内に盛り込みたい要素が多すぎて『文字が渋滞』することも少なくないが、ChatGPTはそういったときもきちんと指摘してくれるし、『もっとこの文面の文字を大きくしてくれた方がいい』などと指摘してくれる」(三ツ谷氏)。

「生成AI向けSEO」重要に

 生成AIの普及はECをどのように変えていくのだろうか。三ツ谷氏は「何かを買いたい人が生成AIに相談するユーザーが増えている。そういった際、生成AIにピックアップしてもらえるような商品ページの作り方、さらには『情報のばらまき方』が重要にな
ってくるだろう。今までのようなキーワードだけのSEO対策では間に合わない」と指摘する。つまり、質の高い一次情報を増やすことで、生成AIに好かれるようなコンテンツを作成しなければいけないわけだ。

 言うなれば「生成向けSEO対策」。三ツ谷氏は「例えば『3泊の旅行をするためのバッグが欲しいから、楽天市場で探して』とユーザーが生成AIに相談したら、商品ページだけではなく、コンテンツやレビューなども収集した上で『トップ3』を推薦してくる
はず。だから、コンテンツの作成が大事なのはもちろん、レビューに対する返信も大事になっていくのではないか」と予測する。

 もちろん楽天市場対策だけにとどまらない。自社サイトの商品を推薦してもらうためには、例えばSNSやnoteで情報を発信したり、ユーチューブに動画を投稿したり、アフィリエイターに情報を掲載してもらったりといった努力も必要になってくるわけだ。

 三ツ谷氏は「EC企業は昔ながらのSEO対策に凝り固まっているところが多いが、固定観念から脱却すべきだ。例えば少し前までは『PCの方がスマホより買いやすい』と思っている店が多かったが、今はほとんどの人がスマホから買っている。だから今後は
『スマホに音声入力しただけで、AIに対応した検索の仕様で買い物に到達する』世界に対応しなければいけない」とEC企業に呼びかける。

Cace 2 QVCジャパン アバター AIがライブコマースで商品紹介 視聴者数やコメント数がアップ、EC への AI 活用・注目新サービス1 トランスコスモスの AI サービス 自律型 AI 応対を開発へ コスト削減やカスハラ対策に、EC への AI 活用・注目新サービス2 アップセルテクノロジィーズの「miraio」 正確さ、柔軟さ備えた独自 AI が 人に近い応対で電話対応、…等々が本誌に掲載されています。ご購入はこちら >>

 
NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG