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消臭謳う健食の不当表示問題が解決? リコムVS公取委の顛末とは?

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門前払いを受けたリコムの請求

まず、事の経緯を振り返りたい。昨年2月、公取委はシャンピニオンエキスの健食を販売し、〝消臭作用〟などの機能性を標ぼうしていた健食販売会社7社に対する排除命令を下した。
 これに反発したのが原料供給元のリコム。公取委の命令に不服を申し立てる「審判制度」で、処分取消しを求める審判請求を行った。それもそのはずで、排除命令は「7社の提出資料(試験データ)には消臭作用を表示する『合理的根拠』が見当たらない」として下されたもの。当の資料を7社に提供していたリコムからすれば、主力の原料であるシャンピニオンエキスの機能性を否定されたことと同義であるためだ。
 だが、実際行われた審判はリコムが要求した「処分取消し」を巡ってではなく、「第3者が不服を申し立てることの妥当性」を巡って行われた。リコムが処分を受けた直接の対象者ではなかったためだ。
 リコム側は自らの試験データを示して「排除命令を受けた事業者も当社の試験データを提出していたはず。(表示する)合理的根拠はある」として自らの正当性と処分取消しを求めた。
 一方の公取委は一貫して「排除命令の対象者でない第3者に審判請求の資格はない」という主張を繰り返した。
 当初から争点に食い違いを見せていた審判は、平行線のまま今年3月に審決(同・判決)を下された。

絡み合う両者の思惑が生んだ混乱

 だが、この審決内容が業界に混乱を招くことになる。公取委はリコムを「請求の資格はない」と門前払いしたものの、一方で「シャンピニオンエキスの機能性は今回の排除命令によって妨げられない」と中途半端な見解を発表。これを受けたリコムも〝勝利宣言〟とも取れる同様のリリースを発表したためだ。「これでは〝表示に合理的根拠がない〟とした処分の判断は何だったのか」――。多くの事業者がそう思ったはずだ。
 その背景には絡み合う両者の思惑がある。
 公取委からすれば、販売会社の表示を「合理的根拠がない」と否定したものの、健食の機能性を表示すること自体、特定保健用食品など一部を除き認められていない市場環境の中で合理性の有無を突き詰めて議論するのは得策とはいえない。リコムが処分対象者でないのを良いことに判断を避けるのが上策だったのではないか。こうして、処分では認められず、リコムに対しては「判断する立場にない」とあいまいな結論が出された。
 一方のリコムからすれば、処分を免れても小売業者から〝試験データがでたらめだったからではないか〟との批判を受けかねず、審判請求によって自社の原料の正当性を主張し、企業としての信頼性を回復する必要があったはずだ。後述するが、排除命令を巡っては過去に卸元と小売業者の間で表示責任を巡り紛争に至ったケースもあるためだ。直接処分を受けた7社が公取委の処分に異論を唱えていないことも、リコムに別の思惑があることをうかがわせている。
 こうした両者の思惑が絡んだ結果、どちらともそれるあいまいな審決が出され、事業者の混乱を招いたといえる。

「表示」の責任は誰が負うのか?

 なぜこのような問題が起きてしまうのか。そこには、景表法が内包するある問題点がある。「表示主体者」を巡る問題だ。
 「表示主体者」とは平たく言えば〝誰が表示を作成し、その責任を持つのか〟というもの。1つの商品が流通するまでには原料の調達から商品の設計、製造、マーケティングに至るまでいつくもの段階を経て、複数の事業者が関わることになる。不当表示を取り締まる景表法では、その表示を行った主体者を特定することが重要になるわけだ。リコムが処分取消しを争点に争うことができなかったのもこれに起因する。
 過去の事例をみると、公取委がこの「表示主体者」の特定に頭を悩ませ、数々の物議をかもしてきたことがみてとれる。
 例えば2004年、「ルーマニア製」のズボンを「イタリア製」と表示して販売していた小売業者5社に対して排除命令が出されたケース。この事案では小売業者だけでなく、卸元の八木通商も併せて処分を受けている。5社が誤表示を行った背景に八木通商の商品管理上のミスがあることが分かったためだ。その上、小売業者5社は〝卸元に責任があり、こちらが重い処分を受けるのは不当〟として公取委を相手に審判請求を起こしてもいる(後に請求を棄却)。
 また同年、レトルトカレーの産地表示を巡り、セシールとベルーナに排除命令が下されたケースでは、卸元のジャルックスは不問に付された。だが、この事案でも処分に納得できないセシールが〝ジャルックスも商品企画に関わっていた〟と、卸元の注意責任を問い、損害賠償を求める訴えを起こしている(後に高松地裁が請求を棄却)。
 一方で、卸元のみ責任を問われたケースもある。09年、家電製造の日立アプライアンスに下された排除命令がそれだ。ここでは、小売業者に表示物を提供していたとして同社が「表示主体者」と判断された。
 では、どのように「表示主体者」は決められることになるのか。これは調査を行った担当官の調査能力に拠るところが大きく、裁量に委ねられるのを避けられない。このように各事例によって異なる「表示主体者」の判断が混乱を招く元凶となっている。

求められる商品チェック体制の強化

 今回、リコムが行った審判請求は、景表法の運用の難しさを改めて露呈させるものだ。「表示主体者」の判断があいまいなことが、事業者の無用な混乱を招いているためだ。昨年9月以降、景表法を所管する消費者庁は、過去の事例の反省を踏まえ、調査能力の強化を図らなければならない。調査の出来不出来で処分対象が決まるのであれば〝一罰百戒〟といえる制裁措置を持つ景表法も、その軽重を問われることになりかねないだろう。
 一方で健食のみならず、あらゆる商材を扱う小売業者が再認識しなければならないのは、自らの扱う商品の表示に責任を負えるのは己のみということだ。どのような理由があるにしろ、今回、公取委が「第3者に不服申し立ての資格なし」という〝前例〟をつくったことに変わりはない。
 小売事業者には製造元や卸元の示す試験データを鵜呑みせず、これらに依存しないチェック体制の強化など商品管理を徹底する必要がある。

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